高校生の就活本格化 コロナ危機受け、新たな試み広がる

新型コロナウイルスの影響が懸念される来春卒業予定の高校生の就職活動が、7月に入り本格化した。夏休みの短縮や感染防止対策で従来の企業訪問が難しい中、高校生にさまざまな企業の情報を知ってもらおうと、自治体や就職支援サービスを展開する企業が知恵を絞っている。新型コロナウイルスによる就職難に不安を抱く高校側と、優秀な若手人材を採用したい企業側の新しい形のマッチングが広がっている。

遠方の高校と企業をつなぐオンライン説明会

企業と高校をWEB会議システムでつないだオンライン説明会(和歌山県商工観光労働部労働政策課提供)

新型コロナウイルスの影響で毎年6月に県内就職者向けに開催していた「応募前サマー企業ガイダンス」が中止となった和歌山県では今年、県の就職情報WEBサイト「Uiわかやま就職ガイド」で、就職を希望する高校生向けに県内企業を紹介する動画配信を始めた。県内84社が、既存のプロモーションムービーや高校生向けに新たに作成した動画などで、企業概要や仕事のやりがい、先輩社員からのメッセージなどを10分程度で紹介。現在、動画には県庁や県警も加わり、今後も企業などから掲載希望があれば追加していく予定だ。

動画を見るには、WEBサイトの専用ページで高校ごとに配布されたIDとパスワードを入力する必要がある。もともと高校生の県内企業への就職支援に力を入れていた同県は、2018年度から県内企業の採用実績やアピールポイントなどをまとめた冊子「高校生のためのわかやま就職ガイド」を毎年発行しており、就職を希望する高校生はそれらも参考にしながら、興味のある企業の動画を閲覧。さらに詳しく聞きたいことや質問があれば、各高校に配布しているアンケート用紙に記入し、高校が県に提出することで、企業側とつなぐこともできるようにした。

さらに同県は7月以降、アンケートで生徒からの質問が多い場合などに、WEB会議システムを使って企業と高校を中継したオンライン説明会も展開していく方針で、現在、県内の高校に対して要望などを調査している。

7月3日に第1回を開催したところ、参加した生徒からは「オンラインでも思っていたより支障がない。落ち着いて企業の話を聞くことができた」と好評を得ているという。また、企業にとっても、時間やコストの関係で直接出向くことが難しかった遠方の高校にもアピールできるといったメリットがある。

この取り組みを推進している和歌山県商工観光労働部労働政策課の担当者は「新型コロナウイルスでガイダンスが中止となり、高校側も求人が減るのではないかと不安を感じている中で、これだけ高校生の就職に積極的な企業があると分かれば、安心につながる。高校生の場合、企業や仕事の内容をよく理解していないと早期の離職につながってしまいかねない。県としてもさまざまな情報を提供し、生徒もよく調べて決めてほしい」と話す。

高校生が企業と直接話せる場

7月7日、平日の午後にもかかわらず、さいたま市にある大宮ソニックシティには、三々五々、制服姿やスーツ姿の高校生が集まってきた。高校新卒専門の求人サイトを運営するジンジブが昨年から始めた合同企業説明会「ジョブドラフトFes」の埼玉会場では、高卒採用を予定している県内外の企業・団体45社がブースを出展。県内にある約30校から300人を超える高校生が訪れ、企業から主な業務内容や福利厚生に至るまで、さまざまな説明を受けていた。

一般的な高校生の就職活動は求人票から希望する企業を選ぶため、大学生の就職活動のように、複数の企業を自分で調べたり、直接話を聞いて比較したりする機会はほとんどない。その点、高校生限定のこの合同企業説明会は、高校生が企業と直接交流でき、企業の雰囲気など、文字情報だけでは読み取れないことも感じ取れるのが売りだ。2年目となる今年は新型コロナウイルスの感染拡大を受け、来場者のマスク着用や検温、消毒の徹底に加え、企業の担当者やスタッフはフェースシールドを装着して高校生と接するなど、感染防止に万全を期して各地の開催にこぎ着けた。

今回初めて出展した、埼玉県内で老人ホームなどの介護施設を展開する社会福祉法人の採用担当者は「福祉の現場は40~50代が多く、若い世代を採用していかないとスタッフの年齢構成のバランスが崩れてしまう。これまで高校生の採用は学校訪問しかアプローチの方法がなく苦戦していたが、このような場があれば、高校生の生の声も聞けるし、こちらの思いも直接伝えられる」と手応えを感じていた。

また、実際に昨年、この説明会に参加した高校生を採用した都内の建設会社では、建設業に対するイメージを払拭(ふっしょく)してもらおうと、ポスターやパンフレットを新たに用意。採用担当者は「新型コロナウイルスが落ち着けば、また建設業の需要は増える。そのときに人手不足では会社として立ち行かない。若い人にどんどん入ってもらって、会社も変えていってほしい」と期待する。

合同説明会に参加し、企業の説明に熱心に耳を傾ける高校生

生徒を引率していた通信制高校の教員は「就職希望の生徒にとって、働く魅力が分かり、直接企業の説明を聞けるのはありがたい。特に通信制高校の場合は情報が不足しがちになるので、教員も情報収集し、3者面談などで提供していくことが重要になる」と話す。また、別の公立高校の教員は「企業の話を聞く経験が生徒にとっては大きい。企業のイメージもつかむことができる。新型コロナウイルスの影響でオンラインによる説明会なども検討されているようだが、まだICT化に課題がある公立校では、このように直接、話を聞ける場が必要だ」と強調した。

一方、参加した高校生は「先生からは昨年に比べ求人数が少ないと言われている。医療系の事務職に興味があるが、どう見ていけばいいか分からない」「本当はIT系に興味があるが、出展がなく残念だった。休日や給料がどうなっているか、直接説明を聞けて良かった。内定取り消しの話も耳にし、就職できるか不安だが、働きがいのあるいい会社に就職したい。妥協はしたくない」など、新型コロナウイルスの影響が続く中での就職活動に対する不安を口にした。

新年度を迎えても各地で学校が再開できず、高校3年生の就職準備期間が短くなることから、厚労省は6月に、来週卒業予定の高校生の就職活動日程を1カ月延長。選考や採用内定の開始は9月16日から10月16日に1カ月後ろ倒しとなった一方で、企業による求人申し込みや学校訪問の開始は例年通り7月1日からを堅持した。

こうした特殊な状況下にある今年の高校生の就職活動について、ジンジブの担当者は「休校が長期化したためか、例年と比べ、まだ就職に対して具体的なイメージを持てていない生徒が多い印象だ。新型コロナウイルスで就職活動にもさまざまな制約はあると思うが、就職活動が1カ月延びたことで、求人票を読み込んだり、企業の情報収集に充てたりする時間があると考えることもできる。こうしたイベントなどを通じて、企業に興味を持つきっかけになれば」と話す。

ジョブドラフトFesは7月中に東京、大阪、福岡など、全国13会場で開催され、高校3年生であれば個人でも参加申し込みができる。会場ではブースごとの企業説明会のほか、同社のスタッフが個別の就職相談に乗るコーナーも設けられる。

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