「共通テストだけで合否判定」増加も 21年の私大入試

2021年の大学入学共通テストでは複数の試験日程が設定されたことで、私立大学への成績提供は2月8日(予定より6日遅れ)となった。これまで多くの私立大学では、大学入試センター試験を合否判定に利用してきた。成績提供からの期間が短くなることで、私立大学の入試にはどのような影響が想定されるのか。日本私立大学協会の小林弘祐副会長(北里研究所理事長)は「個別試験と併用するには負担が大きく、共通テストの結果だけで合否を判定する大学が増えるのでは」と見る。

「6日遅れ」程度なら混乱のリスクは少ない
――大学入試センター試験を合否判定に利用してきた私立大学は多数あります。今回、共通テストの成績提供が遅れることで、影響はないのでしょうか。
Zoomでの取材に応じた日本私立大学協会の小林弘祐副会長(北里研究所理事長)

確かに、これまで私大協の加盟大学は9割以上が一般選抜でセンター試験を利用しており、そのうちセンター試験のみで合否判定する大学は65%ほどでした。共通テストの成績提供が予定より6日ほど遅れるだけであれば、大きな問題が生じるリスクは少ないと思います。

問題は、個別試験とセンター試験を併用してきた約3分の1の私立大学です。センター試験を1次試験や資格試験の位置付けにして、2回目を合否判定の試験に使うという方法ですが、21年は共通テストの成績提供の後、すぐに国公立の入試が迫っており、日程的にかなり厳しくなる。

そのため次善の策として、共通テストだけで合否判定する私立大学が以前よりも増えるのではないかと考えられます。共通テストの成績提供からすぐに合否判定に入ればそれほど遅れは生じないと予想されますが、それを受けて個別試験をするとなると、かなり影響を受けます。

――出題内容についても、高校3年生で履修することが多い科目について選択問題を設定する、発展的な学習内容からは出題しないといった配慮が求められています。

私の大学の例でいえば、今ちょうど、試験問題を作り始めているところです。最終的に出来上がるのは秋ごろで、それから内容をブラッシュアップしていき、合わせて外部機関に間違いがないかをチェックしてもらいます。

そもそも、アドミッション・ポリシー(入学者受け入れ方針)を堅持しながら、これまで社会や理科で2科目を課していたものを1科目に減らすといった対応は、想像するほど容易ではありません。ただ現役の高校3年生に比べて、学習の遅れがない既卒者が有利になってしまうことも考え、高校3年生でも既卒者でも不利益にならないようにする配慮は必要だと思います。

あるいは高校3年生と既卒者との間で平均点に大きな差がある場合は、得点調整を行うという方法が必要になるかもしれません。理科の選択問題で物理と化学や生物の平均点がある基準以上違うようであれば、問題の質の違いを踏まえ、同じくらいの点数と分布になるように調整するという、従来から行われている考え方です。

こうした配慮については、文科省の大学入学者選抜実施要項に記載されている事が義務なのか、努力目標なのかが少し分かりづらい印象です。これまでも実施要項にほぼ沿った形で入試を実施していますが、必ずしも全ての大学が、全ての項目において厳密に従うことができているわけではありません。とりわけ今回は、各大学の事情に応じて、文科省にも配慮をお願いしたいと思っています。

――追試験の設定、別日程への受験の振り替えなどの対応は。

大学入学共通テストと個別試験を併用する場合は、なかなか難しいのではないでしょうか。早くから試験会場を決めないといけないし、教員も振り分けないといけない。混乱が生じる可能性はあると思います。さらに、その時の新型コロナウイルスの状況もあるでしょう。

ただ、私立大学は入試の形態は非常に多様です。総合型選抜(旧AO入試)、学校推薦型選抜(旧推薦入試)など、さまざまな入試の方法をとっており、入試にセンター試験を活用した入学者の割合は1割以下という大学が6割超を占めます。共通テストの日程により、入試全体が大きく左右されることは考えにくいです。

私立大学の定員厳格化、今回は柔軟に
――私立大学にとって、特に負担が大きいのは。

入試の最終段階で、入学定員管理の問題が出てきます。毎年3月30日、31日には夜までかかって繰り上げ合格の調整をしますが、今年は合格発表が今まで以上に、年度末に近いところで押し寄せてくるので、この調整がいっそう厳しくなってくる。

それぞれの大学の合格発表が後ろにずれてしまうと、どちらに入学しようか悩んでいる受験生の判断が遅れてしまいます。その判断を踏まえて、入学手続きを進めてもらうのか、辞退した場合に別の受験生に繰り上げ合格の連絡をするのか、といった対応を、短期間で大量に行わなければならないことが想定されます。

近年、文科省が私立大学の入学定員管理の厳格化を進めており、基準を超えると学部の新設や再編が認められません。今回はもう少し弾力的に見ていただけないかと思っています。

――受験生にとっても、21年の入試は非常に負担が大きいことが想定されます。

年度末ギリギリになって定員が空く大学も出てくるかもしれません。最後までどの大学に入れるか状況が読みづらく、受験生の緊張は大きいと思います。

さらに、新型コロナウイルスの感染が再燃してしまった場合は来年4月の入学が難しくなり、5月入学などを考えなければいけなくなる可能性も否定できません。

今年の休校期間中には、オンライン授業にすぐ切り替えられた高校もあれば、とてもそのような環境にはなかった高校生もいます。高校によって授業の内容に、かなり大きい格差が出てきているのではないでしょうか。完全に公平な入試というものはありませんが、公正な考え方を元に、十分配慮しておかなければいけないと思います。

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