共通テストは3段構えで予定通り 大学入試の日程固まる

新型コロナウイルス感染症のまん延を受けた大学入試の日程について、文科省は6月17日、大学入学共通テストについて3段構えの実施案をまとめ、大学や高校の関係者との協議に提示した。本試験は予定通り実施し、同時に出願時から選択できる追試験を2週間後に設定、さらにウイルス感染などによって追試を受けられなかった受験生を対象に、その2週間後に「追試の追試」を実施する。総合型選抜(旧AO入試)は2週間後ろ倒しする一方、学校推薦型選抜(旧推薦入試)は予定通りとする。国公私立大の一般選抜(個別試験)は、追試験の設定や出題範囲の工夫などを前提に、予定通りの日程で実施する。協議では、入試日程の1カ月程度の後ろ倒しを求めていた全国高等学校長協会(全高長)が歩み寄り、全ての大学高校関係者が大筋で了承した。文科省は実施案の内容を「大学入学者選抜実施要項」に盛り込み、近く公表する。

大学入試の日程案

同省がまとめた実施案と、大学や高校の関係者が出席した17日の「大学入学者選抜方法の改善に関する協議」第2回会合でのやりとりについて、同省の森田正信戦略官と前田幸宣・高等教育局大学入試室長が説明した内容を総合すると、それぞれの大学入試の概要は次のようになる。

[大学入学共通テスト]

本試は予定通り1月16、17の両日に行う一方、追試は例年より1週間後ろ倒しして、2週間後の1月30、31の両日に行う。追試験の会場は、例年の2会場から全国47都道府県に拡充して設置する。また、高校の休校長期化に配慮して、学習の遅れなどを理由に、出願時から追試を選択することも可能とする。

本試と追試の得点調整は行わない。協議では、大学入試センターの担当者から「本試と追試の難易度は合わせてあるので、得点調整は必要ない」との説明があった、という。

さらに受験生が新型コロナウイルス感染症に感染したり、濃厚接触者になったりするケースなどを想定し、追試が受けられなかった受験生のために「追試の追試」を設定し、2月13、14の両日に実施する。「追試の追試」は「緊急対応用の試験という位置付け」(森田戦略官)で、実施の詳細はこれから大学入試センターで検討する。

本試と追試の関係については、協議の席上、大学入試センターの担当者が「出願時から追試を選択できるようにすると、今回初めて実施される大学入学共通テストの出題傾向をみるために、本試よりも追試を選ぶ受験生が出てくるのではないか」との懸念を表明。追試を出願する場合には「休校の長期化による学習の遅れについて、高校からの証明が必要ではないか」と指摘した。追試の受験資格については今後詳細を検討し、大学入試センターが策定する試験実施大綱で公表する。

共通テストを異例の3段構えで実施することにした理由について、森田戦略官は「先に全高長が全ての高校を対象に行ったアンケート調査の結果、高校の7割が予定通りの実施を求める一方、3割が入試日程の後ろ倒しを求めていた。入試日程の後ろ倒しを求める高校では、後ろ倒しの期間を2週間程度とする意見が最も多かった」と指摘。本試は予定通りとしながらも、追試を2週間後に全国47都道府県に拡充して行い、さらに受験生の感染リスクに備えて「追試の追試」を設定した根拠を説明した。

[総合型選抜(旧AO入試)と学校推薦型選抜(旧推薦入試)]

総合型選抜の出願開始は、当初予定の9月1日を2週間後ろ倒しして9月15日となる。昨年まではAO入試としては8月1日に出願開始だったので、昨年よりも1.5カ月の後ろ倒しとなる。高校の休校長期化、スポーツなどの大会や資格・検定試験の中止を踏まえ、高校から入試日程の後ろ倒しを求める意見がある一方、大学には面接など必要な時間として1.5カ月程度の選考期間を確保する必要があることから、2週間の後ろ倒しとなった。総合型選抜の合格発表は予定通り11月1日以降を想定している。

学校推薦型は予定通り実施され、出願時期は11月以降、合格発表時期は12月以降に設定された。

高校から大学に提出される調査書の記載方法についても、柔軟な対応を打ち出している。高校の臨時休校で高校3年生の評定を記載できない場合は、その理由を付記して「記載不可」とすることを認めた。臨時休校やスポーツなどの大会、資格・検定試験の中止によって、特別活動や指導上参考となる諸事項の欄が記載できない場合には、その理由を付記して、当初参加を予定していた大会名や資格・検定試験名などを記載することとした。各大学に対しては、こうした調査書の記載によって受験生が不利にならないよう要請する。

[一般選抜(個別試験)]

試験日程は、国公私立大ともに、当初の予定通りとする。その上で、受験生の感染リスクを考慮して全ての大学に追試を設定するよう求めた。

国公立大学は、追試の設定か、前期の受験ができない場合、後期への振り替えができるようにする。追試は前・後期日程後にまとめて行うことも可とした。

私立大学は、追試の設定か、追加の受験料を徴収せずに別日程での受験に振り替えられるよう配慮するよう明記した。文科省では追試験や別日程での受験への振り替えによる入学者が出た場合、大学の定員超過の取り扱いを検討するとしている。

こうした追試の設定などについては、各大学の実施内容を文科省のホームページで公開する。

試験の内容についても、受験生への配慮を要請している。

共通テストの科目指定については、各大学に対し、「地歴・公民、理科の2科目指定を1科目に減じる」「指定科目以外の科目への変更(例えば、「物理」から「物理基礎」)」などの検討を促した。

出題範囲については、休校長期化の影響で高校生の学習進度にばらつきがあることを踏まえ、高校3年生で履修することの多い科目(数学Ⅲ、物理、化学、生物、地学、世界史B、日本史B、地理B、倫理、政治・経済)について、受験生が自分で答える問題を選ぶことができる選択問題を設定するよう求めた。

さらに、数学Ⅲ、物理、化学、生物については、「発展的な学習内容」から出題しないことを明記した。

◇   ◇  ◇

森田戦略官によると、文科省の実施案に示された入試日程や試験内容について、協議に出席していた国公私立大学や公立私立の高校関係者は、おおむね了承した。

大学入試の日程や配慮事項の実施案を説明する、文科省の森田正信戦略官(右)と前田幸宣・高等教育局大学入試室長

総合型選抜の2週間後ろ倒しについて、国立大学関係者からは「高校の意見を尊重し、了承したい」との意見が出た。私立大学関係者からは、個別試験について「日程はなかなか動かせない部分がある。予定通りの実施が妥当だ」として実施案の内容を評価する発言があった。

全ての入試日程を1カ月程度後ろ倒しするよう求めていた全高長の出席者は「1カ月が難しいなら、高校の学習への配慮として、この案はありがたい」と述べ、実施案を受け入れる考えを示したという。

一方、共通テストの実施主体となる大学入試センターからは、前例のない形での追試の実施について、「例年、追試の受験者は200~300人だが、出願時から選択できるとなると、何人が受験するか分からない。あらかじめ、調査などの対応が必要だ」「会場のキャパシティーや試験要員に制約があるので、高校にも協力してほしい」などの意見が出た。また、「追試の追試」については「緊急対応用の試験なので、限定的に使うことになるだろう」との指摘があった。

文科省では、実施案をベースに、この日の協議内容を踏まえ、大学入試の指針として「大学入学者選抜実施要項」を近く公表する。共通テストの詳細な実施内容については、大学入試センターが試験実施大綱として公表する。

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