【工藤勇一校長×中邑賢龍教授】コロナ危機と学び巡り対談

コロナ危機をきっかけに急速に変わる社会において、新たな日常と教育の在り方を模索するオンライン対談イベント(一般社団法人 Learn by Creation主催)が4月29日、開かれた。メインスピーカーとして、横浜創英中学・高等学校の工藤勇一校長(前東京都千代田区立麹町中学校長)と、東京大学先端科学技術研究センター教授で、異才発掘プロジェクトROCKETディレクターの中邑賢龍(なかむら・けんりゅう)教授が登壇し、全国から総勢500人を超える教育関係者と保護者、学生らが参加した。

意見を交わす工藤校長と中邑教授。進行はLearn by Creationの竹村詠美氏

工藤校長は「学校や教員は、本来であれば子供の学びを支える支援者であるべきだが、これまでの日本の教育は手をかけ過ぎてきたため、子供たちの自律性が失われている。その状態で一斉休校が始まったので、保護者や子供たちが授業のストップに大きな不安を抱えている状態」と説明。

「今はまず、3密を避けながら、保護者や子供とつながる方法をなんとか見つけて、彼らの不安に寄り添っていくことが大切だ」と述べた。

ROCKETプロジェクトを通じて不登校生徒に関わってきた中邑教授は「日本の教育システムのような均一化されたプログラムを受けていると、自律性や想像力は育ちにくい」とし、「ROCKETの子供たちは、コロナ以前からやりたいことを自律的にやってきているので、実はコロナ休校以降も彼らの学びは何も変わっていない。彼らのように、すでに自分自身で設定した目標に向かって動けていた子は問題なく過ごしているが、休校に不安やストレスを感じている保護者や生徒は、もしかしたら学習の目的を受験に設定していたのではないか」と指摘。

「リアルな対面の場を作れなくなったことで、まだ意欲が前に向いていない子供たちに向けて、われわれが彼らの意欲を引き出す仕掛けを提供することが難しくなったと感じる」と述べ、コロナ禍では子供の学びに対する自律度の重要性が増していることを示唆した。

子供から意欲を引き出し、自律的学習者へとしていくために、教員や保護者が今やるべきことについて、工藤校長は、麹町中で実践した3つの言葉によるリハビリ(①今どんな状況で何に困っている?②どうしたいと思っている?③どんなサポートが欲しい?)を紹介し、「自己決定の機会を繰り返し与えていくことが大切だ」と述べた。

また、日本財団が行った若者の意識調査の結果を示しながら、「子供たちが社会に対して当事者意識を持てていないことが明らかになっているが、これは子供だけの問題ではない。いろいろなものが与えられ続けてきた結果、教員や保護者などの大人も含め、日本全体が当事者意識を持てなくなっている表れだ」と述べ、「コロナ危機をきっかけにして、当事者意識と主体性の希薄化の問題、教育におけるICTの遅れなど、もともと日本が抱えていた課題に対して、日本全体で取り組んでいくべき」と強調した。

中邑教授は「コロナ危機をきっかけに、教育に多様なチャンネルが生まれるはず。子供は一人一人が多様な存在であるため、一斉授業のような均一的な学びがフィットする子もいれば、そうでない子もいる。1校の中で、全ての子供たちに平等な学びの機会を担保するのは難しいが、オンラインやホームスクーリングなどを含めた多様なチャンネルを用意することで、学びの新しい平等を作っていくことができるのではないか」と語った。

この対談の様子は、後日、YouTubeに一般公開される。

次のニュースを読む >

関連