早生まれの影響、どう配慮? 尼崎市のシンポで議論

兵庫県尼崎市は8月21日、同市が設置した「学びと育ち研究所」による報告会「エビデンスに基づいた教育政策を目指して」をオンラインで開催し、教育環境や家庭環境が子供の学力・健康に与える影響などを扱った研究について、有識者らが登壇して報告した。その中で、生まれ月による影響についての研究や現場で求められる配慮が議論された。

有識者の報告にコメントする尼崎市の松本眞教育長

冒頭、登壇した東京大学大学院の山口慎太郎教授は「たとえ経験豊富な先生といえども、世の中全体のごく一部についてしか知ることができない、見えていないという問題が現実的にある。個人の経験を拡張してできる議論には限界があるため、全体への影響を正しく見通すためには、全体像をつかむためのデータが不可欠」と、エビデンスに基づいた議論の重要性を訴えた。

山口教授は今年7月、生まれ月が長期にわたり能力形成に影響するという論文を公表したばかり。今回はその研究の共同研究者である慶應義塾大学の中室牧子教授が登壇し、尼崎市のデータをもとに、生まれ月が学力に及ぼす影響は学年が上がるにつれて小さくなるが、保護者がより時間をかけて勉強を見るなど、早生まれの不利を補填するための教育投資をしていることを示した。

ただ学力格差が縮小していく一方で、ものごとをやり抜く力や自分への自信、体格、教員や友人との関係など、非認知能力の格差は縮小しにくいことから、非認知能力との関連が指摘される将来の大学入学や賃金、地位などに影響を及ぼしうるという研究内容を紹介した。

その上で中室教授は提言として「早生まれの子供が入学時期を選べる」といった制度や、「生まれ月を補正した学力テスト」「出席番号や席順を生まれ月と連動させ、教員が生まれ月を意識するきっかけにする」といった工夫による支援を挙げた。

また「学びと育ち研究所」の所長を務める大阪大学大学院の大竹文雄教授も、尼崎市の行政データを用いた研究をもとに、早生まれの子供ほど「分かるまで努力する」「先生が自分のことを気にしてくれる」といった項目が低くなる傾向を指摘。「相対的に不利にある子供たちを勇気づけるような教育の仕方に注意していく必要がある」と訴えた。

尼崎市の松本眞教育長は「早生まれの子供たちへの対策については、ナッジ(人々の行動を促す刺激)を活用した部分について知恵を出していきたい」と応じた。

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