【コロナと学校】再開で子供のリスクは? 専門家に聞く

一斉休校から3カ月――。全国の学校が通常再開に向けて、本格的に動き始めた。文科省や自治体から学校内の衛生管理マニュアルが公表され、分散登校や給食の簡素化など、児童生徒の健康を守るための「新しい生活様式」が各地の学校で実行されている。見えないウイルスの感染リスクと隣り合わせに思える、これからの学校生活。現場の教職員はどのような心持ちで立ち向かうべきだろうか。子供の感染症の専門家であり、新潟県新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の委員である齋藤昭彦・新潟大学医学部小児科教授に話を聞いた。


科学的根拠はどこに
――文科省が出した衛生管理マニュアルについて、どう評価していますか。
齋藤昭彦・新潟大学医学部小児科教授

授業中や休み時間などに細かい行動の制限が記載されていますが、医師の立場から、それらの科学的根拠が乏しいことは明確です。これらを子供たちが仮に守れたとして、感染拡大防止がどこまでできるのかは分かりません。

ただ全国の学校現場を管理する立場にたつと、そこまで細部に渡り言及する義務や責任があると理解しました。

文科省だけでなく、都道府県教委や市区町村教委も同様のマニュアルを発出しています。学校現場によっては3つのマニュアルでがんじがらめになっており、「どのマニュアルに合わせればいいのか」と相談が寄せられることもあります。

――日本小児科学会では子供が感染した場合の症状は軽く、重症化の確率は低いと言っています。その見解は今でも変わらないのでしょうか。

現時点でのデータに基づくと、やはり子供の感染例は少ないですし、重症化リスクも低いと分かっています。また、1人の感染した子供からの感染力も低いことが分かっています。先日明らかになった北九州市の小学校でのケースも含め、学校や保育園、学童などでクラスターが発生した事例はいまだ限定的です。

ただ子供間での感染の広がり方など、まだ明らかになっていないことがあるのも事実です。

現段階のデータからは、感染が落ち着いている地域では、学校を再開しても問題ないと考えます。しかし状況は刻々と変化する可能性があります。いろいろな対策を立てながら、成功・失敗を経験し、最善策を見つけていく期間がしばらく続くでしょう。

子供たちは自ら声をあげることができません。小児科医として子供にとって何がベストなのか、科学的事実に基づいて発信することが大切だと感じています。日本小児科学会では子供の新型コロナウイルス感染症についての世界の論文情報を、日本語に要約し発信しています。学校関係者にはこういった情報も参考にしてもらいたいです。

フェースシールドは有効か
――フェースシールドを児童生徒が着けたり、机の周りを段ボールで区切ったりなど、感染拡大予防のために各学校で独自の取り組みが広がっています。

私も県内外の学校関係者と情報交換しています。

とある自治体のマニュアルでは「児童生徒同士で話すときは正面ではなく、斜めを向く」「給食は黙って食べる」などと厳密に明記されていました。フェースシールドや机の周りの仕切りもそうですが、他人の飛沫(ひまつ)を避けるための感染症対策としては間違っていません。感染者がいまだに減らない地域などでは、こうした策は時に有効かもしれません。

ただ長期に渡ると、児童生徒の発育に影響が出ないか不安を感じます。友達の顔を見ないで話す不自然さや、1日中フェースシールドに顔を覆われて過ごす苦しさは、子供たちの成長や発達に影響を及ぼす可能性を否定できません。

例えばフェースシールドは本来、私たち医師が呼吸器症状のある患者の診療を行うときに、患者の飛沫を直接浴びないために使用するものです。健康チェックをし、できる範囲での「3密」を避けている状況の学校で、果たしてどのような効果があるのかは、疑問が残ります。

むやみやたらに「怖いから」と感情的に対策を講じるのではなく、地域の感染状況や子供たちの心理面を考慮して柔軟に変えていくことが大切だと思います。

――北九州市の小学校ではクラスターが報告され、不安が広がっています。

全国の学校関係者に心に留めておいてほしいのは、どれだけ対策を講じても校内で感染者が出ることや、学校がクラスター化するリスクは0(ゼロ)にはなりません。

文科省のガイドラインでも触れられていることなので、皆さんは頭の中では理解できていることと思います。どれだけ先生方が注意していても、今後同様の事例が発生する可能性はあります。そのときに文科省や教委、教職員、保護者、学校に関わる人間がいかにパニックを起こさず、現状をしっかりと把握し、なぜ、その事例が起きたのかを冷静に判断し、対処できるかが非常に求められます。

また、文科省や自治体のマニュアルの多くが「学校で感染しないため」の視点で語られています。これまでのデータを踏まえると、子供の感染経路の大半が家庭内にあります。つまり学校にウイルスを持ち込まないためには、家庭内でどれだけ感染を防げるかが大切になってくるのです。

子供はもちろん保護者も感染リスクの高い場所に行かない、自宅でも家庭内感染にできるだけ配慮するなど、保護者に対して強く呼び掛けていかなければなりません。

神経質になりすぎないで
――再開に当たり、学校現場にアドバイスをお願いします。

今回の一斉休校で学校現場は大きく混乱しました。再開に当たっても、対策について試行錯誤し相談しに来る先生もいらっしゃいます。先生方一人一人が、児童生徒の健康に真剣に向き合っている証拠でしょう。

ただ一方で、神経質になりすぎないでほしいという願いもあります。

児童生徒、特に小学校低学年では、どれだけ教師が注意しても、マニュアルに書かれていること全てを守るのは難しいでしょう。友達とじゃれ合ったり、マスクをずっと着けていられなかったりなど、目に付くかもしれません。

そんなとき、一方的に叱らないでほしいのです。「なぜ友達とじゃれ合えないのか」「なぜマスクを外してはいけないのか」、分からない状態で叱られるのは子供にとってとても苦痛でしょう。

新型コロナウイルス感染症は、特に子供はかかっても症状が出ないか軽いことが多く、また知らないうちにかかってしまうこともあります。この感染症がどのような病気で、なぜ私たちはこのような我慢をしなければいけないのか、子供の発達段階に合わせて一つ一つ丁寧に説明して、理解を促してあげてほしいです。

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