立正大学淞南高校(島根県松江市)で運動部の部員を中心に発生した新型コロナウイルスの大規模クラスターについて、松浦正敬・松江市長は9月10日の定例記者会見で、「これ以上の感染拡大の恐れはない」と、収束を宣言した。松浦市長は「迅速な療養体制の確立やPCR検査の実施が、市中感染の防止につながった」と対応策の成果を強調する一方、高校への誹謗(ひぼう)中傷が社会問題になったことについて「誤った情報に基づいた判断がSNSで拡散される。これが一番問題だ」と述べ、正しい情報に基づいた行動をとるよう呼び掛けた。
大規模クラスターは8月8日から翌9日にかけ、立正大学淞南高校で寮生活をしているサッカー部員を中心に生徒と教員合わせて91人の感染が判明。他の生徒や教職員を含む濃厚接触者1009人にPCR検査を実施したところ、25日までに108人の陽性が確認された。その後、新規の感染者が発生していないことや、感染者は全員、9月4日までに退院、療養解除となっていること、濃厚接触者の健康観察期間も9日で終了したことなどから、収束宣言に至った。
松江市では、クラスター発生直後に、国に対しクラスター対策班の派遣を要請。現地調査に基づく中間報告で、▽県外への遠征活動やオープンキャンパス、帰省などの県外移動、県外からの生徒受け入れの機会にウイルスが持ち込まれた可能性があること▽寮生活で密を避けたり、換気を徹底したりするなどの感染予防策に隙が生じていたこと――などが指摘された。
また、想定を超える大人数の感染が確認されたことを受け、症状のある感染者を優先して入院とし、無症状の感染者については、県や同校と協議した上で、寮を療養の場として活用。陰性が確認されたサッカー部員の寮生は県立青少年の家サン・レイクに移り、外出自粛期間中の健康観察を続けるなどの対応が取られた。
同校では、9月1日から分散登校で学校を再開し、7日には通常授業に戻っている。
一連の対応について、松浦市長は「大規模クラスターが発生し、市中感染になることを一番心配していた。できるだけ早く関係者にPCR検査を行い、これ以上の感染拡大を防ぐことに全力を挙げた。県だけではなく民間にも依頼して、1000件以上のPCR検査を1週間で終えられたことが、市中感染を防ぐことにつながった」と振り返った。
一方で、SNSを中心に高校への誹謗中傷が起きたことについては「誤った情報に基づいた判断がSNSで拡散する。これが一番問題だと思う。市民の皆さんには、正しい情報に基づいて行動することをお願いしたい。自分は絶対に感染しないという立場で、感染した人を排除したり非難したりすることは避けてもらいたい。感染の可能性は常にあることを認識することが大事だ」と呼び掛けた。
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