少人数学級の実現に注目高まる 大学教授ら署名活動開始

新型コロナウイルスの感染拡大に取り組みながら学校を運営するためには、少人数学級を実現するべきだとして、教育を研究する大学教授らが7月16日、文科省内で記者会見を開き、学級編成の標準を現在の40人から、来年度にも30人に、その先には20人程度にする必要があると訴え、インターネット上で署名活動をスタートさせたことを明らかにした。少人数学級の実現は、地方自治体の首長らが必要な教員の確保と合わせて政府に要望しているほか、全日本教職員組合(全教)が同日公表した学校実態調査でも学校現場の声として多く挙げられている。Withコロナ時代の学校運営を考える上で、長年の懸案だった少人数学級の実現に注目が高まってきた。

少人数学級の実現を訴えて記者会見する大学教授ら。右から中嶋哲彦・名古屋大名誉教授、山本由美・和光大教授、乾彰夫・東京都立大名誉教授、本田由紀・東大教授

署名活動の狙いについて、記者会見した乾彰夫・東京都立大名誉教授は「(新型コロナ感染症のリスクがある状況で)学校生活を継続していくためには、教室の空間的ゆとりを確保しつつ、児童生徒一人一人に寄り添った指導やケアが提供できるよう、教育条件を整備しなければならない」と説明。現在40人となっている学級編成の標準について「直ちに30人に、そして早急に20人程度する必要がある」と訴えた。

続いて、今年3月まで名古屋大教育学部附属中学校・高校の校長を務めた中嶋哲彦・名古屋大名誉教授は「3月に休校措置をとったが、学校が個別で対応できる感染対策は、アルコール消毒が精いっぱいだった。学校設置者に感染予防を求めるだけでなく、文科省は現実に感染予防が可能になる措置として、少人数学級を実現してほしい。教員の人数が足りないという指摘もあるが、政策として政府が決意することが大切。来年度から踏み出すことはできるはずだ」と指摘。経済協力開発機構(OECD)のデータから、日本の小中学校の学級規模が先進各国と比較しても大きいことを示しながら、「日本も国際的な水準に追い付くべきだ」と述べた。

少人数学級の実現については、児童生徒間の距離の確保が学校現場で大きな課題となっているとして、全国知事会、全国市長会、全国町村会の3団体が7月3日に、萩生田光一文科相に面会し、実現と必要な教員の確保を要望した。政府が7月8日の経済財政諮問会議(議長・安倍晋三首相)に提示した「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)の原案でも、初等中等教育の改革として「少人数指導による、きめ細やかな指導体制の計画的整備やICT活用など」の学習環境の整備について「丁寧に検討する」と盛り込まれている。

また、全教が全国の小中高など785校を対象にアンケートを行った学校実態調査でも、「もともと狭い教室に40人の子供を押し込んで『3密を避けよ』は絶対無理です」などと、少人数学級の実現とそのための教員増を求める声が多かった。全教は「40人では感染防止ができず、20人・30人学級を求める声が非常に多い。緊急の対策が求められている」と指摘している。

公立小中学校の学級規模は「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(義務標準法)に定められている。現在の40人学級は1980年度に、それまでの45人学級から引き下げられたもの。文科省によると、学年進行で45人学級から40人学級に移行したため、全ての学年が移行するまでに12年間かけた。

また、2011年度に民主党政権下で小学1年生が35人学級に引き下げられ、翌2012年度には小学2年生についても35人学級に必要な教員加配の予算が措置されたが、政権交代を経て義務標準法の改正は行われなかった。このため、法律上は義務教育課程のうち小学1年生だけが35人学級で、実態としては小学1年生と2年生が全国で35人学級として運営されている。

少人数学級の実現について、萩生田文科相は7月7日の記者会見で、「直ちに何十人の学級が望ましいといった議論ではない。コロナを踏まえて、新しい時代の学びを支える環境の整備が必要だ。今後を考えたときに、果たして今の40人学級のままで安全安心な学校運営ができるか、少し深く考えていきたい」と述べている。萩生田文科相は、7月20日からスタートする政府の教育再生実行会議で、アフターコロナ時代の学校教育の在り方を議論する考えを示しており、少人数学級についても検討されることになりそうだ。

大学教授らによる署名活動は10万人を目標に、インターネットサイトのChange.orgで実施されている。集まった署名は、来年度予算の概算要求が新型コロナの影響で9月末に後ろ倒しされたのに合わせ、9月上旬に政府に要望書を手渡すとしている。

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