オンライン教育を短期で推進 尼崎市の松本教育長が講演

超教育協会(会長・小宮山宏三菱総合研究所理事長)のオンライン講演会が6月3日、開かれ、新型コロナウイルス感染症の影響で休校が続く中、市立学校でICTを活用した教育を短期間で推進した兵庫県尼崎市の松本眞教育長が、児童生徒の学びの保障につなげた取り組みを振り返った。

オンライン講演会でICT導入を振り返る松本教育長

同市は人口約45万人の中核市。水害対策に多額の経費がかかり、教育用コンピューターの整備は児童生徒10人に1台の割合と、教育へのICT導入が遅れていたところ、新型コロナウイルス感染拡大により市立学校が長期休校を余儀なくされた。

臨時休校の直後は「早い春休み」というイメージで、家庭学習は学んだことの「復習」に充てるよう求め、教員は卒業式や成績表の処理、進学先への引き継ぎなどに時間をかけていたという。4月に入り、「児童生徒への学習支援を本格的に考えなければ」と不安を募らせたが、同市のICT環境を考えると、プリントの配布が精いっぱいだと感じていた。ただ、教科書は自宅学習用に作られておらず、子供にとって、文字だけを見て自習することは負担が大きいと懸念していた。

4月中旬になって、教員研修にクラウドストレージサービスを導入したらどうかとの話を聞きつけた。安全にデータを保存し、インターネット上でファイルが共有できるサービスで、容量が無制限で動画もアップでき、パスワードがあれば使用者のアカウントも不要だと知り、「学習支援にも使えるのではないか」と、教員研修だけでなく児童生徒の家庭学習にも活用することを思い付いた。

同市の調査では、学校側がインターネットを使って教材や動画を配信した場合、パソコンやスマホなどで受信が可能な児童生徒の家庭は95%だった。まず導入に取り組み、受信できない5%の児童生徒には、家庭訪問や電話などで丁寧に対応しようと決めた。

配信したコンテンツは動画を活用し、学習支援教材のほか、自宅で過ごすことを求められた子供たちへのメッセージなどを送った。「受信できる環境が全体になければやらないというのではなく、できるところからやろうと考えた。クラスで見れば1人か2人いる、受信できない5%の子供たちにもいろいろな支援をし、学びの保障につなげないといけない」と振り返る。

新型コロナウイルスの感染拡大が収束しても、「学校が元の状態に戻らないようにしなければならない」と自戒し、オンライン教育を取り入れた現状を維持しながら学校を再開していきたいと強調。「ICTの活用はツールにこだわってはいけない。子供たちにコンテンツをインプットするだけではなく、学びを深めるためにアウトプットも上手にやる。その知恵比べをしたい」と、オンライン教育の推進に意欲を示した。

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