少人数学級を「計画的整備」 教育再生実行会議スタート

安倍政権下の今後の教育政策を方向付ける政府の教育再生実行会議が7月20日、1年2カ月ぶりに首相官邸で開かれ、新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえた「ポストコロナ期における新たな学び」をテーマに、新たな議論が開始された。会議では、初等中等教育について、学校のICT環境整備を進める中、対面指導とオンライン授業のハイブリッド化を求める考えや、少人数学級の実現を求める意見が強かったという。萩生田光一文科相は「(現在の40人学級は)限界を超えている」と述べ、少人数学級の「計画的な整備」に向けて検討していく考えを示した。実行会議は、来年5月をめどに提言をまとめる見通し。

教育再生実行会議について説明する萩生田光一文科相

安倍晋三首相は冒頭、「今般の感染症の影響によって、子供たちの学びに遅れや、地域や学校の間で格差が生じるようなことはあってはならない。このような感染症をはじめ、今後どのような事態が生じたとしても、子供たちの学びを確実に保障できる教育システムを構築していく必要がある。さらに、遠隔教育の本格化や高等教育のグローバル化など、ポストコロナ期における新たな学びの在り方とともに、秋季入学など教育分野にとどまらず、社会全体で取り組まなければならない事項についても検討する必要がある」とあいさつ。感染症などが起きても「学びの保障」を可能とする教育システムの構築や、オンライン授業(遠隔教育)の本格化に向けた教育政策の課題に方向性を示すよう求めた。

続いて、教育再生担当大臣として出席した萩生田光一文科相が、検討の視点や議論する事項を具体的に説明した。会議後に記者会見した萩生田文科相によると、初等中等教育については、「学校という場の重要性を踏まえつつ、全ての子供たちの学びを確実に保障し、個別最適化された学びを実現するための方策。特に令和時代のスタンダードとしての、新しい時代の学びの環境や、その中の少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備や、ICTの活用などの環境整備はどうあるべきか」といった課題を提示。

高等教育については「国際化やデジタル化の進展に対応しつつ、今回明らかになった課題を踏まえた、柔軟かつ強靱(きょうじん)な仕組みの構築。特に、対面とオンラインのハイブリッド教育の在り方、社会との接続や学事歴、修学、修了年限の多様化などはどうあるべきか」などの議題を提起した。

こうした課題を検討するため、会議では、初等中等教育と高等教育の2つのワーキング・グループ(WG)を設置し、将来的な9月入学(秋季入学)への移行については合同WGを別途開いて協議することを了承した。

内閣官房教育再生実行会議担当室によると、初等中等教育WGでは、「新たな日常」(ニューノーマル)に応じた学びとして、ICT活用を前提に、対面指導とオンラインのハイブリッド化による対話的で協働的な学びの深化や、デジタル教科書の普及・促進を検討する。

高等教育WGでは、国際化やデジタル化の進展を踏まえ、対面とオンラインのハイブリッド教育や大学設置基準などの弾力化、通年入学・卒業・採用やリカレント教育の推進を踏まえた大学と社会との接続、学事暦・修業年限の多様化、オンライン教育の活用や新たな留学生政策、共同学位課程(ジョイント・ディグリー)の推進など高等教育の新たな国際展開――などが検討事項となる。

教育再生実行会議の協議内容を説明する鎌田薫座長(前早稲田大総長)

会議終了後に協議内容を説明した鎌田薫座長(前早稲田大総長)によると、ICT活用や通信環境整備の重要性を指摘する意見が複数の有識者から出された。オンライン授業(遠隔教育)については「実際にやってみると、思ったよりも効果があった」と肯定的な意見が出る一方、対面指導の必要性を指摘する声もあり、「全体として、対面指導とオンラインを組み合わせるハイブリッド型を考えるべきだという意見が強かった」(鎌田座長)という。

また、少人数学級への移行を進め、学級編成の標準を現在の40人から30人程度にするべきだとの意見もおおむね支持された。有識者からは「1クラスを少人数にするメリットは感染症対策だけではない。児童生徒に目が届くようになるので、不登校が減る」といった指摘が出た。

このほか、これまでの授業時数で学習内容を定める履修主義から、児童生徒が身に付けた学習内容で評価する修得主義への移行をある程度認め、「横一線に並んで学ぶ教育を変えていくべきではないか」との意見も出された。デジタル教科書を巡る著作権や費用の問題も提起された。

萩生田文科相は終了後の記者会見で、少人数学級の実現について「あらかじめ想定する人数の規模などを前提として議論してもらうつもりはない」とした上で、「一つの大きなテーマであることは事実。64平方メートルの教室に、40人の児童生徒が座り、いまの机のスペースで授業を続けていくことは、限界を超えていると私は思っている。そこは議論してほしい」と述べ、教育再生実行会議で少人数学級の計画的な整備について具体的に検討していく考えを示した。

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