GIGAスクール工程表 デジタル教科書2024年本格導入

自民党は7月9日、教育再生実行本部(本部長・馳浩元文科相)を開き、GIGAスクール構想の実施状況について協議した。席上、文科省は1人1台端末の整備に続くGIGAスクール構想の実現に向けた工程表を提示した。それによると、2023年度に実施する全国学力・学習状況調査の中学校英語で「話すこと」調査について、オンライン環境によるCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)での実施を検討し、24年4月には小学校の改訂教科書の使用開始を契機にデジタル教科書の本格導入を図る。先進国でデジタル対応が最も遅れている日本の学校は、遅まきながらハードとソフトの両面から世界水準に向けてキャッチアップを目指す。

自民党教育再生実行本部であいさつする馳浩本部長(元文科相)

会合の冒頭、馳本部長はGIGAスクール構想について、「予算が付き、自治体によって差はあるが、よちよち歩きでスタートした」と言及。今後の課題として▽標準授業時間数▽同時双方向を原則としたオンライン授業の在り方▽成績評価とその活用▽GIGAスクール構想による不登校児童生徒への支援▽学年や教科を超えたオンライン授業と学習指導要領の見直し▽デジタル教科書の使い方▽紙の教科書との関係▽デジタル教科書の著作権問題▽リカレント教育への影響▽夜間中学への対応――の10項目を挙げた。

その上で「可能性が広がってくるのと同時に、どのように今後進めていくのかが問われている。いままでの法令や文科省の通知を、どう見直していくのか。知恵を出し合って、GIGAスクール構想をよりよく進めていきたい」とあいさつした。

続いて、文科省の担当者がGIGAスクール構想の現状を説明。全国の小中学生を対象に1人1台端末の整備のために、昨年度補正予算と今年度1次補正予算で計上した整備費の97%に当たる2753億円について、自治体への補助を内定したことを明らかにした。補助対象が決まっていない3%分の整備費については、「GIGAスクール構想よりも先に整備が進んでいた自治体と、全くやる気をみせない自治体があるため」と説明した。

校内の通信ネットワーク整備費については、3月19日に全国1700超の自治体のうち、補助を希望した959自治体に交付し、残りについても希望のあった自治体全てを順次内定する方針。

一方、技術専門家の派遣などを想定したGIGAスクールサポーターなどの関連項目は、自治体からの申請が進まず、予算のおよそ半分が執行されないまま残っている。具体的な執行額と執行された比率は▽家庭学習のためにモバイルルーターの整備を想定した通信機器支援 58億円(41%)▽遠隔学習機能の強化 2.5億円(42%)▽GIGAスクールサポーターの配置 31億円(32%)▽障害のある児童生徒のための入出力支援装置 6.2億円(59%)――となっている。

その上で、文科省は、GIGAスクール構想による学校ICT環境整備の実現に向けたイメージとして、今後5年間の工程表を示した=表参照。それによると、今年度は夏ごろ、教育データ標準の第1版として学習指導要領の内容全てについてコードを公表。年度末までにデジタル教科書について方向性を提示する。

2023年度には4月ごろに実施する全国学力・学習状況調査の中学校英語で、「話すこと」調査について、初めてオンライン環境によるCBTでの実施を検討する。「話すこと」調査は19年度の全国学力調査で初めてCBTで実施されたが、このときはオンライン環境が未整備のため端末に接続されたUSBメモリーに生徒が答えた音声を録音する形だった。

矢野和彦・文科省官房審議官(初等中等教育局担当)は「デジタル環境が学校現場に浸透していくためには、(悉皆調査である)全国学力・学習状況調査のCBT化がキラーコンテンツになると考えている」と説明した。

さらに、小学校の次の教科書改訂に合わせて、24年度からデジタル教科書の本格導入を図る方針を示した。

デジタル教科書については、小学校教科書が昨年度発行分の94%、中学校教科書が今年度発行分の95%が、すでにデジタル教科書として発行されている。しかし、ハード面での端末や通信ネットワークが未整備だったことから、昨年10月時点の調査で、今年度に「1校でも導入することを検討している」と答えた市町村は257で全国の14.7%だけで、ほとんど普及していないのが実態となっている。

文科省では、今年夏ごろに公表する学習指導要領のコード化と今年度末にまとまる方向性を踏まえ、21年度に教科書会社が新しいデジタル教科書を編集する過程で学習指導要領のコードに対応し、22年度に検定作業を行う考え。23年度に各自治体が使用するデジタル教科書を採択し、実際に学校現場で児童生徒がデジタル教科書で学習し始めるのは24年4月になると想定している。

デジタル教科書が学習指導要領のコードに対応すれば、学校現場では、学習指導要領を中核に、デジタル教科書と民間の教材や問題集、外部のデジタルアーカイブなどを関連付けすることで、児童生徒の学習内容を組み立てていくことができる。

出席した議員からは「デジタル教科書は、今の教科書をそのまま取り込んでも、デジタルの良さは発揮できない。点字への対応や、動画の活用、参考資料にリンクできることが大切だ。いまの紙の教科書をデジタル化する発想ではなく、デジタルに合った教科書を作らなければならない。障害者教育にも有効なはずだ。新しいパラダイムで考えてほしい」といった指摘が出た。

これに対し、中野理美・文科省初等中等教育局教科書課長は「デジタル教科書の整備は、二段構えで考えていきたい。24年度に使用開始する教科書の改訂に間に合わせるためには、教科書会社は来年度に教科書を作成しなければならない。このため、次の改訂では、まず学習指導要領のコードに対応することを優先させたい」と答えた。

デジタル教科書を巡っては、政府の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)が7月8日に示した「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)の原案で、「(小中学校の)デジタル教科書が使用できる授業時数の基準の緩和を検討する」と打ち出すなど、積極的な活用に期待が高まっている。民間教育産業のデジタル対応も加速するばかりだ。一方で、これまでの手順を踏襲した教科書の改訂プロセスには時間がかかる。

こうした議論を受け、馳本部長は「文科省はいまのところ、自治体と連携して端末や人員を手配するのが精一杯。だが、これは第一段階だ。並行して、中教審でも議論しているように、学力の3要素をアナログの対面授業とデジタルにどう融合させるのか、前のめりになって進めていかなければならない」と言及。デジタル教材を活用しながら、子供たちと向き合っている教育現場の関係者からヒアリングを進める考えを示し、会合を締めくくった。

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