リアル×オンライン 静岡聖光学院が挑む新しい教室空間

「リアルとオンラインのシームレスな教室空間」をつくろうと、静岡市にある静岡聖光学院中学・高校(星野明宏校長、生徒473人)の教職員によるプロジェクトが始まった。教室でのリアルな授業にオンラインで参加する生徒が、教室にいる場合とほとんど変わらない学びを提供できるようにする。資金はクラウドファンディングで調達し、1教室当たり20万円という低コストでの実現を目指す。同校では、この新しい教室のモデルを、公立学校を含む全国に広めたいという。

ストレスをなくす
学校再開後に行われている、自宅からオンラインで参加する生徒がいる授業(静岡聖光学院提供)

生徒1人に1台のタブレット端末の導入を進めるなど、ICT環境の整備に力を入れてきた同校では、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う一斉休校で、同県内でもいち早くオンラインによるホームルームや授業の配信を始めた。首都圏などに自宅があり、寮生活をしていた生徒もいる同校では、学校再開後も自宅から授業に参加する生徒が一定数いる。そのため、現在教室で行われているリアルな授業では、教卓の前にパソコンやタブレット端末を設置し、自宅と教室をつないだ同時双方向型のオンライン授業も同時に行っている。

教室でのリアルな授業に生徒が自宅からオンラインで参加する形だが、同校の教員らは課題を感じていたという。プロジェクトの中心メンバーである平本直之教諭は「自宅からオンライン参加している生徒は、ずっと黒板にカメラが向けられているので、リアルな教室にいる同級生の様子が伝わらない。教室にいる生徒も、教員の前にタブレット端末があるので気になってしまう。今後もこの状況が続く以上、オンラインで学ぶ生徒も教室にいる生徒もストレスなく、本当の意味で双方向になる必要があると考えた」と、プロジェクトの狙いを説明する。

新しい教室

休校期間中に学びを止めてはならないと、全教員が一丸となってオンライン授業に取り組んでいたこともあり、元の授業に戻すのではなく、さらに良いものを目指そうと、同校では次なる挑戦として、この問題を解決するための教室環境を教職員でつくりだすことを決意。「未来の教室」と名付けられたプロジェクトは、若手教員らが中心となり、毎週活発な議論が行われているという。

「未来の教室」はまず、黒板の前にパソコンやタブレット端末が置かれている状況を解消するため、教室の天井に黒板全体が映るカメラを新たに設置。オンラインで受けている生徒が教師の声を聞き取りやすいように、教卓の上には一方向の集音に適したマイクを置く。

リアルとオンラインの隔たりをなくすことを目指した新しい教室のイメージ(静岡聖光学院提供)

さらに、テレビモニターを追加して、そこにオンラインで学んでいる生徒の様子が見えるようにし、モニターの上にあるカメラからは、教室の様子がオンラインで学んでいる生徒から見えるようにする。

こうすることで、生徒が感じるストレスを解消するだけでなく、グループワークなどの話し合い活動もしやすくなることが期待される。現在、中学校と高校でそれぞれ1教室を試験的にこの環境にし、さまざまな教員が実際に授業を行いながら、さらなる改善を模索しているという。

どの学校でもできるモデルに

この新しい教室を、全国の学校でも導入が可能なモデルにしたいと、同校では考えている。

「試験的につくった教室環境はあくまで仮説段階。アップデートの余地はまだまだある。使いにくければモデルにはならない」とプロジェクトメンバーの中村光揮教諭。公立学校でもこの環境を実現できるようにするには、最大のネックは費用だと考え、機材の導入など、新しい教室に改装するために必要な予算は1教室当たり20万円という制約をあえて課した。

そして、この試みを同じ問題を抱えている学校現場や、問題解決に力を貸したいと考えている人に広く知ってもらおうと、同校はクラウドファンディングによる資金調達を計画している。

順調に資金が集まれば、新しい教室は秋ごろには全教室に整備される予定だという。同校の教職員は「オンラインで参加している生徒が教室にいるかのような、画面越しでない自然な授業ができるようになる」「この環境を生かして、海外の学校と日常の授業で交流ができるのではないか」など、新しい教室のさまざまな可能性について青写真を描いている。

クラウドファンディングの準備に奔走する古屋隆之副教頭は「オンライン授業の学校間格差の一番の被害者は子供だ。学校に来ることができない全国の子供たちのために、私たちは何ができるのか。この思いに共感できる人にぜひ出資してもらいたい。20万円でできる新しい教室を、多くの学校関係者に知ってもらえれば」と意気込む。

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