【コロナ時代の教育】全授業を動画配信 静岡・掛川西高

休校が長期化し、さまざまな方法でオンライン授業を始める自治体や学校が増えつつある。静岡県立掛川西高校(櫻井宏明校長、生徒983人)では、独自に動画配信によるオンライン授業の実施を目指し、4月24日以降、全ての学年、教科で教員による動画配信を実現した。櫻井校長と吉川牧人教諭に、短期間でオンライン授業が実現できた秘訣(ひけつ)を聞いた。

時間割に応じて授業動画を配信
掛川西高校で配信されている授業動画(吉川教諭提供)

同校では現在、全教科・科目で教員による授業動画を作成。生徒は自宅から授業動画を見て、学校から配布された課題などに取り組んでいる。動画は授業開始5分前に配信されるように設定しているため、生徒は学校の時間割に合わせて、自宅で授業を受けられるようになっている。

動画はいずれも10~15分程度で、授業のポイントをコンパクトにまとめ、残りの時間で課題に取り組むスタイルで統一している。動画の中には授業者である教員が登場しないものもあるが、オンライン授業が定着していくうちに、アイコンや動画の中で教員の顔が出ると、生徒の親近感も増すことなども分かってきた。

また、配信された授業内容について生徒がどのくらい理解できているかを確認するため、帰りのショートホームルームの時間にクラウド上で回答できるアンケートも実施している。

櫻井校長は「動画配信の方法では、生徒の反応が直接確認できないため、こうしたフィードバックがとても重要になる。本校では、学習評価について提出された課題だけでなく、学年を分けるなどして中間テストも学校で実施する予定だ」と、教科の学びが休校中も継続できていることを強調する。

家庭のWi-Fi環境を徹底調査

以前から同校ではグーグル社の教育用パッケージ「Google for Education」を導入していたものの、授業や教員によって活用の度合いには差があった。しかし、新型コロナウイルスによる休校で、同校のICT推進委員会委員長である吉川教諭は櫻井校長に、「Google for Education」をフル活用した新学期からのオンライン授業を提案。新入生を含む全生徒、全教員によるオンライン授業の実施に向けた準備が始まった。

吉川教諭からの提案に、櫻井校長は当初こそ「教員のICTスキルの差が大きく、難しいのではないか」との考えが頭をよぎったものの、「休校が長引けば生徒は不安になる。オンライン授業をやるなら全員で取り組もう」と考え、4月最初の職員会議でオンライン授業への挑戦を全教員に伝えた。

早速、吉川教諭は同校の教育活動に関わっていた地元ベンチャー企業「あらまほし」を経営する戸田佑也氏にICTアドバイザーに就任してもらい、全教員に向けた研修会を設定。アプリの操作方法などを戸田氏がサポートしながら、授業動画の作成が始まった。

吉川教諭は「動画作成に対して、教員は思っていたほど抵抗感はなく、みるみる上達していった。むしろ、クオリティーが高くてファイルサイズが大きくなりすぎたため、生徒側の通信負担を考えて我慢してもらったくらいだ」と振り返る。

研修と並行して進めたのが、家庭のWi-Fi環境調査だ。吉川教諭は4月初旬に生徒に紙によるアンケートを行い、各家庭のWi-Fi環境がどうなっているかを調べることにした。その結果、家庭にWi-Fiがないという家庭だけでなく、生徒や保護者が各家庭のWi-Fi環境がどういう契約や設定になっているのか、正確に把握していないケースがあることが分かった。

家庭のWi-Fi環境はもう一度調査する必要がある。そう判断した吉川教諭は、各家庭の通信環境を事前に確認してもらった上で再度アンケート調査を行った。アンケートで環境に問題のありそうな生徒には、戸田氏が作成したフローチャートを基に、問題がどこにあるかを明確に突き止めるための追加の聞き取り調査も実施。事前の動画配信のデモ期間終了までに、全生徒が動画を見られる状態にあることを確認できた。

「評価もする以上、全員が動画を見られるようにするのは、オンライン授業を実施する上での絶対条件だった。外部の詳しい人材の協力を得られたことで、教員の負担を増やさずにスピーディーに実現できたのは大きい」(櫻井校長)。

オンラインだからこその可能性

動画によるオンライン授業が軌道に乗った同校だが、課題もある。「やはり、部活動や生徒会活動、学校行事など、生徒がその場に集まってこその教育活動はオンラインでは難しい。特に新入生は友達を作る時間もないままに臨時休校に入ったので、学校にまだ明確な居場所がない」と櫻井校長は指摘する。

一方で、オンライン教育によって、新たな学びの姿もみえてきた。

動画配信によるオンライン授業を推進した櫻井校長と吉川教諭(左)

吉川教諭は「本校では地域課題を解決する探究学習に取り組んでいるが、掛川市の久保田崇副市長と代表の生徒によるディスカッションを撮影し、教材として配信したり、市役所から家庭にいても考えられる地域の課題を提示してもらったりしている。将来的には、さらにいろいろな人とつながり、話を聞くことだってできるようになるだろう」と、新学習指導要領の柱の一つである探究学習への可能性を強調する。

「これまでの高校では、それぞれの教員の独立性が高く、お互いの授業のやり方はいわば『不可侵領域』だったが、今回の動画作成は教員同士で授業内容をより生徒に伝わりやすくしようと話し合う機会になった。

一方通行の動画配信では生徒の反応が分からないからこそ、生徒がしっかり理解しているかに注意が向くようになっている」と櫻井校長。

吉川教諭も「これだけの動画がストックされれば、学校にとって大きな財産だ。反転学習のように家庭で動画を見てきた上で、学校のリアルな授業ではアクティブ・ラーニングにするなど、選択の幅も広がる」と授業改善への効果に期待を寄せた。

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