【コロナ時代の教育】1人1台へ 公立高校の課題

GIGAスクール構想の前倒しを受けて、各地で1人1台環境の実現に向けた準備が急ピッチで進んでいる。小中学校だけでなく、公立高校でも1人1台の端末整備に着手する都道府県が出てきた。都立町田高校(高野宏統括校長、生徒953人)は、3年前に生徒1人1台端末を実現するなど、公立高校としては早くからICT環境整備を進め、臨時休校となった直後からオンライン授業の配信にも対応した。町田高校でICT教育を推進する情報科の小原格指導教諭に、同校の事例から見えた公立高校の1人1台環境の課題を聞いた。

1人1台端末を3年前に実現
「オンライン授業では教育の本質が問われる」と話す小原指導教諭

同高校は現在までに、東京都の「ICT活用推進校」「情報モラル推進校」「情報教育研究校」として指定を受けるなど、ICTを活用した研究や教育に積極的に取り組んできた。2018年度の新入生からは、生徒1人1台のiPad導入を開始している。購入費用は保護者が負担し、通信環境は学校が4G回線を法人契約。いつでもどこでもつながるICT環境を整えた。

他校に先駆けて1人1台端末を実現できた背景には、当時の校長の方針とリーダーシップの存在が大きいと小原教諭は振り返る。同校は、2017年度から教育用クラウドサービス「Classi(クラッシー)」を活用していたが、アクティブ・ラーニングや多様な機能を有効活用するためには、各人の手元にある程度の画面の大きさがある共通の端末を置き、必要に応じて利活用することが重要との考えの下、早くもその翌年度から都立高校では当時例のなかった1人1台環境の実現に踏み切った。

オンライン授業へのスムーズな移行には、こうしたインフラ環境の充実に加えて、ICT活用推進校として、以前から授業にICTを利用している教員が多かったことも大きかった。ICT環境とICTに慣れ親しんだ組織文化が、突然の臨時休校に対する迅速な対応につながったという。

休校中、町田高校ではクラッシーや、生徒の学習状況を把握できる「ClassiNOTE(クラッシー・ノート)」を通じて課題を配信し、自宅にいる生徒はリアルタイムでの解答や、授業動画のオンデマンド視聴、課題提出などができた。5月からはWEB会議システムも利用可能になり、オンライン上でのホームルームなどを試みる教員も増えたという。

厳密すぎるセキュリティーが足かせに

公立高校におけるオンライン授業の取り組みは、私立学校と比較すると遅れている。小原指導教諭はその理由を、「厳密なセキュリティー・ポリシーが、公立高校のオンライン授業導入の足かせの一つになっているのでは」と分析する。

オンライン授業では、動画サイトを通じた授業動画の配信なども有効な手段の一つになる。しかし、校内に整備されている生徒用端末からは、YouTubeすらも閲覧できない設定になっているケースもあったという。

「個人情報の漏えいなどはあってはならないことだ。しかし、機密性を重視するあまり、可用性の部分が厳しく制限されている場合もあり、特に非常時においては柔軟な対応ができずに、オンライン授業の導入を難しくしている面もある」と話す。

また、今後も感染防止対策で従来のような教室運営は難しくなるため、「オンラインとオフラインの両方の良さを取り入れた、ハイブリッドな方法も柔軟に模索すべきだ」と指摘する。特に、教科指導以外の精神面のケアなど、オンラインでの生活指導は、まだまだ課題があるという。

「オンライン授業への取り組みは、『授業とは何か』という本質が問われる機会になった。単に授業動画を見せて学習させるだけなら、『教員でなくても』と思われても不思議ではない。目の前の子供たちに合わせた、効果的で分かりやすい授業内容と形態を考え、子供たち一人一人の顔を見て声を掛けながら、その子にあった指導をするのが教員の重要な役割だ」と強調し、今回のコロナ禍は「『授業とは何か』『教育とは何か』を改めて考えさせてくれた」と語った。

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