学校健診を2022年めどにマイナンバーで管理 政府方針

ポストコロナの世界に向けて社会全体が急速にデジタル化していくと見られる中、政府は7月8日、経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)を首相官邸で開き、当面の経済社会政策の運営方針を示す「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)の原案を提示した。教育分野では、生涯にわたる健康データを一元管理するため、学校の健康診断で把握した児童生徒の健診データを電子化して、マイナンバーで管理する方向性が盛り込まれた。2022年をめどに実現を目指す。また、高校・大学の遠隔教育に関連する単位上限ルールの見直しや、義務教育段階の遠隔教育とデジタル教材の活用促進、デジタル教科書が使用できる授業時数基準の緩和を検討することを明記した。

骨太の方針の原案などについて議論する安倍首相(首相官邸ホームページより)

原案では、新型コロナウイルス感染症が収束したポストコロナの世界が「ニューノーマル」と呼ばれる新しい世界に移行するとの見方が強いことを踏まえ、社会全体のデジタル化を前提としたSociety5.0の実現に向け、「この数年で思い切った変革が実行できるかどうかが、日本の未来を左右する」との認識を明確化した。

ポストコロナ時代に、日本は「『新たな日常』を通じた『質』の高い経済社会の実現を目指す」と基本的な方向性を示し、「成長の果実を広く分配する中で、誰ひとり取り残されない、国民の一人一人が『包摂的』で生活の豊かさを実感できる『質』の高い持続的な成長を実現していく」ことを目標に掲げた。

その上で、世界規模での感染症拡大は「パラダイムシフトとも言うべき大きな変化を世界に引き起こしている」との現状認識を示し、「通常であれば10年掛かる変革を、将来を先取りする形で一気に進め、『新たな日常』を実現する」と指摘。具体的には「『新たな日常』の構築の原動力となる社会全体のデジタル化を強力に推進し、Society5.0を実現する」と打ち出した。

こうした社会全体のデジタル化を図る中で、学校教育に関わる内容では、学校の健康診断で把握した児童生徒の健診データを電子化し、マイナンバーで管理する新たな取り組みについて、2021年に法整備を行い、22年をめどに実現させることが盛り込まれた。パーソナル・ヘルス・レコード(PHR)の一部として、学校が持つ児童生徒の健診データを取り込んでいくことを目指す。

PHRは、国民一人一人が自分の医療・健康情報を一覧でき、本人の意思で医療機関に提供して活用することなどを想定した仕組み。教育関係者には、学童期の課題解決に役立つとの見方もある。厚労省が所管する妊婦健診や乳幼児健診ではマイナンバーを使ったデータ管理が実用化されつつあるが、それに続く小学校入学後の健診データはデジタル化されないまま、各自治体が独自に保管しているケースが多く、乳幼児健診と学校健診の接続が課題となっている。

原案では「マイナンバーを活用して、生まれてから職場など生涯にわたる健康データを、一覧性をもって提供できるよう取り組む」と狙いを説明。また、個人を特定できない形で集積された健康データを医療研究などに活用する方策も検討するとしている。

教育のオンライン化や遠隔教育も盛り込まれた。具体的には、高校・大学の遠隔教育について、「単位上限ルールなどの見直しを検討する」と明記した。文科省によると、高校では2015年4月から、同時双方向型の遠隔授業について、全課程の修了要件である74単位のうち36単位までを上限として実施することが可能となっている。原案は、この単位上限ルールの見直しを検討するとした。

義務教育段階の小学校や中学校については、「遠隔教育・デジタル教材活用を促進する」と同時に、「デジタル教科書が使用できる授業時数の基準の緩和を検討する」とした。

学習者用デジタル教科書については、政府の未来投資会議(議長・安倍首相)が7月3日に示した成長戦略実行計画案で、「各教科の授業時数の2分の1未満」とされている現行基準について、「1人1台端末環境の整備も踏まえ、総授業時数の2分の1未満とするなどの見直しを図る」としている。個別最適化学習によってある教科学習が早く進んだ場合、残った授業時数を「総授業時数の2分の1未満」を限度に他の教科に振り分けることができるように、学校教育法施行規則上の基準を見直す内容。原案もこうした授業時数基準の緩和を求めているとみられる。

また、初等中等教育の改革として▽少人数指導による、きめ細やかな指導体制の計画的整備やICT活用など、学習環境の整備▽デジタル教科書・教材の活用、外部人材の拡充・ネットワーク化などを通じたGIGAスクール構想の加速▽教師のICT活用指導力の伸長▽学習成果重視への評価の転換▽教育データの標準化・利活用を進める▽学年・学校種を超えた学びの拡充▽異能・異才への指導・支援▽STEAM教育や課題解決型学習(PBL)の充実▽授業時数の柔軟な取り扱いや、小学校における教科担任制の導入など、教育課程・教員免許・教職員配置の在り方の一体的な検討――などを挙げた。

また、GIGAスクール構想の効果検証や分析を不断に進め、新たな評価手法の確立、成果や課題の見える化、EBPMやPDCAの取り組みなどを通じて、「改革の徹底と質の向上を推進する」としている。

骨太の方針は与党との協議を経て、成長戦略実行計画とともに近く閣議決定される。

次のニュースを読む >

関連