生涯学習もオンライン活用 中教審分科会が議論の整理案

あらゆる世代や人が地域で主体的に学ぶ社会づくりについて検討を重ねてきた中教審の生涯学習分科会は8月17日、第110回会合を開き、ポストコロナや国連の持続可能な開発目標(SDGs)に対応した、これからの生涯学習の方向性を示した第10期の議論の整理案について、大筋で合意した。新型コロナウイルスの感染拡大によって社会が大きく変化する中での生涯学習の意義を強調。GIGAスクール構想で学校における1人1台端末が整備される状況を踏まえ、社会教育やリカレント教育でのオンライン活用の充実を盛り込んだ。

会合では、これからの生涯学習の方向性を取りまとめた

議論の整理案では、障害のある人や外国にルーツのある人たち、社会的に孤立しがちな若者や高齢者など多様な人たちが、排除や差別を受けることなく、地域社会で共生していくインクルーシブな社会の実現を目指す考えを強調。そのために社会教育が果たす役割は大きく、新型コロナウイルスの感染拡大でその重要性は増している、と指摘した。

特に、若者が課題解決に主体的に参画していく中で、自己肯定感を高めたり、さまざまな人と交流したりしながら、主体的に学びを深めている事例を多く取り上げ、こうした学びを核にして地域社会を活性化していく方向性を打ち出した。

社会人の学び直しの場であるリカレント教育は、大学などで学ぶ時間が十分に取れないことや学費負担の問題があると指摘。人工知能(AI)の普及や新型コロナウイルスの感染拡大によるテレワークの推進、GIGAスクール構想の実現などを踏まえ、ICTなどの新しい技術の活用やオンライン学習の充実を図る必要を訴えた。また、高齢者のデジタルデバイドは安全や命に関わる問題であるとして、公民館などの社会教育施設のICT化を進めた上で、オンラインによる取り組みを展開していくことに期待を示した。

地域における生涯学習をコーディネートしていく人材としての「社会教育士」の活用・充実についても言及。教員が社会教育士の称号を取得し、地域資源を有効活用し、学校教育の中で「社会に開かれた教育課程」を効果的に実現していく取り組みなどを提案した。

この日の会合で、大久保幸夫リクルートフェロー(リクルートワークス研究所アドバイザー)は「テクノロジーやデジタル化が進んでいくことは、生涯学習を進める上でチャンスだ。コロナでさらに加速し、学び直しやリカレント教育の環境的な整備が整ってきた。このチャンスを生かして推進していく必要がある。その辺のニュアンスをしっかり書いてはどうか」と、個別最適化された学びや学習履歴の生涯学習の場面での活用について、さらなる記載の充実を求めた。

リカレント教育については、委員の萩原なつ子立教大学教授(日本NPOセンター代表理事)が「現実問題として企業側では、学びたいという社会人に対して、まだまだ理解が進んでいない。自分が大学院に行っていることを言えないということもある。リモート化が進む中で(リカレント教育の)『理解を進め積極的に取り組んでいく』としてほしい」と要望した。

人材育成の課題では、日本生涯教育学会前会長の澤野由紀子聖心女子大学教授が「(社会教育士を称することができる)社会教育主事は男性が多いことが分かっている。ジェンダーバランスだけでなく、社会的包摂を促進するという意味で、障害のある方や外国に背景のある方、多様な世代の方が社会教育主事や社会教育士になることで多様な学びのコーディネートがしやすくなるのではないか」と指摘した。

これらの議論を踏まえ、分科会長の明石要一千葉敬愛短期大学学長(千葉大学名誉教授)は「社会教育における新しい学びをこれまでずっと言ってきたが、今回の議論のまとめで、やっとそれに魂が入った。今回のコロナ禍の問題で初めてデジタルの時代の学び方がはっきりしてきた。新しい学びを支えるシステムがまだまだ社会教育は不十分だ。人材育成を本気でやらなければいけない。今の情報社会に見合った人材育成と同時にいろんな部局や団体と連携できるような人の育成が有効になる」とまとめ、ICTの活用と社会教育士をはじめとする人材育成の重要性を強調した。

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