夏休み明けに要注意 メンタル不調や不登校、熱中症

毎年、夏休み明けに懸念されるのが、子供のメンタル不調や不登校の増加。さらに今年は、早ければ8月中旬から2学期が始まる学校もあるため、感染防止対策と並行して、熱中症対策にもこれまで以上に気を配る必要がある。夏休み明けの注意点について、専門家に対策のポイントを聞いた。

もがいてきた子供たち

夏休み明けの子供のトラブル増加に注意を促す須永さん(Zoomで取材)

春からの長期間に及ぶ休校と外出自粛、感染防止対策を意識しながらの学校再開、そして「短い夏休み」と、この半年間で先の見えない環境の変化にさらされてきた子供たち。子供のレジリエンス(精神的回復力)に関する研究や実践を行っている小林朋子・静岡大学教授は「この状況の中、本当に子供たちはよく頑張っている。教師や保護者は、子供たちが必死にその環境の変化に適応しようともがいていることを、まずは理解して」と訴える。

さらに小林教授は2学期以降の学校の状況について、「休校中の授業時間数確保のため、楽しみにしていた行事がなくなったり、1日7時間授業になったりして、学習についていけない子も出てきている。短い夏休みで、ほっとしたのもつかの間、すぐに学校が始まり、次の冬休みまでは4カ月もある。その間、子供たちが楽しみにしていた行事もなくなり、気持ちにメリハリがつきにくく、教師も指導が難しくなる」と懸念する。

人間関係のトラブルはこれから起こる

「6月からやっと学校が本格的に再開し、新しいクラスになって2カ月がたってからの夏休み。まさに今、いろんな面でいじめの芽となる人間関係のトラブルが起こっている」。そう指摘するのは「ストップいじめ!ナビ」副代表の須永祐慈さん。例年では、4月から始まった新しい学校生活がひと段落するゴールデンウィークに起こっていた問題が、この短い夏休みにスライドして起きる可能性があるという。

特に須永さんが心配するのは、これまで何とか学校には通えていたものの、授業中は保健室で過ごすなど、内心では学校に行きたくないと思っている「隠れ不登校」の子供たち。ただでさえ通常の学校生活を負担に感じていた彼らが、この新型コロナウイルスの混乱で、さらに大きなストレスを感じていることが考えられるという。

また、ストレスを感じているのは「隠れ不登校」の子供たちだけではない。新型コロナウイルスで生活や心理面でさまざまな影響を受けたことにより、子供たちは不安を抱きやすくなり、普段は加害行動を起こさないような子供であっても、友達とトラブルを起こす場合も考えられるという。

須永さんは「大規模な震災が起きた地域では、その直後ではなく翌年以降にいじめや不登校が増える傾向にある。これらを参考に、学校は中長期的な視点で対応していくことが求められる。しかし、学習の遅れを取り戻すことや感染防止対策で教師に余裕がなく、子供の変化に気付きにくくなっている。学校生活が子供のストレス要因になってほしくない」と警鐘を鳴らす。

熱中症予防は一層慎重に

8月中に2学期が始まることから、学校保健学が専門の戸部秀之埼玉大学教授は「熱中症予防が特に重要」と注意喚起する。

戸部教授が全国の養護教諭を対象に行ったアンケートでは、長期間に及んだ休校で、子供のメンタルや体調、体力、生活習慣などにさまざまな影響が見られ、学校再開でそれらを取り戻しつつある状態だったのが、夏休みで逆戻りしてしまうことも考えられるという。中でも、体力の低下や肥満の増加は熱中症リスクにつながりやすい。

戸部教授は「体育の授業や運動部活動では、暑さ指数(WBGT)を測定して『熱中症予防のための運動指針』などのガイドラインに基づいた対応を徹底してほしい。体育の授業では、気温が上昇する前の午前の時間帯に実施したり、座学で行える保健の内容にしたりするなどの工夫も考えられる。部活動での予防は例年より一層慎重にし、休憩時に涼めるように冷房の効いた部屋を用意しておくことも有効な対策の一つだ」とアドバイスする。

また、今年の熱中症対策は新型コロナウイルスの感染防止対策との両立が求められる。戸部教授は「入念な健康観察、冷房中でも頻繁に換気をしながら状況に応じてマスクは外してよいこと、こまめな水分・塩分補給、身体活動は休憩を取りながら行うことなどが基本。天気予報の熱中症関連情報を学校全体で共有することも大切だ」と強調。

その上で「暑さの耐性には個人差があるので、全体への対応に加え、個々の子供にも目を向ける必要がある。体調不良者(発熱や腹痛、下痢など)や肥満児、睡眠不足、朝食欠食傾向の子供は特に注意が必要で、コロナ対策と抱き合わせて効率よく健康観察をする工夫がポイントになる。子供が体の不調を訴えやすい環境や雰囲気をつくることも重要だ」と話す。

コロナ禍で不登校対策も変わるか

短い夏休み明け、教師や保護者にはどのような心構えが求められるのか。

小林教授は「夏休み明けは、度重なる環境の変化に合わせることに疲れて、『もう学校に行きたくない』という子供たちもたくさん出てくると考えられる。感染が心配で学校に行きたがらない子供もいるかもしれない。教師や保護者は『学校に行きたくない』と訴える子供たちの背景にある『疲れた』や『心配』といった気持ちに寄り添ってほしい。感染への不安などは、子供と話し合いながら考えてみることもできると思う」と話す。

また、須永さんは各学校でオンライン授業ができるICT環境が整備されることを念頭に、「教師や教師以外の大人が、オンラインで子供たちと個別に話を聞きながら、気持ちを共有するような場をつくるなど、工夫の余地があるのではないか。ネット空間を活用して、子供たちのストレスや不安をやわらげ、居心地のいい学校にしていく必要がある」と、心のケアなどの場面でオンライン活用を進めるよう提案する。

「『学校に行くのが当たり前』という考え方に変化が生じたのがWithコロナの大きな変化だ」と指摘する戸部教授は「長い休校中は見違えるように元気になり、親子とも生き生きしていたが、学校再開が近くなると元に戻ってしまった不登校の子供や、長い休校の後に、吹っ切れたように登校できるようになった不登校の子供もいる。価値観の変容や学校へ行く意義の捉え直しを経て、『学校に行くことを選択できるような学校』であることが求められているのではないか」と問題提起する。

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