【コロナと学校】レベル1は通常活動 衛生マニュアル通知

長期休校後の再開に向けて学校現場が踏まえておかなければならない新型コロナウイルス感染症の衛生管理について、考え方や具体的な対応策を一冊にしたマニュアル「学校の新しい生活様式」がまとまり、文科省は5月22日、都道府県の教育委員会などに通知した。地域別の感染状況を3段階のレベルに分け、教室内で確保するべき児童生徒間の身体的距離を明示したほか、各教科や部活動で留意すべき内容をレベル別に示している。最も感染レベルの低いレベル1では、感染症対策を十分行った上で、従来の40人学級による授業が可能とし、部活動も通常の活動を行うよう求めた。

衛生管理マニュアルについて説明する平山直子・文科省初等中等教育局健康教育・食育課長

この衛生管理マニュアルは、政府の新型コロナウイルス感染症対策専門家会議が国民に求めた「新しい生活様式」を基に、「感染リスクはゼロにすることはできないという事実を前提として」学校現場に必要な内容をまとめたもので、「学校の新しい生活様式」との副題がつけられている。

文科省初等中等教育局の平山直子・健康教育・食育課長は「学校再開にあたり、衛生管理について、学校や教育委員会の担当者がこれを見れば分かるというものをまとめた」と位置付けを説明した。

同マニュアルでは、まず、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部が緊急事態宣言の対象地域を都道府県単位で判断しているのに対し、専門家会議に参加する感染症専門家の助言を踏まえ、学校の教育活動については、児童生徒や教職員の「生活圏における感染症のまん延状況に応じて判断することが重要」だと明記した。

地域の感染レベルを3つの段階にわけ、それぞれに「新しい生活様式」を踏まえた学校の行動基準を示した=図1参照。

最も高いレベル3は、生活圏の状況が、専門家会議が示した特定警戒都道府県に相当する感染状況の地域。

図1=「新しい生活様式」を踏まえた学校の行動基準

中間のレベル2は、感染拡大注意都道府県に相当する感染状況で、特定警戒都道府県の半分程度の新規感染報告者がいる場合や、感染経路が不明な感染者が過去に一定程度存在していて、当面の間、注意が必要な地域を指す。

最も低いレベル1は感染観察都道府県に相当し、新規感染者が一定程度確認されるものの、感染状況をモニタリングしながら、「新しい生活様式」を徹底する地域とした。

それぞれの学校現場がどの感染レベルに相当するかの判断は、学校設置者が行う。重要な判断になるので、平山課長は「実質的には、教育委員会などの学校設置者が、自治体の首長や衛生主管部局と話し合って決定することになるだろう」とした上で、5月14日に緊急事態宣言が解除された39県にある学校はレベル1に相当するとみていると説明した。また、レベル2の例として、5月21日に緊急事態宣言を解除された兵庫県を挙げた。

マニュアルでは、こうした3つの地域別感染レベルを前提に、さまざまな学校活動の指針を示している。

教室については、「3密」(密閉、密集、密接)を回避するために、実際に確保すべき児童生徒間の身体的距離をレベル別に明示した。この目安は、学校現場から最も問い合わせが多い内容だという=図2参照。

図2=学級内の身体的距離の参考例

レベル3とレベル2の地域では、児童生徒の間隔について「可能な限り2m(最低1m)確保するように座席配置」をするよう求めた。このため、多くの学校では、学級を2つのグループに分け、分散登校や時差登校を行うといった対応が必要になる。

一方、レベル1地域では、児童生徒の間隔を「1mを目安に学級内で最大限の間隔をとるように座席配置」するとした。この場合、標準的な広さ70㎡の教室では、座席の間隔を広げることによって、40人学級での授業が可能になる。

このマニュアルに従えば、5月14日に緊急事態宣言が解除された39県はレベル1に相当すると考えられるため、40人学級による学校再開が可能となる。こうした学校再開とレベル区分の関係について、平山課長は「第2波、第3波の感染が起きるリスクを考えれば、児童生徒の人数や教室などの施設環境によって、分散登校が可能な学校は、レベル1であっても、分散登校や時差登校で学校を再開した方が安心だ。しかし、分散登校がなかなか難しい環境にある学校では、当面40人学級で再開し、感染が再び拡大した場合には、別の対応をとるのが現実的な選択になると考えられる」と説明した。

次に、各教科の授業では、全ての授業に共通して「特に感染リスクが高いもの」として、「児童生徒が長時間、近距離で対面形式となるグループワークなど」「近距離で一斉に大きな声で話す活動」を挙げた。さらに教科別では、音楽における「室内で児童生徒が近距離で行う合唱」「リコーダーや鍵盤ハーモニカなどの管楽器演奏」、家庭、技術・家庭における「児童生徒同士が近距離で活動する調理実習」、体育、保健体育における「児童生徒が密集する運動」や「近距離で組み合ったり接触したりする運動」――を列記した。

こうした特に感染リスクが高い授業活動については、レベル3地域では行わないよう求め、レベル2地域では「リスクの低い活動から徐々に実施することを検討」するとした。一方、レベル1地域では「可能な限り感染症対策を行った上で実施することを検討」するとしており、感染予防に留意した上で実施可能と位置づけた。

部活動についても、地域別レベルによって活動内容の指針を示した。レベル3地域では「密集する運動や近距離で組み合ったり接触したりする場面が多い活動、向かい合って発声したりする活動は行わないように」求めた。こうした活動は、レベル2地域では「慎重な検討が必要」と説明した。

これに対し、レベル1地域では「可能な限り感染症対策を行った上で、通常の活動」を行うと明示した。こうしたマニュアルの指針に従えば、緊急事態宣言が解除され、学校の生活圏内で新規感染報告者が抑制されている場合、感染症予防に留意しながら、通常通りの部活動を再開できることになる。

給食では、レベル3地域では「通常の提供方法による学校給食の実施は原則として困難」と記し、レベル2地域では「通常の学校給食の提供方法に徐々に戻していくとともに、地域で感染者が確認された場合には、柔軟に対応」するよう求めた。レベル1地域では、「衛生管理を徹底した上で、通常の学校給食の提供方法を開始」するとしている。

「感染リスクはゼロにすることはできない」との事実を踏まえ、平山課長は「このマニュアルは、学校再開しても新型コロナウイルスに感染する児童生徒、教職員が出てくることを前提としている」と説明。その上で、「学校活動でのリスクを最大限下げ、感染者が出た場合にはあわてることなく、しっかりと対策を行い、感染拡大を防ぐという観点で、学校生活を送ってほしい」と述べ、41ページに及ぶ分厚いマニュアルに込めた学校現場へのメッセージを語った。

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