学習評価とICTを議論 データ可視化でより深く、国研

GIGAスクール構想で学校現場の1人1台端末整備が一気に進む中、国立教育政策研究所(国研)は9月15日、「学習評価」を中心に「高度情報技術の進展に応じた教育革新」について、第一線の研究者や文科省の担当者らが集中的に討議する公開シンポジウムをWEB上で行った。報告では、ICTを学校教育の学習に取り入れることで、子供たちが学んでいくプロセスをデータによって可視化することができるようになり、これまでよりも深い学習評価が可能になっていくメカニズムを説明。学校現場が今後直面していくICTを使った学習評価の在り方について、認知・観察・解釈による「評価の三角形」を軸として考えていく方向性を示した。

共通テストへのCBT導入イメージを説明

大学入学共通テストにCBTを導入した場合のイメージを説明する白井俊・大学入試センター試験研究統括補佐官

シンポジウムではまず、文科省と大学入試センターの担当者が、情報技術の進展が教育に与える影響について最近の状況を説明した。滝波泰・初中局教育課程課長は「教育の情報技術が飛躍的に進むときにコロナ禍が起き、学びの保障が大きな課題になった。大事なことは、いろいろな取り組みが学習指導要領の実現と相まって進むことだ」と強調。桐生崇・初中局学びの先端技術活用推進室長は「GIGAスクール構想が進み、子供たちの教育データが取れるようになるが、そのデータの具体的な使い方については、まだ合意が形成されていない」とした上で、教育データ標準の枠組み作りに向け、学習指導要領のコード化に取り組んでいる現状を説明した。

浅原寛子・総合教育政策局学力調査室長は、全国学力・学習状況調査のCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)化について、「解答に加えてログも把握することによって、児童生徒のつまずきの把握など、多角的な分析が可能になる」として指導改善効果が期待されるほか、「印刷コストの低減」「結果が出るまでの時間短縮」などのメリットを挙げた。

白井俊・大学入試センター試験研究統括補佐官は、大学入学共通テストにCBTを導入した場合のイメージについて、「試験会場だけでなく、AIを使った監視装置を組み合わせることで、自宅や地域のテストセンターでも受験が可能になる」と説明。英語リスニングでニュース動画を見て解答したり、情報でプログラミングを実際に動かして見ながら解答したりするなど、これまでの紙ベースの試験では問えなかった学力の測定ができることや、項目反応理論(IRT)を使えば等化ができるため、異なる試験相互の比較が可能になることなどを説明した。同時に、克服すべきハードルとして、コスト面やネットワークと機器のトラブル、パソコンのスペックや回線速度の統一など公平性への配慮を指摘した。

「評価の三角形」による多層的なシステム

基調講演では、ジェームズ・ペレグリーノ米イリノイ大学シカゴ校特別教授が高度情報技術を使った学習評価システムについて報告した。

ペレグリーノ特別教授はまず「生徒が知っていることを、本当に知ることは不可能である」として、「評価とは、常に証拠から推論するプロセス」だと指摘。評価の在り方を考えるアプローチとして、児童生徒が知識を表現し、能力を伸ばすことを説明した理論、モデル、データによる「認知」、生徒のパフォーマンスをみる課題や状況を示す「観察」、エビデンスの意味を理解するための方法である「解釈」の3つによる「評価の三角形」を説明した。

その上で、評価システムを設計する際には、「一貫性」「包括性」「連続性」を踏まえた、多層からなる統合的なシステムが必要だと強調。「評価の三角形」の三角形に、「教室の評価」「学校や地区の評価」「州レベルの説明責任評価」を立体的な軸として加えた三角錐(さんかくすい)による多層的な評価システムの解説図解を示した=図参照。

ジェームズ・ペレグリーノ米イリノイ大学シカゴ校特別教授が説明した評価システムの解説図解

これに続き、シンポジウムでは、「評価の三角形」をベースにしたパネルディスカッションが行われた。

齊藤萌木・東京大学高大接続研究開発センター特任助教は、従来の評価が一定の仮説に基づいて行われており、そうした評価の在り方がICT機器の活用によって学習履歴(スタディ・ログ)を取ることによって、どのように変化していくか、授業中の児童生徒の発話を例に説明した。

「たくさん話しているAさんの方が、あまり話をしないBさんよりも、主体的に課題に取り組んでいるという仮説がある。ところが、子供たちが発話している内容についてデータを集めてみると、Aさんは発話が多くても内容に関する発話は10%なのに、Bさんは発話が少なくても内容に関する発話が68%を占めていた。結果として、主体的に内容を理解しようとしているのは、発話の少ないBさんだった」と指摘。「学び方は多様なので、たくさん話している子の方が主体的に課題に取り組んでいるとは限らない。データの可視化によって、より深い評価が可能になってくる」と述べた。

齊藤特任助教は、高度情報技術の導入に伴う評価の注意点として、「取れるデータが豊かになっても、そのデータの向こうにどういう認知過程があるのか、評価に関わる人の間で『丁寧な検討』と『共通認識』を作っていく必要がある」と話した。

白水始・国立教育政策研究所総括研究官は「(子供たちが発話する)話量も、学習成果との相関を見ることで『聞きながら学んでいる児童生徒』の存在が見えてくる。そうすると、学びの見方が変わる」と指摘。高度情報技術を学校現場に生かすことによって「学びの場を問い直し、次のデザインに役立つ評価にしていきたい」として、カリキュラム・マネジメントや授業の改善に生かすべきだと述べた。

シンポジウムの最後にコメントした堀田龍也東北大大学院教授は「議論の中で『学習評価は目標の裏返しだ』との指摘があった。いまの時代にどういう子供たちを育てるのか、子供たちにどういう能力を求めるのか、という教育の目標について、このシンポジウムで議論したのだと思う」と総括した。

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