新型コロナウイルスの感染拡大による授業の遅れや消毒などへの対応に伴う教員の長時間勤務について、萩生田光一文科相は8月25日の閣議後会見で、「教員は使命感が強いから、結果として長時間労働になってしまっている実態は否めない部分があると思う」との現状認識を表明。「健康を害する可能性があるような事態まで、教員が追い込まれてはならない。校長や副校長など管理職がしっかり管理をしてほしい」と述べ、コロナ対策で教員が過度な勤務にならないよう、学校管理職に細やかな対応を求めた。

再開後の学校で教員の長時間勤務が広がっている状況について、萩生田文科相は「臨時休校に伴う授業時間の増加や、子供の健康観察、消毒作業など、学校の業務量が増大している現状は承知しているつもり」と述べた。
その上で、学校の負担軽減のため、文科省がとっている対策として、▽今年度2次補正予算で、教員の加配、学習指導員、スクールサポートスタッフの追加配置分として合計8万5000人分、310億円を計上。各自治体から8割に当たる6万7000人分の申請があり、すでに先月内示した▽8月6日付で衛生管理マニュアルを改訂し、過度な消毒は必要がないという目安を明らかにした。同時に、スクールサポートスタッフなどを上手に使い、朝の登校前に外部人材が学校の消毒を済ませている参考事例を示した――などと説明した。
長時間労働の実態については、「教員は、やっぱり使命感が強い。授業の遅れを取り戻さなくてはいけないなどとして、結果として長時間労働になってしまっている実態は否めない部分があると思う」と現状を認めた。続けて、「健康を害する可能性があるような事態まで、教員が追い込まれてはならない。校長や副校長など管理職がしっかり管理をしてほしい」と述べ、学校管理職に丁寧な対応を求めた。
また、「必要なマンパワーについては、しっかり予算の裏打ちをしてある。市町村教育委員会、都道府県教育委員会とよく連携して、外からのマンパワーをもっと積極的に使ってほしい」と、2次補正予算の未執行分を使って、外部人材を積極的に活用するよう促した。さらに、必要な外部人材が見つからないとの学校現場の声があることを踏まえ、「春先から決めてきた学校応援スタッフの紹介も引き続き行っている」と述べ、外部人材との連携を相談する窓口として学校応援スタッフのサポートを受ける方策も示した。
その上で教員にも、「子供たちは大事だが、教員が健康を害しては結果として子供たちにも影響が出てしまう。バランスをしっかり取りながら、努力してほしい」と、引き続き努力するよう要請。「必要な声は、黙っていないで、上げてほしい。予算は都道府県経由でいくので、一つ一つの学校現場と現場感覚が合っていないところが、1学期にはあったのではないか、と私も思っている。(自治体や教育委員会の担当者は)現場の苦労をちゃんとくみ上げて、必要な人や予算はしっかり当ててほしい」と話した。
長期休校から再開後の学校現場で教員の長時間勤務が広がっている実態については、NPO法人「教育改革2020『共育の杜』」が今年7月に7都府県の教職員約1200人を対象に行った調査で、小中学校の教員の約6割が、過労死ラインの目安となる月当たり80時間超の時間外勤務をしていた、との結果が出ている。全国都道府県教育委員会連合会などの教育団体も、萩生田文科相との意見交換で、教員の業務負担が増えている現状への懸念を伝えている。
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