少人数学級「30人未満」に異論なし 教育再生実行会議

ポストコロナの学校像を方向付ける政府の教育再生実行会議が8月25日、首相官邸で開かれ、注目されている少人数学級について、出席した委員から「少人数学級を進め、30人未満の学級にしてほしい」との意見が出た。これに対する異論や反対意見は出なかった。会議終了後に記者会見した萩生田光一文科相は「多くの人が方向性として共有できる課題ではないか。できることから速やかに行っていきたい、という意欲は持っている」と述べ、来年5月に予定されている教育再生実行会議の提言を部分的に前倒しし、少人数学級を来年度から段階的に進めるため、必要な予算要求を行う考えを明らかにした。

会議内容を説明する鎌田薫座長(前早稲田大総長)

会議では、安倍晋三首相が冒頭、「ポストコロナ期において、子供たちを誰一人取り残すことなく、学びを保障していくことが何よりも重要であり、こうした観点から、ICTの本格的活用による個別最適な学び、少人数による指導体制などの環境整備について、改めて検討する必要がある。また、ニューノーマル(新たな日常)における大学の姿や高等教育の戦略、その実現方策のほか、秋季入学や子供の育ちを社会全体で支えるための働き方についても検討を深める必要がある」などとあいさつした。

続いて、萩生田文科相が教育再生実行会議で議論する主な論点を説明。初等中等教育では、▽ニューノーマルを構築するため ICTの本格的活用により、子供たちを誰一人取り残すことのない個別最適な学びはどうあるべきか▽感染症対策、ICTの本格的活用のための、少人数による指導体制や環境整備はどうあるべきか――を挙げた。高等教育段階では、▽ニューノーマルにおける大学の姿とはどのようなものであるべきか▽グローバルな目線での新たな高等教育の戦略はどうあるべきか、それらを実現するために必要な方策とは何か――を検討するよう求めた。

また、9月入学(秋季入学)については、「大学と初等中等教育以下とでは状況が異なるため、分けて議論すべきではないか」と指摘。さらに、今年4月以降、コロナによる学びの保障を迫られる中、政府は就学年齢の後ろ倒しを前提に検討した点について、「解決困難な課題があり、現実的な選択肢とはならないと考えている」と表明。教育再生実行会議では、秋季入学導入のメリットと課題、大学の学事暦・修学年限の多様化、幼児教育の果たす役割や子供の発達段階を踏まえた教育内容・方法などを十分に考慮し議論を深めるよう求めた。

鎌田薫座長(前早稲田大総長)によると、協議では、初等中等教育について、▽少人数学級を進め、30人未満の学級にしてほしい▽ICT環境整備として、専任教員の定数化や、教員の体系的なICT研修、デジタル教科書に関する制約の緩和、オンライン授業のルール化、市町村が活用できるプラットフォームの構築が必要▽オンライン教育とオンライン以外の教育との関係をきちんと整理すべきだ▽履修主義か修得主義かの二項対立ではなく、個別最適な学びを実現する観点で考えるべきだ――などの意見が出された。

9月入学では、「初等中等教育と高等教育を分け考えるべきだ」との意見が出た一方、「分けてしまうと境目ができる。つなげて考えるほうがいい」という逆の意見もあった。また、9月入学による就学年齢の前倒しについては、「幼児に早めていくのでいいのか。幼児教育には独自の意味がある」と慎重な意見が出た。

こうした論点について、会議では、新たに設置される初等中等教育と高等教育の2つのワーキング・グループ(WG)で議論を深めることを了承し、それぞれのWGのメンバーを承認した。将来的な9月入学への移行については合同WGを別途開いて協議する。

少人数学級について説明する萩生田光一文科相

少人数学級の実現について、鎌田座長は「30人未満の学級を求める意見に、異論はでなかった」と説明。萩生田文科相は「与党でも公明党は早くから30人学級の提言をしている。多くの人が方向性としては共有できる課題なのではないかと期待している。できることから速やかに行っていきたい、という意欲は持っている」と述べ、30人学級の実現に意欲を示した。

来年度予算編成を踏まえた少人数学級の進め方については、「小学1年生はすでに35人が適用できるようになっているが、小学2年生から中学3年生まで8学年をいっぺんにやるのは、現実問題として来年度からは難しい」と指摘。「例えば、最終学年は少人数学級でしっかり授業をやるとか、その逆で、1年生は35人でスタートしているのだから、小学2年生を少人数でそのまま持ち上げられるようにすることも考えられる。予算要求の時期とも絡まってくるので、教育再生実行会議が同じ方向になれば、(来年度予算に関わる部分について)早めに方針を出すこともあっていい」と述べた。

また、来年度予算に関わる事項として、萩生田文科相は「今日の会議で、『(1人1台端末を)使いこなすためには専門的な知識を持った人たちが現場に入ってくれないと困る』とか、『現在の ICT支援員だけではうまく回せないのではないか』という不安の声もあった。そうしたことが教育再生実行会議から提言をされるとすれば、これも人員や予算の問題に関わる」と述べ、学校のICT環境整備についても、提言を前倒しして方向性を示す考えを明らかにした。

初等中等教育ワーキング・グループ 主な論点
【具体的な検討課題】

今度、どのような条件においても、子供たちを誰一人取り残すことなく学びを確実に保障するための方策や、ニューノーマル(新たな日常)における新しい学びの在り方等、今後の初等中等教育の在り方

【検討事項例】
1.  ICTの本格的導入を含めニューノーマルにおける新たな学びはどうあるべきか
    • ICTの活用や、対面と遠隔・オンラインのハイブリッド化による協働的な学びの深化、個別最適な学びの実現
    • ICTの活用により危機においても学びを継続するとともに、全ての子供たちの学びを確実に保障するための方策
    • デジタル教科書・教材・コンテンツの本格的活用に向けた方策
    • 個別最適な学びの実現に伴う修業年限の在り方、学びの複線化
2. 感染症対策、ICTの本格的導入のための指導体制や環境整備はどうあるべきか
    • 国内外の児童生徒の学びの保障のため、令和時代のスタンダードとしての「新しい時代の学びの環境の姿」とその中での少人数によるきめ細やかな指導体制の計画的な整備、ICTや関連する施設設備等の環境整備や、そのための財源の在り方
    • 個別最適な学びのための多様な教師集団の在り方、養成・採用・研修等を通じた1人1台端末環境等における教師のICT活用指導力の向上、ICT活用方法等の支援
    • 教育データの収集・分析・利活用の加速化に向けた方策
初等中等教育・高等教育の両ワーキング・グループで共通して検討が必要な事項
【検討課題】

秋季入学、学校・家庭・地域での子供の育ちを社会全体で支えるためのニューノーマルにおける働き方など、教育分野に留まらず社会全体で検討が必要な事項について

【検討事項例】
1. 秋季入学への移行について、どのように考えるか
①導入のメリットと課題、就職など社会との接続、社会のコンセンサス等
②大学における秋季入学の現状を踏まえた学事歴・修業年限の多様化
③上記①②の検討も踏まえつつ、初等中等教育段階における学事歴・修業年限の在り方の検討(就学年齢・学齢区分の在り方や就学前教育への影響を含む)
※大学と初等中等教育以下とでは状況が異なるため、分けて議論すべきではないか
※秋季入学については、本年4月以降の政府の検討においては、就学年齢の後ろ倒しを前提に検討されたが、国際的な就学・卒業年齢の遅れや待機児童の増加など解決困難な課題があった。これに対し、前倒しすべきとの意見もある。これらを踏まえ、幼児教育の果たす役割や、義務教育における子供の発達段階を踏まえた教育内容・方法等の観点を十分に考慮し、議論を深めるべきではないか。
2. 学校・家庭・地域での子供の育ちを社会全体で支えるためのニューノーマルにおける働き方などについて、どのような取り組みが考えられるか
    • 学校・家庭・地域における教育に保護者をはじめ大人が関わっていく方策について、テレワーク等による新たな働き方やワーク・ライフ・バランスの推進も含めた在り方
    • 子供たちの創造的な活動を支援するため、学校・家庭・地域や企業の取り組みの在り方
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