デジタル教科書の授業時数 他教科への振り分け可能に

今後1年間の社会経済政策を方向付ける成長戦略実行計画を巡り、政府の未来投資会議(議長・安倍晋三首相)は7月3日、首相官邸で開いた会議で、新たな計画案について協議した。計画案では、教育関連として、GIGAスクール構想の年度内の前倒し実施に伴い、「ソフト面の改革が不可欠」と指摘。学習者用デジタル教科書について、個別最適化学習によってある教科学習が早く進んだ場合、残った授業時数を「総授業時数の2分の1未満」を限度に他の教科に振り分けることができるように、学校教育法施行規則上の基準を見直す考えを示した。

未来投資会議で発言する安倍晋三首相(中央)。手前は西村康稔経済再生担当相(首相官邸のホームページより)

成長戦略実行計画は、日本が取り組むべき政策課題を包括的に取りまとめたもので、「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)とともに、7月中旬に閣議決定される。これらの方向性に基づいて、9月下旬に来年度予算の概算要求が行われる見通し。

計画案には、▽新しい働き方の定着に向けた兼業・副業やフリーランスの環境整備▽振込手数料の見直しなど決済インフラの見直しやキャッシュレスの環境整備▽デジタル広告の透明性確保などデジタル市場のルール整備▽大企業とスタートアップ企業の契約適正化などオープン・イノベーションの促進▽安全運転サポートカーによる高齢運転者の交通事故対策など交通手段への技術革新の活用――など多岐にわたる項目が盛り込まれた。

安倍首相は会議の最後に「新しい働き方を定着させ、地方創生を推進し、デジタル化を進めるとともに、変化への対応力があり、強靱(きょうじん)性や持続可能性を持った、長期的な視点に立った社会像を追求していきたい」とあいさつした。

未来投資会議で発言する安倍晋三首相(首相官邸のホームページより)

計画案では、教育分野について、オンライン教育とオーダーメード型教育に焦点を当てた。GIGAスクール構想の今年度末までの前倒し実施に合わせ、全ての小中学生に1人1台端末とインターネット環境の整備を前提に、「教育内容、コンテンツ、ソフト面の見直しも進めるとともに、多様な人材を育てていく」と打ち出している。

具体的には、まず、東京都千代田区立麹町中学校で行われたAI教材の実証事業で、単元学習が標準授業時数を大幅に短縮して修了できた結果を受け、「先端技術の活用により個別最適化された学びが可能になる」と指摘。各教科について学年ごとに定めた標準授業時数について、「特定科目の授業時間を柔軟に増減できるよう検討を進める」と、見直し作業を行う考えを表明した。

学習者用デジタル教科書については、学校教育法施行規則による現行の基準で「各教科の授業時数の2分の1未満」とされている点について、「1人1台端末環境の整備も踏まえ、総授業時数の2分の1未満とするなどの見直しを図る」と明記した。

デジタル教科書では、児童生徒一人一人の進度に合わせて、学習内容を調整することもできるため、個別最適化学習によって、生徒によっては教科学習が早く進むことも可能になる。教科別に定められた現行の授業時数を総授業時数でカウントするように制度の見直しが行われれば、学習進度の早い生徒の場合には、残った授業時数を「総授業時数の2分の1未満」を限度に他の教科に振り分けることができるようになるとみられる。

未来投資会議の内容について説明する西村康稔経済再生担当相

計画案の考え方を解説した新原浩朗・内閣官房日本経済再生総合事務局局長代理補は、学年ごとに定めた標準授業時数の見直しについて、「例えば、中学2年生の数学の授業で、学年を超えて学ぶことができれば、少なくともどんどん進んでいる生徒には、中学3年の数学の教材を与えることができる」と、メリットを指摘。その上で、学習者用デジタル教科書を対象に授業時数のカウント方法を教科別から総授業時数に見直す狙いについて、「中学2年生の後半に、3年生の教科学習まで全部終わってしまうことがありえる。そのときに、(総授業時数でカウントすれば)数学の割り当て時間をほかに回すことができるようになる」と説明した。

また、計画案では、▽学校が無料でさまざまなソフトウエアを試験導入できるよう支援する▽STEAM学習を進める上で、具体的な課題を提示し、教科横断的な学習をするためのコンテンツを開発する――ことを挙げた。

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