【コロナと学校】ICTアドバイザー始動 見積もり圧縮も

オンライン授業を実現するため一日も早い学校のICT環境整備が求められる中、文科省は5月11日、整備に取り組む全国の自治体をサポートするため、ワンストップの相談窓口となる「ICT活用教育アドバイザー事務局」をスタートさせた。ICT環境整備の計画やセキュリティー・ルールの策定、パソコンや校内LAN工事の仕様書作成、見積もりの精査から、機器を整備した後のオンライン授業や家庭学習の指導方法、研修講師の派遣まで、GIGAスクール構想の実現に向けて全面的に自治体をサポートする。特に悩みの種だった整備費用は、助言によって3分の1程度に圧縮される事例が相次いでおり、ICT整備が後手に回っている教育委員会などの学校設置者にとっては、頼れる“助っ人集団”となりそうだ。

オンライン授業に必要な学校のICT環境として、政府は小中学校の全児童生徒に1人1台端末と高速大容量の通信ネットワークを整備するGIGAスクール構想を掲げ、昨年度補正予算2318億円、今年度補正予算2292億円の計4610億を計上。年度内にも全国でオンライン授業が実現できる体制作りを急いでいる。

この動きに対してボトルネックとなってきたのが、学校設置者である自治体の動き。昨年度補正予算で通信ネットワーク整備に充てる交付金の申請を受け付けたところ、全国1700を超える自治体のうち、文科省に申請してきたのは全体の6割に満たない959自治体にとどまった。

その後、新型コロナウイルスの感染拡大による学校休校が長期化し、オンライン授業の導入に積極的な自治体が増えてきたとされるが、これまで学校のICT環境整備に向き合おうとしなかった自治体では、オンライン授業への取り組みが大幅に遅れているのが実情。こうした地域間のICT格差は、児童生徒の学びの保障に大きな影を落としている。

ICT活用教育アドバイザー事務局の始動は、こうした自治体の背中を押し、地域間格差の解消に向けて実効性のある取り組みを徹底することが目的だ。事務局には各都道府県エリアをカバーした支援スタッフが配置されており、自治体や教育委員会からの相談に対応する。

具体的な相談の流れは①教育委員会などの学校設置者が、メールや電話などでアドバイザー事務局に相談内容を連絡②アドバイザー事務局は、相談内容や地域に応じて、直接回答またはアドバイザーを選定し、教育委員会などに連絡③アドバイザー事務局やアドバイザーが、テレビ会議や電話、訪問により、教育委員会などに助言や支援を行う。

助言や支援について、教育委員会などに費用負担は発生しない。アドバイザーはICT関連企業などから派遣されたプロフェッショナルだ。

相談できる内容は、学校のICT環境整備をゼロからスタートさせて軌道に乗せるまで、全ての段階に対応する。具体的には▽整備計画やセキュリティー・ルールの策定▽パソコンや校内LAN工事などの仕様書作成や見積もりの精査、調達の実施▽ICT機器を整備した後には、オンライン授業や家庭学習などICTを活用した効果的な指導方法▽学校現場の教員たちを対象とした講師の紹介や派遣、研修の実施――までが対象。

文科省ではこれまでアドバイザー事務局の機能を、初等中等教育局情報教育・外国語教育課で担ってきた。その成果として目立ったのが整備費用の圧縮だ。学校設置者が業者から受けた整備費用の見積額は、同省のガイドラインに沿って見直すと、3分の1程度まで減額されるケースがみられる。

例えば、校内LANと電源キャビネット整備費を見直した事例をみると、1校あたり34教室の整備を想定したA市の場合、学校によっては無線アクセスポイント(AP)の台数が教室数の2倍を超えていたり、校内LAN工事が内訳のない一式でざっくりと算定されていたり、スイッチのグレードが必要以上に高かったりしており、見直しのアドバイスを行ったところ、業者による見積額の1校平均1874万円が699万円まで圧縮された。体育館の無線AP設置工事は、見積額の140万円が20万円で済んだほどだった。

また、1校当たり22教室の整備を想定したB市では、そもそも1学校当たりの平均学級数は8.8学級で、業者が見積もりで算定した無線APの台数が必要分の2倍を上回っていた。22教室を想定したため作業工数も上振れしており、各種機器の設計・設定費まで高額だったことも判明。アドバイスの結果、1校平均2880万円の見積額は895万円まで圧縮された。

同課の髙谷浩樹課長は「自治体から『見積もりをとったところ、政府が決めた予算額が少なすぎて整備できない』といった声が聞こえてくることもある。そういうときは相談してほしい」と話す。

アドバイザー事務局は、今年度補正予算でGIGAスクール構想が加速され、相談件数の増加が見込まれることから、こうした相談機能を外部に委託し、全国各地の地域事情に明るいアドバイザーが各自治体に対応できる仕組みに改編したという。

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