個別最適化学習「教員の支援不可欠」 実行会議で指摘

政府の教育再生実行会議は9月24日、ポストコロナ時代の学校教育の姿を議論する初等中等教育ワーキング・グループ(WG)の第2回会合を開き、ICTの本格導入を含めた新たな日常(ニューノーマル)における新たな学びについて、集中的に議論した。会議では、臨時休校期間中にICT活用で児童生徒の学びの保障につなげた自治体や私立学校の事例が紹介されるとともに、個別最適化学習について「主体的に学べない子供が脱落する恐れがある」「教員によるきめ細かな支援が不可欠」といった専門家の指摘が出た。出席者からは「検証に必要なデータが不足している」との声が上がった。

初等中等教育WGで発言する萩生田光一文科相(右)

会議では冒頭、萩生田光一文科相があいさつを行い、菅義偉首相が安倍晋三内閣で設置された教育再生実行会議の存続を了承し、教育分野でのデジタル化への対応を深く議論するよう指示した経緯を説明。「新型コロナウイルス感染症を経験する中で、デジタル化への対応を含め、新たな学びに関する方向性を打ち出すことは、新体制でも引き続き取り組むべき重要課題と考えている」と議論の継続を求めた。

学校現場へのICT導入が進んでいる事例として、長谷部健・東京都渋谷区長が同区の取り組みを紹介。臨時休校期間中に、ICTを活用した双方向型オンライン学習として、児童生徒が自宅で小中学校の教員から学習課題の提示や学習支援を受けた状況や、「三密」の回避を図った分散登校期間中に、対面指導とオンラインによるライブ配信を組み合わせるハイブリッド型の授業として、1クラスを分割して複数のクラスで同時に授業を行った様子などを説明した。

長谷部区長は、GIGAスクール構想を実現していくための課題として、▽導入コスト=端末調達や校内LAN整備、職員の人件費など▽運用コスト=自治体単位の個別調達のため非効率▽学習者用デジタル教科書=データ規格の不統一▽スマートスクール連携=事例がない▽教室環境など施設面の課題=机が狭い――といった点を挙げ、渋谷区では今後、教育ビッグデータを活用し、エビデンスに基づく教育改革を進める考えを示した。

続いて、溝上慎一・桐蔭学園理事長が、政府の緊急事態宣言が出されていた今年4月と5月に、以前から整備していたiPadを使って自宅学習をしていた生徒と双方向型オンライン学習の環境を提供した経験などを紹介。その上で「個別最適な学びは良いことばかりではない。これまで以上に子供たちに主体的な学びを求める動きが加速すると、主体的に学ぶことができない子供は脱落する可能性が高い」と指摘、子供たちへの支援を充実させる必要を訴えた。

堀田龍也東北大大学院教授は、臨時休校期間中に学校が課した家庭学習の状況や、GIGAスクール構想によるICT環境整備の見通しなどを説明。今後、ICTを活用して個別最適な学びを実現するためには「子供たちが個別最適な学びを自分で推進し続ける力」が必要であり、そのためには「教員によるきめ細かな支援が不可欠である」と結論付けた。

議事内容をブリーフした佃和夫主査(三菱重工業特別顧問)によると、こうした教育現場でのICT活用について議論が集中。「オンデマンドで事前に用意された教材をみる学習方法、双方向によるオンラインでの授業、教員による対面指導の3つがある。対立したものとして捉えるのではなく、それぞれ定義と効用をきちんと明確にした上で、3つのハイブリッド型を考えていく必要がある」との意見が出た。

初等中等教育WGの議論を説明する佃和夫主査(三菱重工業特別顧問)

また、ICTを活用した個別最適化学習と少人数指導について、「小さな規模で試しながらデータで検証し、好事例を広げていくべきだ。少人数指導は、単に児童生徒の数を減らすだけではなく、どういう形で少人数にするかが重要になる。例えば、ICTを使って他者と自己を相対化する視点を持ちながら、少人数学級の施策を進めるべきだ」との指摘もあった。

履修主義と修得主義のベストミックスを求める意見では、「修得主義をあまりにも推し進めすぎると、教育格差の拡大を図ることにならないか。修得主義を取り入れながらも、修得できなかった生徒のケアを合わせて考えながら施策として進めていくべきだ」との問題提起が行われた。

このほか、「個別最適化学習の議論をするとき、学校間の格差や(家庭の貧富など)社会経済的な状況がどこまで影響するのか、検証に必要なデータがあまりにも不足している」としてエビデンスに基づいた考察を深めるよう求める意見や、「どこの自治体でも共通の学びが保障できるよう、国がシステムを考えるべきだ」との指摘も出た。

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