過労死ライン超の教員6割 学校再開で消毒などの負担増

学校再開後、過労死ラインを超えて勤務する教員が6割に上っていることが8月21日、NPO法人「教育改革2020『共育の杜』」が、7都府県の教職員に行った調査で明らかとなった。調査結果では、教員の疲労度が高いほど、子供の話をしっかり聞けなくなる傾向にあることも示され、教員の長時間労働が子供の学校生活に悪影響を及ぼしている可能性が浮かび上がった。同日に文科省で行われた記者会見では、現職の校長も出席し、「教員は必死に頑張っているが、これ以上は限界がある。このままでは学校が危ない」と、深刻な状況を訴えた。

フェイスブック上で教員が気軽に相談を行うことができるグループ「心の職員室」を運営している「共育の杜」では、学校再開後の教員の勤務状況やメンタルヘルスへの影響を調査するため、4月7日に新型コロナウイルスによる国の緊急事態宣言の対象となった▽埼玉▽東京▽千葉▽神奈川▽大阪▽兵庫▽福岡――の7都府県にある国公私立の小、中、高校、特別支援学校に勤務する教職員を対象に、7月10~26日に「心の職員室」のメンバーなどを通じて、インターネット上の回答フォームを使ったアンケートを実施した。有効回答は1203件。

表1:学校内の時間外勤務と持ち帰り仕事の合計が、過労死ラインを超える月80時間に相当する教員の割合

それによると、1日当たりの勤務日における在校等時間(学校内での時間外勤務)の平均時間は、小学校で2時間36分、中学校で2時間43分、持ち帰り仕事の平均時間は小学校で1時間8分、中学校で1時間16分だった。

持ち帰り時間も含めて、月当たり80時間超の過労死ラインに相当する時間外勤務をしていた割合は▽小学校(公立のみ) 57.0.%▽中学校(公立のみ) 62.8%▽高校 40.7%▽特別支援学校 40.8%――で、全体で56.2%を占めた(表1)。特に、若手や担任を受け持っている教員で、その傾向が強くみられた。

給特法の対象となる公立学校の主幹教諭・教諭で、在校等時間が月45時間を超えたのは60.3%だった。改正給特法により、今年度から、公立学校の教員には、在校等時間の上限を月45時間とする指針が定められているが、6割の教員が指針の上限を超えて勤務している状態にあることを示す結果となった。

また、学校再開後の業務について、どのくらい負担を感じているかを聞いた質問で「まあまあそう思う」と「とてもそう思う」を合計した割合が7割を超えたものには▽校内の消毒作業 90.1%▽マスク着用の指導 79.0%▽ソーシャルディスタンスの指導 88.5%▽子供の不安に向き合う 80.8%▽登校しない子供への対応 71.4%▽学習の遅れを取り戻す 79.7%▽学力格差の解消 77.8%▽家庭学習の準備とチェック 77.9%▽授業時間の確保 72.4%▽打ち合わせや会議 80.9%――があった。

表2:教員の疲労度と「子供の話をしっかり聞けなくなる」ことの関係

さらに同調査では、厚労省のストレスチェックの指標に基づいた質問項目を用いて、教員の疲労度を調べた。その結果、疲労尺度が高いとされた教員ほど「子供の話をしっかり聞けなくなる」傾向にあることなど、子供との接し方に影響を及ぼしている可能性が浮かび上がった(表2)。

「共育の杜」の藤川伸治理事長は「教員が疲れていると、子供の話を十分に聞いてあげられなくなる傾向がデータで示された。教員が子供の話を聞いてあげられないと、子供の行動面で深刻な影響を及ぼすことになる」と警鐘を鳴らした。

調査結果を受けた学校現場の状況について話した横浜市立日枝小学校の住田昌治校長は「教員は、感染症対策をしながら授業をしなければならず、主体的・対話的で深い学びが重視されている新学習指導要領に基づいた活動がやりにくくなっている。短い夏休みが明けて、調査したときよりもさらに教員のストレスや疲労は限界に達している。このままでは学校は危ない」と強調。抜本的な対策として、20人程度の少人数学級を段階的に実施することで、子供たちの学習の遅れやメンタルケアに早めに対応でき、一人一人の子供に教員の目が行き届きやすくなると提言した。

また、調査を第三者的な立場からコメントした酒井朗(あきら)上智大学教授は「先の見通せないストレスフルな状況で、教員がいつ倒れてもおかしくない状況にある。働き方改革はもちろん、Withコロナの状況が長く続くことを想定した少人数学級などの対策が必要だ。本来であれば新学習指導要領の全面実施を迎え、教員は研さんを高める時期にあるにもかかわらず、消毒作業などに時間を取られてしまっている。これでは教育改革が停滞してしまうのではないか」と懸念を示した。

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