コロナ対応の大学入試、配慮は十分? 全高長会長に聞く

新型コロナウイルスの影響を考慮し、2021年の大学入学共通テストは当初の日程よりも2週間遅い第2日程が設けられ、高校3年生が選択できるようにするなどの対応が決まった。しかし、教育新聞が7月2~13日に実施した「Edubate」の読者投票では、こうした対応について「不公平だと思う」と回答した割合が75%(394票)に達した。休校の長期化で学習の遅れが生じている中で、高校現場はどんな配慮を求めているのか。全国高等学校長協会会長(全高長)の萩原聡・都立西高校校長にインタビューした。

第2日程は実質的に配慮されていない
――文科省や大学入試センターが公表した共通テストの対応について、どのように評価していますか。

大学入試で受験生への配慮を求める萩原会長

まず、全高長としての要望は、年度内に行われる総合型選抜(旧AO入試)や学校推薦型選抜(旧推薦入試)も含めて、大学入試の日程を一律に1カ月程度遅らせてほしいというものでした。

しかし、結果的に文科省から示されたのは、総合型選抜は当初の日程よりも2週間遅らせることと、共通テストでは当初の日程よりも2週間遅らせた第2日程を選択できるようにするというものに過ぎませんでした。第2日程は選択なので、一律に日程をずらすことや、病気などのやむを得ない事情で受ける追試とは意味が違います。

問題は、その後の国公立大学や私立大学の入試日程は変更されていないという点です。2週間あれば学習の遅れを少しでも取り戻すことができるという考えかもしれませんが、第2日程を受験した場合、その後の各大学の入試との間に日程的な余裕がなく、受験生には志望先の試験対策をしたり、体調を整えたりする時間がほとんどありません。

そうなると、高校としては第2日程を選択するメリットはあまりありませんから、学習の遅れや受験指導を第1日程に間に合わせようとするしかない。現在、文科省では全国の高校に共通テストについてどちらの日程での受験を考えているか、意向調査を行っていますが、このような状況を踏まえれば、ほとんどの高校生は第1日程を選ばざるを得ないのではないでしょうか。

つまり、今回の文科省の対応は、実質的に高校現場に全く配慮されていないと言えます。

受験会場の確保などの問題から、試験日程を動かしたくないという大学の事情もあるかもしれませんが、受験生の立場に立ってほしい。今回の全高長としての要望書を文科省は受け取りませんでしたが、高校側と大学側の調整の役目を果たしてほしかったと残念に思います。

――読者投票では「不公平」が多いという結果になりました。

第1日程と第2日程との試験の間では、得点調整を行わないことになっています。共通テストは今回が初めてということもあり、第1日程の問題を分析した上で、第2日程に臨もうと考える受験生がいるかもしれません。2週間でどれだけの対策ができるかは疑問ですが、もし共通テストの第2日程の方が第1日程よりも点数が取りやすかったなどとなれば、受験生の不満は一気に吹き出すでしょう。

さらに、第2日程を受けられなかった場合に行われる特例追試験では、センター試験の過去の予備問題が用いられます。特例追試験の対象となる受験生は、実際にはかなり限られると思われますが、英語ではリスニングとリーディング(筆記)の配点が共通テストとセンター試験では異なるなど、出題方針がそもそも異なります。合否判定をする大学もこれをどう扱うべきか、かなり困るのではないでしょうか。

複雑化する高校の対応
――第2日程を受験する場合は、校長が学習の遅れを承認する必要があります。

先ほど述べたように、第2日程を選択することはかなりリスクが伴います。高校として、その学校の受験生全員を一律に第1日程あるいは第2日程で受験させるというような強引なことはできないと思います。実際には、第2日程の受験を希望する受験生に対して、校長が個別に承認をしていくような形になるのではないでしょうか。

もしも受験生一人一人に個別に承認を出すとなれば、事務手続きはかなり煩雑になることが容易に想像できます。それによるトラブルなどが生じないとも限りません。

大学入試センターからは、第1日程と第2日程の選択について、具体的にどのような方法で行うかはまだ示されていません。いつどのタイミングで受験生が意思表示をするのか、そのときの新型コロナウイルスの感染状況はどうなっているかなど、さまざまな不確定要素があります。

――高校としても、進路指導などに影響が出るのではないでしょうか。

今年の受験生は、共通テストを最初に受験する学年で、英語民間試験が延期になったり、共通テストの記述式問題が見送られたりするなど、ただでさえ翻弄(ほんろう)されています。それに加えてこの新型コロナウイルスです。

例年であれば、予備校などが実施する模擬試験を受けることができましたが、感染防止対策で模擬試験も自宅で受けたり、CBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)で実施されたりするなど、実際の入試とは違う環境で行われています。自分の実力を確認して志望校を決めるという模擬試験の従来の役割が十分に機能しているとは言えない状況です。

大学では、コロナウイルスによる影響が予測できず、またインフルエンザなどの感染が広がりやすい冬季に行われる一般入試よりも、総合型選抜や学校推薦型選抜で学生を確保しようとする可能性があります。一般入試を避けて早めに決めてしまおうと考える受験生も増えるかもしれません。最後のセンター試験となった前回の大学入試は、現役入学を狙った安全志向が顕著でしたが、今回もその傾向がより強くなるかもしれません。進路指導で受験生にどうアドバイスすべきか、とても悩ましい状況です。

高校生の勉強方法そのものが大きく変わる可能性もあります。休校によって学校や予備校の授業がオンライン化されれば、生徒は自宅で学ぶことになります。その際に問われることこそ、主体的な学びです。受動的に授業を聞いているだけではだめで、自ら課題を立てて学んでいける生徒を育てなくてはいけないと痛感しています。

また、小中学校はGIGAスクール構想でタブレットPCなど1人1台環境が一気に整備されますが、高校は各都道府県に任されているような状況で、オンラインを活用した学習に対応した高校のICT化は急務です。

――大学側に求めることは。

7月31日までに、各大学は入試の実施要項を発表することになっています。その際、できる限り、この新型コロナウイルスに対する受験生への配慮を打ち出してほしいと思います。それは、これまで全高長として訴えてきた日程上の問題だけでなく、例えば、学業の遅れに配慮した出題範囲の限定、選択問題の導入などや、経済的に苦しい家庭の受験生への受験料減額などの対応も含まれます。

試験会場の感染防止対策の徹底も言うまでもありません。もし会場に感染者がいたことが判明すれば、多くの受験生に不安を与え、濃厚接触者となれば入試どころではなくなります。同時に、受験生自身も十分な感染予防を行い、ウイルス接触アプリのインストールをするなど、もしもに備える対策も必要でしょう。

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