【コロナと学校】中教審 学校現場へのメッセージを議論

新型コロナウイルス感染症対策による臨時休校が全国に広がる中、中央教育審議会(中教審)は4月27日、初等中等教育分科会と新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会の合同会議をインターネット上で開き、臨時休校で登校できない児童生徒への支援と学校再開後の取り組みの方向性を示すメッセージの素案について議論した。会議では、1人1台端末の実現を目指すGIGAスクール構想の加速を受け、ICT環境の着実な整備の重要性が指摘される一方、「ICTを強調しすぎると、整備が遅れている学校や自治体に対して逆効果となる」といった意見が相次いだ。中教審では、議論の内容を踏まえ、4月末までに全国の学校現場に向けて、メッセージを発出する見通し。

インターネット上で行われた中教審合同部会

素案は「全国の学校教育関係者のみなさんへ」と題され、(1)多様な手段による子供の状況把握、学びの保障、心のケアなどの対応(2)文科省による教育現場への徹底した支援(3)ICT 環境の整備と子供たちの学び合う場の確保――の3点から学校現場へのメッセージをまとめている。

まず、子供の状況把握、学びの保障、心のケアについては、教職員自身の安全と健康への留意を求めた上で、臨時休校によって「社会のセーフティーネットとしての役割をも果たしている学校という存在の持つ役割や意義の大きさや、教職員の日頃の取組の重要性が改めて浮き彫りになった」として、学校の社会的な役割が改めて見直されたと指摘。「子供たちの学びの保障や、心のケアを含む心身の健康保持については、格差の拡大を防ぐという観点を含め、学校への期待は大きい」と位置付けた。

その上で、学校に期待されている役割として、「感染防止に配慮しつつ、また平常時におけるICT活用のルールに捉われることなく、電子メール、ホームページ等のICTや電話、郵便等のあらゆる手段を活用してできる限り子供たちに寄り添」い、「創意工夫をこらして対応」するよう求めた。

次に、文科省に対しては、学校現場の教職員の負担が大きいとした上で、「状況が長期化する可能性も想定しつつ、子供たちが学びを継続でき、それぞれ着実に進級・卒業と次のステップに進むことができるよう、学校現場のニーズをしっかりと受け止め、徹底的な支援を行うことが必要」と指摘。特に、学校再開に向けて、「まさに『社会総がかり』で子供たちの学びの回復支援を図る必要」があるとして、「人的・物的両面から大胆な財政支援策を講じ、国として子供たちの学びを確実に保障する毅然とした姿勢を示」すよう期待を表明した。

さらに、ICT環境整備と学び合う場の確保について、「いかなる場合にあっても子供たちの学習や心のサポートができるよう、学校のICT環境の抜本的な充実と教職員のICT活用能力の向上、更に踏み込んで家庭のICT環境の充実を支援することが不可欠」として、文科省に大胆な支援策の早期実施を訴えた。

同時に、ICT環境の整備によって、学校や教職員が必要なくなることは決してないとして、教師を「子供たちを支える伴走者」、学校を「学びの場であるとともに、人と安全・安心につながることができる居場所」と位置付けた。

さらに1人1台端末が整備された環境での学習について、「AI技術が高度に発達する Society5.0時代にこそ、教師による対面指導や子供同士による学び合いの重要性がより一層高まっていく」と説明。「教師には、先端技術を活用しながら、対話的、協働的な学びを実現し、多様な他者と共に問題の発見や解決に挑む資質・能力を育成することが求められる」と、これからの教師像を示した。

素案を巡る議論では、戸ヶ﨑勤・埼玉県戸田市教育長が口火を切り、「臨時休校でGIGAスクール構想の重要性が再認識された。これからは教師が自宅から子供たちの家庭に授業を届ける設計も必要になる」と、ICT環境を活用した授業設計の必要性を指摘。同時に「オンライン学習が注目されているが、ICTで置き換えが可能なことと、置き換えが難しいことが何かも見えつつある。学習意欲の喚起や、つまずきへの支援は、教員の役割だ。そうした教員たちを支援する言葉も入れてほしい」と意見を述べた。

意見書を提出した岩本悠・地域・教育魅力化プラットフォーム共同代表は「ICTは大事だが、リアルな自然にあふれる地域社会の魅力を教育に取り込んでいくことも重要だ」との考えを表明。「五感で感じられる、実態や手触り感のあるもの・ことや体験はオンラインでは得られない」として、田植え、山菜採り、釣り、畑仕事、園芸、工芸などの例を挙げ、「ICTや先端技術を活用し、未来社会に教育を開くと同時に、リアルな教育資源にあふれる地域社会に教育を開き、オーセンティック(真正)な体験や学びを取り込むことで、AI時代を生き抜く、豊かな感性や創造性、人間性が育まれる」と話した。

学校のICT環境整備に詳しい堀田龍也・東北大学教授は「ICT活用がうまくいっている学校は、これまでに1人1台端末を配布していて、日常の授業ですでに使っているところが多い」と説明。未整備の自治体が多い現状を踏まえ、「自治体や教委に確実な推進をお願いしたい、と改めて示すべきだ。ICTを導入するだけではなく、授業での積極活用を促し、いろいろな授業形態を教員に経験してもらうことが重要だ」と指摘した。

議論では、素案がICT環境整備を重視している点について、批判的な意見も複数あった。天笠茂・千葉大学特任教授は「いま全国の先生たちは、創意工夫をこらして対応している。例えば、図書室の本を子供たちに渡すとか、いま学校が持っているさまざまな資源を活用するのも創意工夫のひとつだ。がんばっている先生に出すメッセージなのに、ICTが強調されすぎている」と述べた。

また、市川伸一・帝京平成大学特任教授は「ICT色がちょっと強すぎると思う。先生たちに『うちの学校はICTが入っていないからだめだ』と思われたら、むしろ逆効果。ICTがなくても、それぞれが工夫できる、という感じがもっと出ているといい」と話した。

吉田信解(しんげ)・埼玉県本庄市長は、ICT活用の考え方について、「臨時休校が広がる現状では、現場の先生と児童生徒とつながることが非常に大事になっている。ところが、これまで先生が個人で所有するスマートフォンやタブレットでは、保護者とつながること自体が推奨されてこなかった。まず先生にタブレットを支給して、保護者はLINEでもいいので、とにかく先生と子供たちがつながるようにするのが大切ではないか」と述べた。

議論の最後に指名された香山真一・岡山県立和気閑谷高校校長は「これまで学習者主体の学びについて協議してきたのだから、この機会に、中学生や高校生にも呼び掛けてはどうか。ICT環境が整っていない子供たちも決して取り残さないぞ、自分たちが主体的に学ばなければいけないぞ、という強いメッセージを出すべきだ」との意見を示した。

中教審がインターネット上で公式の審議会を開くのは今回が初めて。一部の委員の音声が届かないトラブルもあった。

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