長期休校で保護者の意識に変化 「学びの選択肢」求める

新型コロナウイルスの感染拡大に伴う長期休校で、多くの家庭で予想外に「学びのICT化」が進み、保護者の意識に大きな変化が起きたことが、経産省の「未来の教室」事業の事務局を受託しているボストンコンサルティンググループのアンケート調査で分かった。多くの保護者が学校の重要性を改めて実感する一方、新型コロナ終息後も登校や自宅学習を柔軟に選べる「学びの選択肢」を求める意見が顕著に増えており、保護者の中で学校の位置付けに対する認識が変化してきたことが鮮明になった。調査担当者は「Withコロナとアフターコロナにおいて、学びの在り方は大きな変革を迫られている」と指摘している。

グラフ1=休校期間中、学習に使用していた教材・ツール

調査は7月3日から6日にかけ、全国の小中高の子供を持つ保護者2000人を対象に行われた。学校種や学齢、国公立と私立、居住地域などはバランスよく収集されている。同社が7月22日にオンラインで行ったメディア向け勉強会で内容を明らかにした。

まず、休校中の子供たちの学習環境を調べたところ、4月と5月にほぼ全ての子供が長期休校を経験しており、その保護者のうち82.5%が子供たちの学びに不便を感じていた。

休校中の学びに必要なICTデバイスをみると、専用デバイスの使用率は小学生26%、中学生30%、高校生39%だった。ICTデバイスについて自治体や学校から「十分な支援があった」と答えた保護者はわずか1~2割にとどまり、私立校がやや高かった。休校期間中に学校が提供した教育内容については保護者の6~7割が不満を感じていた。休校中の学びは、学習に必要なICT環境が整わず、学校によるフォローも不十分で、保護者がしわ寄せを受けていた、という実態が浮かび上がってくる。

次に、休校中の子供たちの学び方を聞いたところ、全体でみると、最も多く使用されたのは、紙の教材だった。ただ、高校生では、デジタル教材やリアルタイムのオンライン授業など何らかのICTを使った割合は5割を超えた。また、私立校では、中学生、高校生の双方で、紙の教材よりもICTを使った割合が高く、公立校に比べてICT活用が進んでいることが分かる=グラフ1参照。

グラフ2=休校中に保護者が子供の学習に費やした時間

保護者の負担については、紙の教材主体で学んだ家庭よりも、デジタル主体で学んだ家庭の方が、負担が増えたと答えている。この傾向は小学生に顕著で、特に小学1~3年生の保護者の場合、デジタル主体で学んだ家庭の83%が保護者の負担が増えたと回答した。小学生はデジタル教材やリアルタイムのオンライン教材を一人で十分に取り扱うことができず、保護者の多くが子供の学習に付き添っていた様子が読み取れる=グラフ2参照。

さらに、学校再開を受けて、新型コロナ感染の第2波や第3波が生じた場合、あるいは、感染終息後にどのような対応を実施してほしいか、意見を聞いた。第2波や第3波が生じた場合には、保護者の57%が「できるだけ登校することを希望」と答え、長期休校を通じて学校教育の重要性を改めて認識した様子が確認された。

グラフ3=保護者の希望:第2・第3波が生じた場合

一方、同じ質問に、「学びの選択肢を増やし、学習の場を選択できることを希望」と答えた保護者が、第2波や第3波が生じた場合に34%、感染終息後に28%を占めた=グラフ3、4参照。感染終息であっても、必ずしも学校に登校しなくてもいいと考える保護者が全体の4分の1を超えた調査結果からは、休校中に学習のICT化を初めて経験し、学校に対する保護者の意識変化がうかがえる。

ICTを使った学習については、継続を希望する保護者が81%を占める一方、同時に多くの保護者が学校行事や基礎教科の講義型授業、部活動、基礎教科の協働学習など従来の対面指導による学校活動の継続を求めていることも分かった=グラフ4参照。この結果について、同社は「今後は、ICT化とアナログのベストミックスが重要になる」と評価している。

グラフ4=保護者の希望:新型コロナ感染が終息した場合(アフターコロナ)

必ずしも学校に登校しなくてもいいと考える保護者が増えてきた背景について、調査に当たった折茂美保・マネージング・ディレクター&パートナーは記者との質疑に応じ、3つのポイントを指摘。(1)コロナ以外の内容も含め、不安を抱えて学校に行かなくても、自宅でもちゃんと学習できることが分かった。このため、学校に行きたくないときには無理に行かなくていいという考え方が広がった(2)休校中のオンライン授業では、それまで不登校だった子供たちが授業に参加する「うれしいサプライズ」が各地で報告されている。学校に行かなければならないという既成概念が壊れ、子供たちの心理的なたがが外れた(3)強制的にICTを使って学んでみた結果、ドリルのような個別学習はICTを使った方が、自分の学びに合っているから、コロナ終息後も継続したいという子供たちの声が出てきた――と説明した。

折茂氏は「学校には、例えば協働学習のように、オンラインでは代替できない良さがある。一方で、休校中にICTを使って学んでみた結果、オンラインで代替できる、ないしはオンラインの方がいい学びができるものが実はあるのではないか、という可能性に子供たちや保護者が気付いた。そうした保護者が、朝から晩まで学校に行かなくてもいいのではないか、と感じているのだと思う」と説明した。

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