学習履歴が活用される社会 九大副学長が将来像を語る

オンライン授業の普及で学習履歴(スタディ・ログ)の活用が注目される中、超教育協会は7月8日、オンラインセミナーを開き、九州大学の安浦寛人副学長が同学における学生の学習履歴の収集や分析の成果について講演した。安浦副学長は、社会で学習履歴の有効な活用が進むためには、プライバシーを守りながら、標準化されたオープンデータとして扱えるようにする必要があると指摘した。

学習履歴の活用による教育改革の可能性を語る安浦副学長(Zoomで取材)

同学では2013年度から、学生がパソコンを各自で購入するBYOD方式による授業のICT化を実施し、授業中に学生がテキストのどこを見ているかや、内容の理解度をリアルタイムに教員が把握できるシステムを導入。教育の改善などに役立てている。新型コロナウイルスの影響が出る前後で対面授業とオンライン授業における学生の授業への理解度を比較したところ、統計的な有意差は見られなかったという。

安浦副学長は、新型コロナウイルスによって大学がオンライン授業に移行せざるを得なくなった状況について、「考え方によっては学習履歴を集めることができるチャンスをもらったと言える。今後の授業はオンライン、オンデマンド、対面の組み合わせが標準になる。世界的にも、遠隔授業をベースにした教育のデジタル化にかじを切っている。今年はその転換点になる」と説明。

現段階では学習履歴の活用は、個々の授業における学習効果の検証などにとどまっているが、将来的には教育機関や行政、企業など、社会全体でさまざまな活用がされるようになるとの将来像を示した。

その上で、学習履歴の収集や活用を行う際には、個人情報などの管理やデータの利活用に本人の同意を必要とするなどの、プライバシーを守る仕組みが最大の問題になると指摘。活用のしやすさを踏まえ、データを標準化して、どの機関も利用できるようにするオープンデータ化の必要性も課題に挙げた。

さらに、「学習履歴の解析によって『こういう特性のある人はこういう行動を取りやすい』といったことが分かったとして、それが差別につながってしまうのが怖い。図書館は思想の自由を守るために、個人データをデジタル化して残さないという基本方針を掲げている。そういった(教育における学習履歴の活用に関する)憲章をつくっておく必要もある」と指摘した。

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