【コロナ時代の教育】熊本市のオンライン授業で勉強会

全ての市立小中学校でいち早くオンライン授業をスタートさせた熊本市の山本英史・教育センター指導主事が講師となり、全国の教育委員会の指導主事らに学校のICT環境整備とオンライン授業に取り組むノウハウを説明する勉強会が5月18日、WEB会議で行われた。山本指導主事は「子供たちとつながるために、できることはなんでもすることが大事」と述べ、「いきなりオンライン授業はハードルが高い。まずはオンラインで子供たちの笑顔をみて、健康観察からスタートした」と導入のポイントを説明した。

熊本市で行われているオンライン授業の様子(熊本市教育委員会提供)

勉強会は熊本市が導入している授業支援クラウド「ロイロノート・スクール」を運営するロイロノートが主宰し、全国から20数人の指導主事らが参加した。熊本市はロイロノート・スクールにWEB会議システム「Zoom」を組み合わせて、オンライン授業を展開している。

山本指導主事によると、熊本市は2018年度の段階で学校のICT環境整備は全国で最低水準だった。大西一史市長と遠藤洋路教育長のトップダウンで2018年度に3年計画で整備することを決め、教職員1人1台、特別支援学級1人1台、児童生徒3クラスに1クラス分の端末を配備するため、セルラーモデルのiPadを2万3460台調達。そうした整備の途中で、新型コロナウイルスの感染拡大で3月に一斉休校となり、オンライン授業の実施を迫られた。

今年3月末に児童生徒の家庭のネット利用環境を調査したところ、ネット環境がない児童生徒は小学校33%、中学校29%と分かった。山本指導主事は「熊本市が用意したセルラーモデルのiPadを家庭に配れば、ぎりぎりで全ての家庭でオンライン授業が可能になると判断した」と話す。

新年度になった4月6日と7日に各学校から2人ずつを集めて、オンライン授業の研修を実施。緊急事態宣言の全国拡大を受けて4月15日から再び臨時休校に入ることが決まり、わずか3日間で市内の小中学校134校でオンライン授業をスタートさせる準備を整えた。

山本指導主事は「先生たちには、まずスモールステップで、少しずつスキルアップしてもらった。最初にやったのは『子供たちの健康と心の安定を図るために、とにかく子供たちとつながってほしい』と先生たちにお願いすることだった」と振り返る。最初の健康観察の段階では、WEB経由でZoomを使った学校もあれば、電話で子供たちとのつながりを維持した学校もあったという。

「学校現場に行くと、Zoomの画面で、子供たちの顔や子供たち同士が話をしている姿をみて、先生たちも子供たちもとても喜んだ。最初の段階では、先生たちが果たした一番大きな役割は、学校と家庭をつないで、休校中の子供たちの様子をみてくれたことだったと思う」と話す。

熊本市のオンライン授業は全て、教員と児童生徒が双方向でコミュニケーションをとることが前提になっている。ICTへの苦手意識がある教員もいるので、複数の教員がチームで取り組み、トラブルの回避に努めた。

次のステップでは、教員がロイロノートで児童生徒に課題を送り、児童生徒が成果物を提出する。いまのところ、この段階までは、市内の全小中学校で実現できているという。その先には、児童生徒同士が端末を使って成果物を共有したり、一緒に制作したりして、学び合いや教え合いによって学びを深めていく協働学習のステップが待っている。

山本指導主事は「先生たちがICTに慣れてきたら、子供たちが毎日どういう学びをしているのかをみるところに少しずつシフトしてもらう。今まで学校の授業ではなかなかできなかった、長い取り組みの時間が必要な課題をあえて先生方が設定して、出していく。子供たちの学びを広げていくときにも、先生たちに役割を果たしてもらった気がする」と話す。

続けて、「子供たちの学びを広げていくことは、学校が再開された後にも、重要なポイントになる。オンラインの授業でやったような授業が、そのまま学校で行われるといい。授業の遅れを取り戻そうと、先生たちが一方通行で教え込むだけの授業にシフトしていくのは、非常に残念だ。子供たちの学びを止めない。つまり子供たちが創造的な学びが続けられるような立場を、先生たちにはとってほしい」と気持ちを込めた。

学校のICT環境を活用するイメージ

また、不登校の児童生徒について、「学校現場に聞くと、不登校の子供たちがオンラインで授業に参加している。学校が再開したときに、その子供たちのタブレット端末を取り上げてしまうというのは非常にもったいない」として、オンライン授業のプラス効果を説明。特別支援学級についても、「学びに時間がかかる子供たちのタブレット端末は、そのまま家庭で使えるようにしてほしい、とのリクエストも受けている」と話した。

こうした不登校や特別支援学級への対応について、山本指導主事は「学校になかなか足が向かない子供たちの学びを保障することや、学びに時間のかかる子供たちへのタブレット端末は、それぞれの学校で自由に取り扱ってほしい。オンライン授業を通じて、先生たちには、いままで以上に子供たちに寄り添った立場をとってもらえるといいと思っている」と説明した。

今後の分散登校では、児童生徒が学校と自宅で同時に同じ授業を受けられる環境を作る方針。2021年2月までに全小中学生に1人1台端末を整備し、同時に教員の在宅勤務や学校行事についてもオンラインを活用していく考えを示した。

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