AIによる個別最適化学習に危惧の声 中教審部会

GIGAスクール構想によって1人1台端末の整備が進む中、中教審教育課程部会は7月27日の会合で、端末整備によって実現可能になる個別最適化された学びについて、集中的に議論した。席上、児童生徒の知識技能の習得状況に応じてAIが学習内容を提示するようになった場合、「AIによる情報推薦が、子供にも教師にも、無視や抵抗のし難いものと映る可能性がある」との危惧が報告された。これに対し、委員からは、学習者自らが学びを最適化する重要性や、「個別最適化」の概念について共通認識を持つ必要性などが指摘された。

オンライン会議システムを使って開催された中教審教育課程部会

会合では、上智大学総合人間科学部の奈須正裕教授が学びの個別最適化について歴史的背景や世界各国の事例を踏まえ、課題点を整理した。

米国では、子供の反応や学習適性に関するデータに基づき、教師やシステムが最適化の判断を行うのに対し、日本では子供に必要な情報は全て開示した上で「最終的な判断は原則として子供に委ねていた」と指摘した。

奈須教授は「何が最適なのか、学習者本人で判断することが重要」と話した上で、日本の特徴について「子供の意思により推薦されたのとは異なる選択をすることも十分に起こりうるが、結果的にそれでうまく学べなかった場合、その経験を子供は省察し、次回以降に生かしていく。このような学びの経験に価値があり、また子供の成長につながると考えている」と説明した。

続けて、奈須教授は、こうした特徴を持つ日本の教育現場で、児童生徒の知識技能の習得状況に応じてAIが学習内容を提示するようになった場合に生じる懸念点を表明。「危惧されるのは、今後ますます進展するであろうAIによる情報推薦が、子供にとっても教師にとっても、無視や抵抗のし難いものと映る可能性だ」と指摘。「情報推薦がさまざまな限界を持ちつつも、ある一面においてでも確度の高いものであればあるほど、利用者はそのまぶしさに幻惑されてしまいがちとなり、その限られた枠組みの中での再生産を繰り返すというわなにはまるのではないか」と述べた。

学習履歴(スタディ・ログ)の活用についても、「個人情報である学習ログの取得や管理、利用の在り方についても、慎重な姿勢が求められる」と述べた。

こうした報告について、東北大学大学院情報科学研究科の堀田龍也教授は「教師やAIはあくまで、学習者自身が学びを最適化するのを支援する役割を担う。学習者にデータをフィードバックするシステムや、児童生徒が選びきれないときに教師が指導できる体制構築が大切になる」と意見した。

埼玉県戸田市教委の戸ヶ﨑勤教育長は「『個別最適化』の意味や概念をしっかりと把握するべきだ。各学校や教委の解釈がバラバラなのではないか」と懸念を示した。これには富士見丘学園の吉田晋理事長をはじめ、同調する意見が相次いだ。

さらに会合では、IT企業経営の経歴を持つ、文科省初等中等教育局視学委員の中川哲(さとし)氏が、学校教育のコンピューターやAIの活用実態について発表。「他の産業と比べ、教育界のデータは不足している」と説明。学校現場で文房具としてコンピューターを活用する必要性を改めて強調した。またAIドリルと校務システムを連動させた、教員のためのモニタリングシステムや意思決定支援システムの早期導入を検討すべきだと提案した。

次のニュースを読む >

関連