【入試改革】「理念先行でなく現実的に」 大学入試会議

来年度から導入が予定される大学入学共通テストを見据え、大学入試をどうすべきか議論する文科省の「大学入試のあり方に関する検討会議」の第8回会合が6月5日、WEB会議で開かれ、東京大学大学院教育学研究科の中村高康教授ら有識者と、代々木ゼミナールなど大手予備校の幹部らが、さまざまな視点から提言した。中村教授は「入試で教育を変えようとすれば、必ずゆがむ」と、知識の詰め込み批判を回避するために主体性評価の全体への導入を試みるなどの、性急な入試改革を戒めた。

オンラインで行われた検討会議

中村教授は内申書などで受験生の主体性を評価することについて、「多くの高校生が中学時代に内申書を意識し、いろいろなことを実際に行っている」と指摘。内申書を書く教員の心証をよくするために、「校則を守る」「先生に反発しないようにする」「学級活動に積極的に取り組む」「休み時間や放課後に先生によく質問する」ことなどを実践する生徒が多いことを挙げ、「良い子になる競争など、生活全体を入試に絡めて考えざるを得なくなる」と憂慮した。

その上で、「理念先行のトップダウンではなく、専門家、現場教員、受験生などの意見をボトムアップで吸い上げて、データやエビデンスに基づいた現実的な制度をつくるべき」と提言した。

上智大学言語教育研究センターの吉田研作センター長は、入試の英語で「読む」「聞く」に「話す」「書く」を加えた4技能を導入するには、「英検やTOEFLなどの民間テストをいかに使っていくかがポイントになる」とし、その理由に「学校で学んだレベルごとに英語力を測る英検などは、学習指導要領が定める高校卒業程度の英語力を測定するのに適している。TOEFLのテストなどで求められる英語力も、学習指導要領に沿った授業を展開すれば十分に準備ができる」ことを挙げた。

吉田センター長はまた、新型コロナウイルス感染症の影響で授業が滞ったことで、来年度入試の出題範囲を狭めようとする動きに、私立大としては「入試問題をすでに作り始めており、出題範囲を変えるのは非常に難しい状況」だと明かした。その上で、入試の実施や入学時期を後ろ倒しすることも現実的な検討課題ではないかと問題提起した。

受験産業の立場からは3氏が発言した。代々木ゼミナールを経営する高宮学園の高宮敏郎副理事長は「現在の受験生は新テストへの移行に対する心理的不安に加え、決定事項が覆ることへの失望や、入試要項発表の遅延といった決まらないことへの不安など、多大なストレスに直面している」と現状を憂慮し、「学習の努力が相応に報われる入試が改革の前提」だとした。

東進ハイスクールなどを運営するナガセの永瀬昭幸社長は、大学入試センター試験を利用する私立大が、初年度の1990年度には4.3%にすぎなかったものが次第に増え、今年度は89.3%に達したことを示した一方で、「東大合格者を調べると、大学受験で問われることのない英語スピーキングの成績が世界各国と比べても極めて低い」ことを挙げ、「新学習指導要領に対応したテストを実施する予定の2025年1月を目標に、大学入試センターが英語4技能の試験を作成し、これまでのセンター試験と同様に全国統一の試験を実施していただきたい」と求めた。

旺文社教育情報センター蛍雪情報グループの石井塁氏は、出願資格を英検2級とし、当日の試験は英語を課さないなどと、英語の外部検定を入試に利用すれば、受験生が殺到するケースも見られるとし、「必要な学科が適切な定員枠で外部検定を利用すればいい。外部検定を受けられない受験生にも、英語の4技能を勉強してきた受験生にも配慮できる」と、大学入試に英検などを活用する利点を示した。

次のニュースを読む >

関連