9月入学「国民に混乱や心配」と反省 萩生田文科相会見詳報

9月16日に発足した菅義偉内閣で再任された萩生田光一文科相は同日午前、安倍内閣が総辞職した臨時閣議後に記者会見を行い、約1年間の任期中に起きた出来事を振り返るとともに、やり残したことを新たな任期の課題として挙げた。新型コロナウイルスの感染拡大による学校の一斉休校については、「過去の経験に基づいた恐怖心からの判断だった。結果として、子供たちを守ることができ、国民の意識を変える成果があった」と総括。9月入学(秋季入学)論議については、「国民の賛否が分かれ、混乱や心配を与える事態になってしまった」と反省の弁を述べた。トピック別に編集して詳報する。

新型コロナウイルスの感染拡大
「一斉休校は恐怖心からの判断。再開できなかったのは極めて残念」

任期中の出来事を振り返りながら質疑に応じる萩生田光一文科相

昨年9月に就任し、その直後から、体験したことがない自然災害などで学校現場が継続できなくなるような事態が生じたし、就任直後で深くいきさつが分からなかった課題について、私が新たな判断をしなくてはならないこともいくつかあった。率直に言って、『大変な時に文部科学大臣にしていただいた』という思いからスタートした。

この1年間、職員とも力を合わせて、一つ一つの課題に『結果を出そう』と試みてきた。新型コロナウイルスの感染拡大では、3月の全国一斉休校という大きな政府全体の方針によって、教育の機会が奪われてしまう事態になった。これをなんとか取り返そうと、学びの保障でさまざまなパッケージを作り、地方自治体とも連携して取り組んできたつもりでいる。

高校生や中学生が頑張ってきた文化やスポーツの部活動の成果を発表する機会が失われてしまったことに対して、直ちに代替大会の実施をお願いした。全国でその思いを共有してもらい、十分ではないけれども、自分たちの歩みを確認できる、そういう大会を全国でいろいろな種目で行ってもらったことは、良かったなと思っている。

(学校の一斉休校が)科学的に有効だったかどうかは、もう少し先にならないと検証できないと思う。あの時の判断は、その前に新型インフルエンザが世界的に流行し、日本国内でも50万人の感染者が出た時、クラスターのほとんどが学校から始まった、という経験に基づいていた。恐怖心からの判断だったと思う。

未知のウイルスなので、私は当時、率直に言って(一斉休校という判断に)どう反論するかという知見も持っていなかった。果たしてそこまでやる必要があるのかなと思ったのは正直な気持ちだった。

ただ、結果として、全国一斉休校によって、学校のクラスター化を防ぐことはできたと思う。その後の世界各国の対応を見ていると、日本がやったことによって、世界でも一斉休校がトレンドになった。

そういった意味では、初期段階で子供たちを守ることはできたのではないか、と私は思っている。同時に、(一斉休校によって)コロナに対して、ものすごく国民の意識を変えた。手洗い、うがい、マスクをすることが本当にマストなんだと、みんなが共有できた。この啓発は非常に大きな成果があったのではないかと思う。

私は(全国一斉休校に踏み切った)当初は、2週間後に春休みが来る予定だったので、春休みを前倒しして学校を休み、必要とあれば春休み中に授業を補えばいいのではないか、という判断で(一斉休校を)了解した。けれども、その後、全国的に感染が拡大してしまい、学校を再開できなかったことは極めて残念。

何としても、残された時間で子供たちの学びをしっかり取り戻し、保障する。この時代の子供たちが「学校でそれを教わっていない」「自分は分からない」といった不利益を生じないように、自治体とも協力して、学校現場とスクラムを組んで、3月31日まで、最後まで努力をしたい。そのことを改めて約束したい。

大学入学共通テスト 英語民間試験の活用延期
「公平にチャレンジできる環境が大事。多様な試験制度があっていい」

大学入試では、(大学入学共通テストにおける)英語民間試験の活用延期、記述式問題の先送りを決断した。準備していた高校生には大変迷惑を掛けることになった。これをどういう形で大学入試に活用するか、いま(「大学入試のあり方に関する検討会議」で)検討している。

こんなこと(新型コロナウイルスの感染拡大)になるとは思っていなかったが、結果的には、もし英語民間試験の活用実施に踏み切っていれば、逆に試験が受けられないという事態もあった。そういう意味では、後付けだけれども、当時の決断はそれなりの意味はあった、と思っている。

私自身は受験生が、公平に自分の能力をチャレンジできる環境が大事だと思っている。いま日程的には遅れているけれども、しっかりした方向性を出していきたい。

(問題点については)いま検証をやっているが、大学にはアドミッションポリシーが認められている。例えば、私立大学だったら建学の精神があって、自分の学校にはどういう能力の、どういう生徒を取りたいか、大学が自由に決めることができる。それなのに(大学入学共通テストのような)国の制度を頼らないといけないのか。私が(文科相に)就任した時に、一番持っていた違和感だった。

要は、各大学は、いい試験問題を作ったり、いい試験制度で生徒を面接したり、あるいは、多様な高校時代の活用をしっかり目配りをしてあげて、「ぜひ、うちの学校にきてほしい」と思う学生を採ってもらうような仕組みができたら一番いいのではないか、と思っている。

英語4技能や記述式の能力を高めることが大事だというのは、日本全体の課題。これは否定せずに、これからも伸ばしていきたい。だが、それをどう評価するかという仕組みまで、国が一つだけ方向を決めるのではなく、多様な試験制度があってもいいのではないか、と思っている。この点については、今後、議論を見守りながら、良い答えを出してもらいたい。

9月入学(秋季入学)
「国民に混乱や心配を与えた。高等教育機関は3月卒業にこだわる必要はない」

9月入学という学期の在り方について、後戻りの9月入学を推奨したわけではない。今年は新型コロナウイルスの感染拡大でこういう事態(長期間の休校)になったので、「学びの保障をしたい」と考えて、議論に供した。けれども、「国論を二分した」と言ったら大げさだが、賛否が国民の中で分かれ、混乱や心配を与える事態になってしまった。

将来を考えると、義務教育の小学校や中学校をどうするかは慎重に考える必要があると思う。けれども、高等教育機関などは3月卒業、4月入学にこだわる必要はないのではないかと思っており、教育再生実行会議のワーキンググループで議論をキックオフしたところ。日本の学期制度の在り方については、引き続き議論してほしい。

少人数学級
「安倍内閣の最後の意思。持続可能な制度にしていきたい」

(少人数学級の議論の舞台となっている)教育再生実行会議を続けていくことについて、(菅官房長官=当時=から文科相再任の連絡を受けたときに)約束はない。ただ、私の希望的な思いで、安倍内閣を継承する上で、大事な一つの項目なので、改めて(文科相に)就任したら、申し入れをしたいと思っている。

当然ながら閣議決定で、しっかりとした位置付けをしなければ効力を発しないので、そういった手続きができるように努力したい。

少人数学級は、「安倍内閣の教育行政の最後の意思」として(教育再生実行会議が来年度予算編成過程での検討を求めた合意文書を作り)、本部長である安倍晋三首相が了解したものであり、次の内閣にも引き継ごうと確認している。その決定通りに行動していきたい。

教育再生実行会議のメンバーについては、2つのワーキンググループを設置して、まだ1回ずつしか会議をやっていないし、専門的な知見を持った素晴らしい人たちに入ってもらったので、同じような構成で会議をやることになれば、改めて推挙させてもらいたい。

少人数学級については、(教育再生実行会議で)方向性は決めることができた。(再任されて)1年もし時間をいただくとするならば、将来に向けて持続可能な制度にできるようにしていきたいと思っている。

特別支援教育
「全国的に状況が変わってきている。考え直していかなくてはいけない」

今まで設置の明確な基準を持っていなかった、いわゆる障害がある子供たちに対する特別支援の在り方は、今までの概念では対応できないぐらいに、全国的に状況が変わってきていると思う。特別支援学校の設置、特別支援学級の在り方、そこで働く教員の確保は、今までの義務教育の在り方と違う意味で、しっかり考え直していかなくてはいけない。深掘りをしていきたい。

GIGAスクール構想
「ハードを整備して終わりではない。指導者の養成などに取り組む」

GIGAスクール構想の下で、(学校教育の)ICT 化を進めることは、あらかじめ決まっていたが、コロナの影響もあって、結果として、今年度中に全小中学生に1人1台の端末整備という方向性を示すことができた。ただ、これはハードを整備して終わりではない。今後、当然ながら、指導者の養成とか、ICT活用の恒常化とか、こういったことにも取り組んでいかなくてはならない。

働き方改革
「給特法の改正が成立。コロナの状況を何としても乗り越えていきたい」

国会では昨年12月に給特法の改正が成立した。学校の働き方を変えていかなければ、魅力ある職業として教員を選択してもらえないのではないか、との危機感から、一歩を踏み出した。本当ならば、今年から少し余裕のある学校の働き方がスタートするはずだったのだけれども、今は特別なコロナの状況で、教員にさらなる負担が強いられている。ここは是非、お互いに頑張ってもらい、何としても乗り越えていきたい。

その先には、学校の先生が専門性の高い、先生でなくてはならない仕事に専念できるような学校環境を、しっかり構築をしていきたい。

科学技術と教育
「科学技術を教育現場で活用することが極めて大事。大きな方針を定めたい」

科学技術の分野では、「吉野彰・旭化成名誉フェローがノーベル賞を受賞し、授賞式に同席したこと」「8年ぶりにスーパーコンピューター『富岳』が世界ランキング1位を取り戻すことができたこと」「アルテミス計画に参加することになって、宇宙へさらなる一歩を踏み込むこと」があった。

日本の持つ科学技術を教育現場で活用するのは、極めて大事なこと。例えば、今までは高等教育機関にしか開放してなかった高速通信インフラ「SINET」について、来年度以降は小学校と中学校でも使えるようにした。世界第1位の計算能力を持つ「富岳」も、研究者のための特別のツールではなくて、国民共有の財産だという概念で、高校生のコンテストを行っているし、中学生や小学生の研究対象として、時間があれば、開放することを前提にしている。科学技術とは離れるが、来年のオリンピックまで貸し出しをしないとしていた国立競技場も過日、高校生や中学生、小学生にも走ってもらうことにした。

国が持っている施設は、省庁のものでもなければ、特別な方のものでもない。国民に開放して、それによってさらなる成果を得るための施設だと思う。ややもすると行政は、大事なものはすごく大事にして、なるべく使わないことになってしまう。けれども、そうではなくて、やっぱり大いに使ってもらって、初めて意義があると思う。

科学技術の分野も、発想を変えて、ぜひ教育現場で使えるものは、どんどんこれからも使っていく。これは(これからの任期で)大きな方針を定めていきたい。

将来を見据えて、(GIGAスクール構想で)突然、学校のICT整備が加速したが、ハードが足りないとか、指導者が足りないという課題もある。人材ともセットで準備をしなければいけない。これからAIや量子コンピューターの時代になれば、この大量のデータを扱うデータサイエンティストが必要になるが、日本国内には非常に少ない人数しかいない。

高等教育機関では、時代の変化に合わせて、それに対応できる人材育成をやってもらわなければいけない。何十年前に作った学部で、何十年前のノートで、同じ授業が延々と続いているという日本の大学は、いろいろな意味で目を覚ましてもらい、新しい時代に入ってほしい。そのための努力も併せて行っていきたい。

次のニュースを読む >

関連
関連記事