考え、議論する道徳を推進 学術会議が哲学の観点で提言

小中学校で教科化された道徳について、日本学術会議は6月9日、哲学や倫理学、宗教学などの観点から道徳教育の方向性を検討した報告書を公表した。教科化された道徳教育の問題点を指摘しつつ、哲学的思考の導入やシティズンシップ教育との接続を図り、「考え、議論する道徳」を推進していくべきだと提言した。

「考え、議論する道徳」への転換を掲げた日本学術会議の報告書

同報告書では、学校現場での深刻ないじめ問題をきっかけに、それまで、読み物教材の登場人物の心情を理解する指導に偏っていた道徳教育の在り方を見直し、検定教科書の使用や記述による評価を通じて、子供が自分自身の問題として多面的・多角的に考えることを求めた道徳の教科化の動きを肯定的に評価した。

一方、報告書では実際に学校現場で使われている教科書を検討した上で、現状では、自己犠牲を美化したり、個人の権利よりも組織や社会、既存のルールを優先させる考えを推奨したりしているかのような題材が見受けられると指摘。他者への配慮や思いやり、義務、社会貢献が強調される一方で、個人の自由と権利の主張の重要性については言及が弱いことが問題だとした。

また、価値観が多様化している現代において、道徳の授業で教師が特定の価値を子供に注入してしまわないように常に注意する必要性や、宗教などを含めた多様性を尊重する姿勢が求められるとした。

その上で、同報告書では教科化の狙いの一つでもある「考え、議論する道徳」への転換を目指すために、根拠と自分の行動、思考方法を問い直す哲学的思考の導入や、シティズンシップ教育との接続を意識した実践の重視を提言。教員養成や教科書の編集過程において、哲学や倫理学、宗教学の視点を取り入れる必要性も示した。


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