中学校スマホ持ち込み 「責任の明確化とルールづくりが鍵」

子供のスマートフォン普及率が上昇を続ける中で、学校におけるスマホの取り扱いが大きく見直されようとしている。文科省の有識者会議は、これまで原則として禁止となっていた中学校へのスマホの持ち込みについて、条件付きで容認する方針案を示した。6月25日に教育新聞が実施した「Edubate」の読者投票でも、7月6日午後6時現在で賛成が34%(82票)、反対(容認すべきではない)が40%(97票)、反対(小学校も容認すべき)が21%(52票)と評価が分かれている。生徒がスマホを持ち込むことに対して、学校にはどのような対応が求められるのかを取材した。

保護者の責任を明確にすべき

トラブルが起きた際の責任の所在を明確にする必要性を指摘する塩田准教授(Zoomで取材)

6月24日の有識者会議で示された素案では、登下校中の災害や犯罪などの緊急時の連絡手段として、保護者を中心に子供にスマホを持たせたいというニーズがあるとして、部活動などで帰宅時間が遅くなることもある中学校で、一定の条件の下でスマホの持ち込みを認めることは妥当だと明記。その条件として①学校での管理方法や紛失などのトラブルが発生した場合の責任の所在を明確にする②フィルタリングが保護者の責任の下で適切に設定されている③危険性や正しい使い方に関する指導が学校や家庭で適切に行われている――ことを求めた。

この方針案について、企業と共同で情報モラル教育の教材開発などに取り組む塩田真吾・静岡大学准教授は「生徒や保護者にとってはメリットだが、学校としては手間が増える。現場は不安もあるだろうが、ルールを決めて適切に使っていくしかない」と受け止める。学校の負担を必要以上に増やさないために、塩田准教授がポイントに挙げるのは、学校と家庭の間でしっかりとクライシスマネジメント(危機管理)を行っておくことだ。

中学校に生徒がスマホを持ち込むことで起こりやすいトラブルとして、盗難や紛失、破損などが考えられる。こうしたトラブルが校内で起きたとき、教師や学校側の責任ではなく、基本的には生徒や保護者側の自己責任として対処してもらうことを事前に徹底しておく。例えば、学校としてスマホの持ち込みに関する明確な方針を決めておき、入学前の保護者説明会などで、保護者の同意を得ておくことなどが考えられる。

塩田准教授は「通学時の事故に備えて自転車に保険を掛けたり、学校に財布を持ってきたりするときと考え方は同じだ。学校は情報モラルの指導はするが、トラブルなどのリスクについては保護者が責任を負うという役割分担が必要だ。保護者の責任を明確にしておくことは、学校の負担を減らすことにもなる」とアドバイスする。

実際に、保護者がリスクに備えるために、子供のスマホを対象にした保険も登場している。子供のスマホ所持率の増加を受けて、少額短期保険会社「Mysurance」は、子供が使っているスマホの盗難や破損への対応に加え、SNSによるいじめや課金トラブルなどにあった際に、弁護士に相談できる特約の付いた「こどもスマホ保険」の販売を今年2月から開始。この新型コロナウイルスによる休校で子供のスマホ利用やオンライン授業での活用が増えたこともあり、保護者からの問い合わせが増えているという。「こどもスマホ保険」では、塩田准教授が監修した親子が話し合いながらスマホのルールづくりができる教材も作成するなど、情報モラル教育にも力を入れる。

一方で塩田准教授は、学校へのスマホの持ち込みが認められるようになれば、生徒は通学中についついスマホを使ってしまい、「歩きスマホ」や長時間の利用に拍車がかかることを懸念。「大人から怒られてやめるのではなく、自分自身で管理できる力を身に付けさせる必要がある。学校は管理の発想ではなく、生徒の自律を促すことを目指した指導が求められる」と指摘した。

生徒による主体的なルールづくり

保護者や学校が一方的にルールを決めるのではなく、当事者である中学生や高校生がスマホ利用について話し合い、よりよい使い方を考える取り組みも全国に広まっている。

埼玉県では2014年度から、県内の中学校や高校を活動推進校に指定し、「生徒自身による『私たちのネット利用ルール』づくり」に取り組んできた。毎年、推進校を代表して「埼玉県ネット利用ルールづくりアンバサダー」に任命された生徒が一堂に集まり、専門家からの指導を受けながらネット上のトラブルや依存などの問題を話し合うグループワークを行い、そこで培ったルールづくりの手法を基に、今度はアンバサダーが各校でのスマホやネットのルールづくりを実践する。

例えば、アンバサダーは全校生徒や保護者、教員に対し、スマホの利用状況やトラブルに巻き込まれた経験などを調査。その結果からどんなルールが必要かを検討し、各学級でルール案を作成する。次に、各学級のルール案を持ち寄って学校としてのルール案を作成し、生徒総会などで承認が得られたら、ルールを学校のホームページに掲載したり、学校運営協議会で説明したりして、学校だけでなく家庭や地域にも広めていく。

埼玉県教委の生徒指導・いじめ対策・非行防止担当の戸田眞栄指導主事は「ネット利用の低年齢化やスマホ所持率の上昇が、トラブルや危険の原因の一つになっている。教師や保護者が見守るだけでは不十分で、自らルールをつくる活動は生徒がネットのトラブルに巻き込まれない力を身に付けるための有効な手段だ」と話す。今年度は県内全域で展開するため、県教委では活動推進校の知見を生かしたモデルプランを作成。県立学校や市町村教委に実施を呼び掛けている。

内閣府で提言を発表する高校生ICTカンファレンスの代表の生徒(昨年12月5日撮影)

こうした取り組みの嚆矢(こうし)となったのが、11年度に始まった安心ネットづくり促進協議会などによる「高校生ICTカンファレンス」だ。19年度には全国19地域で開催され、各地のさまざまな高校から生徒が参加し、スマホやSNSの課題を数日にわたって話し合った。最終的には、各地域の代表者が集まるサミットで提言をまとめ、内閣府などの関係府省庁に報告を行っている。

カンファレンスの実行委員長を務める米田謙三・関西学院千里国際中等部・高等部教諭は「カンファレンスでは、人から話を聞いたり調べたりしながら考えをまとめ、誰かに伝えるというサイクルを回すことを重視している。成年年齢の引き下げによって、18歳になれば自分でスマホの契約ができるようになる。消費者としてスマホやSNSのさまざまな問題を知り、正しい使い方を考えられる力を育てたい」と意気込む。

ネット上で新しいサービスが次々と生まれる中、学校の情報モラル教育もバージョンアップが求められている。米田教諭は「学校はいきなりルールをつくろうとしがちだが、ルール化して罰則を設けるのは最後の手段だ。ルールとマナーとモラルの違いを生徒に考えさせることが大切だ。スマホの効果的な使い方など、もっと光の部分にスポットが当たってもよい。生徒は新しいサービスを当たり前のように使いこなしているし、社会も大きく変わってきている。教師も今の動きを知るために、学校外の関係者と情報共有する場が必要だ」と強調した。

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