オンライン授業の次の展開を議論 未来の教室キャラバン

経産省「未来の教室」のオンラインキャラバンが8月2日、開かれ、大阪府内の学校を中心にしたオンライン授業の取り組みや、STEAM教育の実証から見えてきた可能性をテーマに意見交換が行われた。オンライン授業の“次の展開”として、リアルな学校でないとできない学習や、生徒が主体となってのオンライン授業による学びの保障を模索する必要性が指摘された。

STEAM教育の可能性やオンライン授業の課題について話し合う登壇者ら(YouTubeで取材)

冒頭、同省の「未来の教室」実証事業を担当している浅野大介サービス政策課長・教育産業室長は、今年度中に小中学校での1人1台環境の実現を前倒しした国のGIGAスクール構想について、「来年の夏には、日本の学校のICT環境は世界最高水準になっているはずだ。学校のICT化はこの20年間、全く進まなかった。国策として省庁が一体となって未来の教室をつくることが重要だ。私は、学びのSTEAM化と個別最適化が、2つの柱になっていると思っている」と述べ、教員や子供にSTEAMに関する高度な学びを提供するオンラインライブラリーの構想などを語った。

第一部では、広尾学園中学校・高校の医進・サイエンスコースを統括する木村健太教諭が、同コースの生徒が取り組んでいる研究活動について紹介。iPS細胞の研究などの学術論文を読もうとすると、ほとんどの論文が英語で書かれていることから、英語で学ぶ必要性を生徒は早くから自覚するなど、教科を学ぶ姿勢が変化していることを指摘した。

さらに生徒の研究が、教員にも好影響を与えていると説明。「これまでは社会が暗記教科だと思われ、苦手意識を持っていた生徒も多かった。しかし、横断的な学びが進むと、社会科の教員と理科の教員が、教科横断で取り組める授業テーマについて活発に話し合うようになり、理科と社会で同じ題材を取り上げたテスト問題を出題したり、お互いの授業を見合ったりするなど、教員も楽しみながらやっている」と話した。

同省の「『未来の教室』とEdTech研究会」で研究員を務める、音楽家で数学研究者の中島さち子さんは、農業高校の生徒が専門家のアドバイスを踏まえ、農業の問題解決を行うロボティクスの実証事業について報告した。

まず、生徒は地域の農業の課題を洗い出し、それを解決するための機械のアイデアを、ロボット教材を使って表現。次に、そのアイデアを実現するために、エンジニアなどの専門家からオンライン上でアドバイスをもらい、試作機を作って、農業の現場でユーザー調査を行ったという。

中島さんは「生徒はプロジェクトを通じて、教科の学習が関連していることに気付く。プロフェッショナルが関わることで、学校だけでは難しかったアイデアを形にすることができる。こうした学校がオンラインでつながって、アイデアをより多角的に見直す機会も大事だ」と話した。

第二部では、コロナ危機の影響によるオンライン授業の取り組みを、大阪府内の学校が報告。オンライン環境で生徒や教員が在宅で教育活動を行う「ディスタンスラーニング」に取り組んだ関西学院千里国際中等部・高等部の岡本竜平教諭は、定期的なアンケートなどで生徒の声を集め、教員間でオンライン授業の留意点や課題をシェアする機会を何度も設けたことが、よりよい活用スタイルの模索につながったと振り返った。

学校再開を踏まえ、岡本教諭は「7月以降、ディスタンスラーニングでできなかったことを中心に、学校の教育活動を行っている。ディスタンスラーニングでできることと同時に、学校で行うべき学びは何かということも明確になった。学校に来てもオンラインと同じことをやっていては駄目で、生徒の学びを中心に知恵を絞っていきたい」と語った。

一方で、公立学校からはオンライン授業の課題も示された。

授業支援アプリのロイロノートを活用した教材づくりについて発表した、大阪府寝屋川市立友呂岐中学校の大前拓也教諭は「現場の教員は疲弊している。いろいろな新しいことをやろうとすれば、そのための勉強が必要だが、今は消毒や子供の様子の把握などが優先され、授業を少しでも面白くするために何ができるかを考える余裕がない」と悩みを打ち明けた。

また、休校期間中のオンライン授業の対応について紹介した、大阪府立東百舌鳥高校の北野堅司教諭は、試行錯誤を繰り返した結果、ほぼ全ての教員がオンライン授業を配信できるようになったものの、学校には動画を制作できる高性能なノートパソコンが十分になく、中にはWEBカメラのないものもあるなど、ICT環境の遅れを指摘。

その上で「オンライン授業での生徒の学習をどう評価するかは課題がある。これまでは、とにかく教員がオンライン授業をできるようになることが主眼だったが、生徒の視点で授業できていたかは疑問だった。次の段階として、生徒が主体的に考える、学習者中心のオンライン授業にできるかが問われる」と強調した。

次のニュースを読む >

関連
関連記事