少人数学級に96.6%が「賛成」 公立校の教員、本紙調査

少人数学級について教育新聞が実施した意識調査で、回答した公立学校教員の96.6%が、少人数学級の実現を求めているという結果が出た。新型コロナウイルスの影響による、学校再開直後の分散登校によって、一度に教える児童生徒の数が一時的に少なくなった経験から、多くの教員が一人一人の子供に目が行き届く少人数学級のメリットを感じていることが伺える結果となった。

分散登校で「目が行き届く」と実感

分散登校の実施割合

意識調査は8月1~10日、公立学校の教員を対象に実施し、分散登校の経験を踏まえた少人数学級に対する意識を聞いた。小学校、中学校、高校、特別支援学校などの公立学校教員147人が回答した。

分散登校の状況については、82.3%の教員が「実施した」と回答。分散登校時の1学級の人数は「10~19人」が78.3%で最も多く、次いで「20~29人」が18.3%、「1~9人」が2.5%と続いた。

分散登校を実施した教員に、分散登校で感じた指導上のメリットやデメリットを聞いたところ、▽「少人数なので、指示が通りやすかった。また、大勢の中だと問題を起こす児童も、落ち着いて指示を聞くことができていた」(小学校教員)▽「全員分の宿題やその直しを見ることができた。普段は特別支援学級の子を入れると42人学級なので、とてもではないが提出物を見切ることすら難しい。子供たちと遊ぶ時間も取れた」(小学校教員)▽「目がよく行き届くメリットがあった。授業進度が遅いデメリットはあるが、教材準備の負担は減り、教材研究がゆっくりできた」(中学校教員)▽「それぞれの生徒の様子がよく分かった。配慮が必要な生徒に声を掛けたり、指導したりすることができた」(中学校教員)▽「いつもより授業しやすかった。特に実験などは2人1組でできたので、片付け、考察がスムーズだった」(高校教員)――など、配慮が必要な子供はもちろん、個々の子供に目が行き届き、子供も落ち着いて過ごしていたという声や、授業や提出物のチェックなどで負担が少なくなったなど、肯定的な意見が多く寄せられた。

一方で、分散登校によって授業の回数が増えたことや、消毒作業が負担になっているという指摘、クラス替えの影響もあってか、子供たちの人間関係づくりに課題を感じるという声もあった。

少人数学級はメリットの方が多い

少人数学級に対する賛否

少人数学級を導入することについての賛否を尋ねたところ、「賛成」が96.6%と大半を占めた。残りの3.4%は「どちらとも言えない」で、「反対」はいなかった。

少人数学級を導入する具体的なメリットとしては、分散登校での回答と同様に「子供一人一人に目が行き届く指導ができる」や「感染防止対策」「業務量の負担軽減」などを挙げる人が多くいた。

一方で、デメリットとして多く挙がったのは、教室の増設や教員の確保といった財政上の問題だった。また、教員を増やすことによる教育の質の低下を懸念する声もあった。

ハード面のハードルさえクリアできれば、少人数学級はメリットが多いというのが、大方の教員の評価と言えそうだ。

寄せられた意見には、次のようなものがあった。

「デメリットは思い浮かばない。メリットは、きめ細かく見てあげられること、単学級で人数が多い、という学校もクラス替えができ、人間関係に変化が期待できる。体育など、大人数の方がよいときには合同で活動すればよい」「メリットは担任の目が届きやすいこと。特別支援を要する子供や虐待ハイリスクの子供、不登校傾向の子供への支援もやりやすくなると思う」「デメリットは考えられないが、メリットは①一人一人の存在感が大きくなり、活躍の機会も増える②他の学級の児童のこともある程度、把握できる③異年齢の学年との交流がしやすい④少ない方が施設や交通機関を活用しやすい⑤よい意味で地域の方と、保護者との関わりが増える」(いずれも小学校教員)

「メリットは3密を防ぐことができ、教員1人当たりの担当する生徒の人数が少なくなり、負担が減る。デメリットは、生徒指導など(学校で)統一の指導や情報交換が大変。しかし、メリットの方がありすぎる」(中学校教員)

「メリットは担任の負担減。必然的に、生徒が授業に参加しなければいけない率が上がる。デメリットは教員を増やすことによって、教員の質が下がる。今までひっそり過ごしていた子供が、目立つようになってしまい、しんどくなる」(高校教員)

「児童生徒の実態や課題に応じた指導や、児童生徒や保護者の状況に対応できる時間の確保、授業準備、評価などの過剰な負担の軽減による、よりよい授業づくりの準備もできる。労働条件が少しでも良くなれば、より能力の高い人材が教員になろうと考えてくれる」(特別支援学校教員)

また、その他の自由記述では、「今年度は自閉症、情緒障害学級の担任をしている。特別支援学級は1クラスの上限が8人となっているが、児童の実態によっては対応が不可能になる。通常学級だけでなく、特別支援学級の人数制限についても見直してほしい」「少人数学級実現の働き掛けとともに教育内容を精選し、減らすようにすることも大切。詰め込み教育のまん延を解消することも大切。現場は教育課程を完全実施するためにかなりハードな生活を子供たちに強いている。すでに不登校、行きしぶりが増加している」(共に小学校教員)との指摘もあった。

さらに「少人数学級の実現は賛成。ただし、子供が教育を選べないままで、ただクラスの人数だけ少なくしても解決しない問題が、まだまだたくさんある。予算もかなりかかるだろうと思う。そこで、フリースクールなどに教育予算を使ってもらいたい。フリースクールの経営は厳しい。スクール側で授業料などを徴収しなくてはいけないので、学校に行きたくない子もフリースクールは選べない。出席を認定する流れもあるが、ならばフリースクール側に相応の対価を支払わないのはおかしい話だと思う。子供たちがもっと受ける教育を選べて、フリースクールなりホームスクールなりが、もっと普及すれば良いと思う」「現在の一斉授業の枠組みの中で単に人数を減らしてもあまり意味がない。オンラインでの学習を含む個別最適化の学習、プロジェクトベースの学習、異学年での学習などを進める中で『ある場面で人数が20人程度の集団に対して何らかの教育的指導をしていく』(ことを目指すべき)」(共に小学校教員)といった、多様な学びの保障に関する意見も寄せられた。

学力以外の効果を明らかにする研究が必要

少人数学級を巡っては、教室での3密を回避する有効策として一部の教育学者の有志が署名活動を始めているほか、全国知事会なども導入を要望しており、7月から始まった教育再生実行会議の議論でも検討課題に挙げられている。萩生田光一文科相は8月4日の閣議後会見で「教員増や施設改修に一定の時間は必要」とした上で、「やるとなれば、今までとはスピード感を変えて、しっかり前に進みたい」と前向きな意向を示している。

教育新聞の調査結果について、署名活動を行っている教育学研究者のグループのメンバーである内田良・名古屋大学准教授は「サンプルが限られる調査ではあるが、これだけのポジティブな結果には驚いた。多くの学校の教員は少人数学級について、学力以外のさまざまな効果を感じている。これは、教育経済学をはじめ、少人数学級の効果について、これまで学力中心の限定的な指標でしか学術的に捉えられていなかったということを示唆(しさ)しているのではないか。こうした教員の意識を、教育学がさまざまな方法で明らかにすることができれば、学力中心の少人数学級論に対抗できる可能性がある」と話している。

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