大学入試で対立表面化 文科省、全高長の要望書受け取らず

新型コロナウイルスの影響による大学入試の日程について、全国高等学校長協会(全高長)は6月16日、大学入学共通テスト、国公私立全ての大学の総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)、一般選抜について、「実施時期を一体的に1カ月程度後ろにずらすことを求める」とした要望書を文科省に持参した。しかし、同省の担当者は「(私立を含めた)全ての高校の意見としてまとめてほしい」として、要望書を受け取らなかった。同省は6月中に公表する「大学入学者選抜実施要項」で、大学入試の日程や試験内容に関する指針を示す方針。しかし、大学と高校の溝は深く、高校側も一枚岩ではない。一連の対立が表面化したことで、実施要項の取りまとめは予断を許さない状況になってきた。

記者会見する全高長の萩原聡会長(右)と石崎規生・全高長大学入試対策委員会委員長

同省は17日夜、大学や高校の関係者や感染症専門家による「大学入学者選抜方法の改善に関する協議」の第2回会合を開き、対応を協議した。大学側は日程や試験内容の変更に消極的な姿勢をとっている。私立高校などで構成する日本私立中学高等学校連合会(中高連)は、大学入学共通テストなどを予定通りの日程で実施することを求めたとみられ、同じ高校側の立場でも、1カ月の後ろ倒しを求める全高長との隔たりは大きい。

これに先立ち、全高長は6月16日夜、都内で記者会見を開き、萩生田光一文科相に宛てた要望書の内容を説明した。それによると、要望は(1)新型コロナ感染拡大防止のため、本来の学習の機会を失った全ての受験生に、学習指導要領が定める学習の履修機会を確保し、安心して大学入試に臨めるよう、大学入学共通テスト、国公私立全ての大学の総合型選抜、学校推薦型選抜、一般選抜の実施時期を一体的に1カ月程度後ろにずらすことを求める(2)新型コロナによる臨時休校などがさらに実施された場合、入試時期などについて柔軟な対応を求める――の2項目。

全高長では、この要望書を国立大学協会(国大協)、日本私立大学協会(私大協)、大学入試センターにそれぞれ提出した。しかし、6月16日夕方、文科省に持参したところ、要望書の内容に中高連など私立校の意見が含まれていないことから、文科省担当官は「全ての高校の意見を反映させてほしい」として受け取らなかったという。

この経緯を受けて都内で急きょ記者会見した萩原聡・全高長会長(都立西高校校長)は「せっかく要望書を出したのに、議論の俎上(そじょう)に載らなければ、不本意だ。合意はできないと考えてほしい」と述べ、文科省が要望書を受け取らなくても、全高長として要望書の内容に沿って大学入学者選抜方法の改善に関する協議に臨む考えを示した。

同省が全高長の要望書を受け取らなかった背景には、11日に開かれた1回目の「大学入学者選抜方法の改善に関する協議」で全高長が報告したアンケート結果を巡る認識の違いもあるとみられる。

アンケート結果は、同省の依頼で全国の国公私立高校5276校のうち4318校の回答を仮集計したもの。共通テストの日程について、①現時点では、当初予定通りの実施とすべき 30.0%②現時点では、当初予定通りの実施とし、予定通り実施できなかった場合の予備日の日程も明確にすべき 39.0%――を合わせて、予定通りの実施を求める意見がほぼ7割を占めた。

このアンケート結果を踏まえ、1回目の協議では、多くの関係者が予定通りの実施が望ましいとの見方に傾いたかにみえた。しかしながら、全高長は13日のオンライン会合で「約3割の会員が延期を求めている」として、大学入試を1カ月程度の後ろ倒しする方針を了承。今回の要望書につながった。

一方、国大協は15日のオンライン会合で、アンケート結果も踏まえ、大学入試を予定通りの日程で実施するとの見解で一致。全高長の姿勢について「二転三転している」(永田恭介会長)との批判が出た。萩生田文科相も16日の閣議後会見で「ころころ変わられても困る」と当惑を示している。

こうした批判を踏まえ、石崎規生・全高長大学入試対策委員会委員長(都立世田谷泉高校校長)は16日夜の記者会見で、「私たちの考え方は、あくまで高校生に学習すべきことを全部学ばせたいというところにある。あくまで学習の機会を保障するためには延期のほうがいいだろう、という判断だ。学習の内容を減じて、テストの出題範囲も減らして、高校の学習内容を全部学ばないまま臨ませるよりも、大学入試を遅らせたほうがいい、と言っている。一番の根底はその部分だとご理解いただきたい」と説明した。

記者会見では、同席した首都圏の全高長幹部から、長期化した休校の影響を懸命に取り戻そうとしている学校現場の声が相次いだ。

平賀洋一・千葉県立東葛飾高校校長は「何らかの配慮が必要だとの認識が前提だ。千葉県には、都市部と郡部があり、学力差やネット環境にも差がある。大学入試の日程については意見が分かれているが、困っているところに合わせるのが、教育的にも、公平性、公正性を保つためにも必要と考えている。いまの高校3年生は、さまざまな変更にさらされてきた学年なので、できるだけ早く結論を出し、安心させてあげたいというのが切実な思いだ。しっかりと授業や受験に臨ませてあげたい」と話した。

井坂秀一・神奈川県立柏陽高校校長は「(大学入試日程は)7割が予定通りとのアンケート結果だが、『逆だろう』という印象を持っている。神奈川県の県立高校では、子供たちの健康により慎重な考えを取っており、再開のスピードがゆっくりだ。4月と5月は授業がなく、先週やっと2日だけやった。配慮してやってほしいというのが、正直な気持ちだ。第1希望をどうするか、文系理系をどうするか、そもそも進学か就職かで悩んでいる生徒がたくさんいる。学習面はもとより、もっと子供たちの面倒をしっかりみる時間がほしい」と訴えた。

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