新型コロナウイルスの影響で校外に足を運ぶ学びが難しい中、高校生がオンライン上でフィールドワークを行い、地域の課題を考える「地理」の特別講座が6月21日、早稲田大学教育学部地理学教室の主催で開かれ、各地から参加した6校17人の高校生が、観光客の減少に悩む神奈川県鎌倉市の小町通り商店街を例に、アフターコロナにおける観光の可能性を議論した。

同教室では、現地を実際に見たり、そこで暮らす人から話を聞いたりするフィールドワークの面白さを高校生に体験してもらう講座を年3回実施してきたが、新型コロナウイルスの感染拡大で現地に出向くことが難しくなったため、今回のオンラインフィールドワークを企画した。
参加者は事前課題として、新型コロナウイルスがまん延する前後の時期の小町通りの様子を動画で比較したり、小町通りの飲食店経営者のインタビューや関連記事などに目を通したりした上で、Zoomでつないだオンライン上でのディスカッションに臨んだ。
グループに分かれた参加者は、オンライン上で付箋に書いた情報を共有できるグーグルのアプリ「JamBoard」を活用し、気付いた課題やアイデアをブレインストーミングの手法を用いて洗い出すなどして、解決策を探っていった。議論には鎌倉市で地域づくりに関わる人たちも加わり、同市内の状況を伝えたり、生徒からの質問に答えたりした。
あるグループでは、観光客が来なくなり、売り上げが減少した商店街の活性化策を検討。観光客の増加を抑えつつ、売り上げを維持する方法として、オンライン上に小町通り商店街を再現し、各店舗でショッピングが楽しめるウェブサイトを構築する案を発表した。
また、別のグループは、観光客が少なくなっている現在を好機と捉え、アーティストによる路上アートのパフォーマンスを展開して話題づくりにつなげることを提案した。
参加者の鷗友学園女子高等学校1年、谷地田(やちた)桜子さんは「オンラインならば自宅から気軽に参加でき、いろいろな人とアイデアを出し合って解決策を話し合えるのが面白そうだった。議論では、鎌倉に店を構え、そこに行くからこそ得られる魅力とは何かを考えるべきだと指摘され、今までオンラインならば何でもできると思っていた自分の認識が崩された」と感想を話した。
もともと地理が好きで参加したという公文国際学園高等部3年、㓛刀(くぬぎ)将吾さんは「今では、仮想現実(VR)で温泉の映像を見て、現地から送られた湯に自宅の風呂で入るような体験もできる。現地に行かないと分からないことはあるが、オンラインでもかなりのことが学べると思う」と強調した。
同講座を企画した早稲田大学教育学部の池俊介教授は「動画で新型コロナウイルスの感染拡大の前と後を見比べるなど、オンラインならではのメリットもある。今回はオンラインでやらざるを得ないという理由から試みたが、実際のフィールドワークとオンラインを組み合わせて実践していく可能性を感じた」と手応えを語る。
また、その一方で、高校の新学習指導要領の『地理総合』でフィールドワークが必修となっていることを踏まえ、「実際のフィールドワークでは、人とのコミュニケーションや歩きながら地図を読むスキルなど、バーチャルでは難しい力も培われる。オンラインでできるならフィールドワークをしなくてよいということではない。感染が収束したら、現地を訪れるフィールドワークを各学校で行ってほしい」と話した。
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