【コロナ時代の教育】オンライン授業を生徒と共創

島根県立隠岐島前高校(井筒秀明校長、生徒160人)が実践するオンライン授業の事例報告イベントがこのほど、ビデオ会議システムを使って開催され、教育関係者や保護者ら約80人が参加した。

オンライン授業の導入決定後は、教員同士の雑談も増え、職員室内では全員総立ちでミーティングする光景も見られた

「隠岐島前教育魅力化プロジェクトはどのように緊急的なオンライン対応を実現できたのか?(共学共創的対話で)」と題された同イベントでは、同校の大野佳祐学校経営補佐官が、オンライン授業導入の検討から約3週間で本格運用をスタートさせるまでの動きを時系列で紹介した。

隠岐島前高校は、日本海に浮かぶ隠岐諸島・中ノ島にある。県が主体となって推進する「しまね留学」により、多数の県外出身者を受け入れており、生徒の58.4%が島外出身者。

政府による全国一斉休校要請が出された当時、島根県は県内に感染者が発生していなかったことなどで、47都道府県の中で唯一休校を見送った。そのため、同校も3月中は通常通りの授業を行い、規模は縮小したものの卒業式や終業式も実施した上で春休みに入ることができた。

しかし、その後、大都市圏を中心に感染者数が増大したことで、春休み期間中に帰省していた島外生の帰島によって、島内の感染リスクが高まることが懸念された。高齢者比率が高く、医療資源も限られる離島にとっては大きな脅威であり、そのため、帰島・来島者に対しては宿泊施設で数日から2週間程度の「自己経過観察期間」を設ける措置が取られ、さらに全校生徒の16%に当たる26人が、移動中の感染リスクを考えて自宅に残る選択をした。

その結果、同校は「通常授業を受ける島内生」と「宿泊施設に滞在する島外生」が約4割ずつ、残りの約2割が「本土残留組」という特殊な環境で新年度を迎えることとなり、教室に来られない生徒への学びの保障が急務となった。

3月に島外生から先行して調査したところ、約4割の生徒がWi-Fi環境がないことが判明。そこで、SIMカード入りiPadを送付・配付して環境を構築した。自宅で待機する新入生に向けて、インターネットを通じた入学式の準備も進め、検討を開始してからわずか8日後の4月3日にはオンライン入学式の開催を通知し、同9日に実施した。

オンライン授業は、事前の教員研修を経て4月13日から開始。通学できない生徒には、学校支援クラウドサービス「Classi(クラッシー)」を通じて教科書コピーや課題などを届け、ビデオ会議システム「Zoom」を利用して教室から授業を配信した。

大野氏は短期間でオンライン授業を導入できた背景を、「学校・地域コンソーシアムとして約10年の歴史があり、学校経営チームの役割分担ができていた。また、コーディネーターや学習センターも活躍した」ことを挙げた。すでにSIM対応のiPad90台が導入済みだったことや、校内Wi-Fi環境、ポートフォリオ入力のためにBYODも経験済みだったことなど、インフラ面がある程度、整備できていたこともあるという。

通学できない生徒とつながるオンライン朝礼

しかし、推進に当たり何よりも原動力となったのは、「教職員が『とにかく、やってみよう』と盛り上がり、管理職は、『よく分からないけど、信じてみよう』と、意思決定してくれたことだった」と振り返る。「Zoomを使用したことのない教員も多かったが、オンライン授業配信を決めてからは、職員室の至るところで会話や雑談がされ、授業改善の試行錯誤が繰り返された」と語る。

生徒の支えも大きかった。「受信する生徒から『音声が聞こえづらい』などダメ出しが来たり、授業中にあたふたする先生の横で、教室にいる生徒がオンライン組にチャットで先生の指示を知らせたりするような場面が見られた」という。

大野氏は「オンライン授業の成功のカギは、先生と生徒の垣根を越えて、共に授業を創ることにある」と指摘。「デジタルネイティブ世代の方が、デジタル活用についてはわれわれよりも先を行っている。コロナ危機でオンライン化の施策が10年は早まったが、オフラインとオンラインのそれぞれの特性を生かしながら、さらに顔を合わせた授業に磨きをかけ、価値を高めていくことが重要」と強調した。

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