答申中間案「少人数学級の明記」求める 中教審特別部会

ポストコロナ時代の新しい学びの姿を検討している中教審の初等中等教育分科会「新しい時代の初等中等教育の在り方特別部会」は9月11日、第13回会合をWEB会議形式で開き、今月末に提示する中教審答申の中間まとめ素案について協議した。素案では、前回会合で示された骨子案を巡る議論を受け、学校の健康診断の電子化や教員の人材確保といった項目が追記された。委員からは、9月8日の教育再生実行会議で来年度からの段階的な導入を検討することで一致した少人数学級について、明確な形で答申に盛り込むべきだとする意見が相次いだ。特別部会では、今回の議論を踏まえて中間まとめ案を作成、同28日に開く上部組織の初等中等教育分科会に報告する。

「教員の確保なしに実現しない」
会議を進行する座長の荒瀬克己・関西国際大学学長補佐

少人数学級について、中間まとめ素案では、「新時代の教室環境に応じた指導体制等の整備」の一環として、1人1台端末を使った効果的なICTの活用や、新型コロナウイルス感染対策のため「教室などの実態に応じて少人数編成を可能とする」とした。また人口減少地域では、少人数を生かしてきめ細かな指導を充実させることが必要だと指摘した。

委員からは「教育再生実行会議では、少人数学級は個別最適な学びを支える指導体制として検討されている。感染対策などとは別の項目を立てて、書き込むべきではないか」、「少人数教育は教員の確保なしには実現しない。今後、少人数教育のためにますます教員の人数が必要になる、という記述を補強してほしい」との意見があった。

学校現場の校長からは、少人数で算数の指導を行った経験から「少人数ならば優れた児童への指導もでき、効果は高いと実感している。少人数によるきめ細かな指導体系の充実について明記してほしい」との要望が出た。

また、1人1台端末などのICT活用の観点から「今後はAIの力を借りながら苦手分野を克服したり、得意分野を伸ばしたり、自己調整していく能力が伸びてくる。それを教員が伴走者として支えていくわけで、丁寧な指導ができるようにするためには少人数学級が望ましい」と、少人数学級の意義を改めて強調する声もあった。

健康診断の電子化も追記

今回示された中間まとめ素案では、前回会合で示された骨子案に、委員の意見などを踏まえて追加や修正された内容も多い。

「新時代の学びを支える環境整備」としては、「学校健康診断の電子化と生涯にわたる健康の保持増進への活用」が新たに追記された。「政府全体の取り組みとして進められているPHR(Personal Health Record、生涯にわたる健康情報を、マイナンバーなどを用いて本人や家族が把握できるようにする仕組み)の一環として、自身の健康づくりや医療機関受診時の円滑なコミュニケーションに活用できる環境の整備を進める」との内容を加えた。

ここでは学校健康診断を効率化し、学校の働き方改革につなげる狙いもあるが、委員からは「児童生徒が生涯にわたって自分の健康づくりを考えられるという、子供中心の記述にすることが望ましい」と、PHR本来の目的を主眼とするよう求める意見があった。

また、「Society5.0時代における教師及び教員組織の在り方」には、「教師の人材確保」という項目が追加された。近年、採用倍率の低下から教員の確保に苦慮する自治体が増えている実情を踏まえ、あらゆる手だてを尽くして学校の働き方改革を進めることや、外部人材の活用、教職の魅力向上策の収集や発信などを盛り込んだ。

委員からは「教員にとっては、少人数学級で指導できることが創造的な指導、創造的な学びを実現するための大きな条件になるのではないか」と、ここでも少人数学級の意義を指摘する声があった。

素案にはこのほか、8月末に有識者会議で来年度から小規模で試行する方針が示された全国学力・学習状況調査のCBT化や、特別支援学校の在籍者の増加による教室不足への対応、各学校段階を通じたキャリア形成などが新たに盛り込まれた。

《中教審答申中間まとめ素案のポイント》
【タイトル】

誰一人取り残すことのない「令和の日本型学校教育」の構築を目指して
~多様な子供たちの資質・能力を育成するための,個別最適な学びと、社会とつながる協働的な学びの実現~

【総論】
    • Society5.0に向けて変化を前向きに受け止め、社会や人生、生活を、人間ならではの感性を働かせてより豊かなものにする資質・能力を育成することが求められている。
    • 新学習指導要領の全面実施、学校における働き方改革の推進、GIGAスクール構想など新しい動きが出てきている。
    • 一方で、児童生徒の多様化、高校生の学習意欲の低下、教員の長時間勤務による疲弊、情報化への対応の遅れ、新型コロナウイルス対策などが課題になっている。
    • これから求められる資質・能力の育成には、ICTも活用した「個に応じた指導」「協働的な学び」が重要である。
    • 一斉授業/個別学習、デジタル/アナログなどの二項対立でなく、どちらの良さも適切に組み合わせるべきである。
    • 学校現場に次から次へと新しい業務をさせるのではなく、学校現場が力を存分に発揮できるよう役割を精選。あわせて、人材確保や環境整備も進める。
【各論】
1.  幼児教育の質の向上
    • 小学校教育との円滑な接続、処遇改善による人材確保、家庭への支援など
2. 9年間を見通した新時代の義務教育
    • 小学校高学年への教科担任制の導入、キャリア教育の充実、補充・発展的な学習指導、カリキュラム・マネジメントの充実、不登校児童生徒、いじめ・虐待への対応など
3. 新時代に対応した高校教育
    • スクール・ミッションとスクール・ポリシーの策定、特色ある学科の設置、革新的職業人材の育成、STEAM教育の推進など
4. 新時代の特別支援教育
    • 早期からの相談・支援、特別支援学級と通常の学級の子供が共に学ぶ活動の充実、教室不足への対応、教員の専門性向上など
5. 増加する外国人児童生徒などへの教育
    • 日本語指導のための教員の確保や体制づくり、就学状況の把握、進学・キャリア支援、異文化理解への支援など
6. ICTを活用した学び
    • 対面指導と遠隔・オンライン教育を組み合わせた指導、学習履歴(スタディ・ログ)の活用、全国的な学力調査のCBT化、デジタル教科書・教材の普及、ICT人材の確保、病気療養・不登校への活用など
7. 新時代の学びを支える環境整備
    • 大きいサイズの机など教室環境の整備、少人数編成、学校健康診断の電子化など
8. 人口動態などを踏まえた学校運営や学校施設
    • 人口減少地域の学校配置、施設の維持管理、ICTを活用した遠隔合同授業、小中一貫教育の推進など
9. Society5.0時代の教師及び教員組織
    • 教師のICT活用指導力の向上、多様な知識・経験を有する外部人材の活用と免許状の柔軟化、教師の人材確保など
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