教科書は「原則デジタル」検討開始で一致 3閣僚会合

教育のデジタル化について意見交換を行った萩生田光一文科相、平井卓也デジタル改革相、河野太郎行政改革相の3閣僚会合で、GIGAスクール構想による小中学生の1人1台端末の整備を踏まえ、教科書は近い将来、原則としてデジタル教科書に移行し、無償化の対象とするよう求める要望が出され、検討を始めることが分かった。萩生田文科相と平井デジタル相が10月6日の閣議後会見で明らかにした。デジタル教科書の価格引き下げを図る一方、紙は教材として位置付けることも協議する。また、平井デジタル相が家庭を含めたオンライン学習を授業時数にカウントするよう求めたのに対し、萩生田文科相は「学校に来なくても全ての授業がオンラインで代替できるというのは、今の段階では考えていない」と反論。1人1台端末の整備を終えた後に、改めて検討する方向になった。

3閣僚会合について説明する萩生田光一文科相

3閣僚会合は10月2日、内閣府にある平井デジタル相の執務室で、事務方が加わらない、政治家同士による意見交換として行われた。菅義偉政権が看板政策として掲げているデジタル社会の推進について、平井デジタル相、河野行革相が関係閣僚と協議する「2on1」の初会合で、萩生田文科相との間で教育分野のデジタル化について具体的な政策課題を議論した。

デジタル教科書

萩生田文科相の説明によると、議題となったのは▽個別最適な学びの実現に向けた遠隔・オンライン教育の在り方▽学校の端末環境も含めた、地域全体としてのネットワーク環境整備の在り方▽デジタル教科書の導入に係る課題▽英語教育の在り方▽全国学力・学習状況調査のCBT化を実現するためのデジタル環境の整備▽学習データなどを効果的に活用するための制度上の課題――など。いずれも、GIGAスクール構想による小中学生の1人1台端末の整備を前提としている。

席上、平井デジタル相が「デジタル教科書をなぜもっと積極的に使わないのか」と問題を提起。萩生田文科相は「現在の教科書無償化の法的な根拠になっているのは、紙の教科書のみ。デジタル教科書を使うとすれば、自治体あるいは利用者が購入しなくてはならないという問題がある。また、検定教科書が数多くあるが、デジタル教科書を同時に発行している教科書会社には限りがある。このため、デジタル教科書に移行したくても、自分たちが選択している教科書会社では、全ての教科でそろっていない可能性もある」と現状の課題を説明した。

これに対し、平井デジタル相は「せっかく1人1台端末が整備されるのだから、教科書はデジタルに移行していき、紙の良さも残す。今は紙を無償化対象にして全て児童生徒に配布しているが、これ(無償化対象)をデジタル教科書に変えて、紙を教材的に残す方法も一つの考え方としてあっていいのではないか」と提案。萩生田文科相は「それは大いにデジタル庁でも検討してもらいたい」と応じ、文科省とデジタル庁で検討を始める考えを示した。

デジタル教科書を巡るやり取りについて、平井デジタル相は閣議後会見で、「私からGIGAスクール構想で1人1台端末が配備されることを前提に、教科書については原則デジタル教科書にすべきではないか。それに伴い、現行の教科書制度の見直しを提起した」と説明。見直すべき制度の例として、各教科の授業時数の 2分の1未満に設定されているデジタル教科書の使用基準を挙げ、「私から見ると、これは全くナンセンスだ」と述べた。

また、デジタル教科書が紙の教科書よりも割高になっている現状について、平井担当相は「価格の問題がある。紙よりも(デジタル教科書が)より数段高くなるようなことは、われわれから見るとちょっと考えられない。このハードルは、何とかしなきゃいけない」と指摘し、デジタル教科書の価格引き下げに取り組む考えを示した。

遠隔・オンライン教育と授業時数

義務教育段階の遠隔・オンライン教育を授業時数に含めるかどうかについても、3閣僚会合で取り上げられた。平井担当相は、教育新聞などのインタビューで、登校を原則としている義務教育段階においても、自宅でオンライン学習した分を授業時数に含める可能性を考えるべきだ、と指摘している。

萩生田文科相は「遠隔(オンライン)授業そのものを否定するものではないが、教育の発達段階によってその中身は変えていくべきで、遠隔授業も全て学校の(対面)授業と同じようにカウントするのは、少し乱暴ではないか」と主張。

平井デジタル相は、長期入院中の児童生徒には遠隔での授業を認めていることや、不登校の児童生徒への支援としてオンライン授業が活用されている事例を挙げて、遠隔・オンライン教育を授業時数に含めるよう求めた。

これに対して、萩生田文科相は「(不登校の児童生徒を)段階的に支援する遠隔授業などは非常に有効だが、だからといって、学校に来なくても全ての授業がオンラインで代替できる、それを全て授業日数と同じようにカウントするというのは、今の段階で私は考えていない」と、はっきり伝えた。

その上で、「高等教育である高校や大学などは、今後、システムを変えていく可能性があってもいい。しかし、小学生や中学生の義務教育は、対面あるいは集団でさまざまな活動をすることが教育になる。授業を映像で見たか見ないかということだけでは、学校の意味は果たせないのではないか」と説明したという。

このやり取りについて、萩生田文科相は閣議後会見で「(平井デジタル相と河野行革相には)よく理解をしてもらったと思う」と述べた。

3閣僚会合について説明する平井卓也デジタル改革相

一方、平井デジタル相は閣議後会見の席上、萩生田文科相との議論について、「(萩生田文科相が)義務教育課程のオンライン化に消極的な発言をしたとは、ちょっと思えない。GIGAスクールは小学校と中学校にPCやタブレットを配るのだから、その機器を自宅で使おうが、どこかに持っていこうが、原則OKのはず。(萩生田文科相は)全てをオンラインではできないと言っている。子供の社会性や集団生活など、成長期の子供たちにとって対面が必要なことは当然あるが、それを(対面指導とオンラインの)ハイブリッド型に変えていくことには、別に反対していない」との見解を示した。

この議論に関連し、河野行革相は「オンライン教育は、思い切った予算を付けてGIGAスクールを進めている状況から考えて、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下の特例ではないだろう。ニューノーマル(新たな日常)が、新しいハイブリッド型の、デジタル教育と今までの教育の組み合わせでできるのではないか」と指摘したという。

教育分野の規制改革とデジタル化の関連について、萩生田文科相は3閣僚会合の席上、「まだ1人1台端末の普及が終わっていない段階で、あらかじめ規制改革を先に行うのは、ちょっと順序が違う。今年度末までに小中学生の1人1台端末の整備が終わり、これを活用したら、今まで想定してなかった合理的な授業の在り方があるじゃないか、これについては教室に集まらなくても授業としてカウントしたらどうか、ということは今後いろいろ出てくると思う。その都度また相談をさせてもらいたい」と発言。義務教育段階での遠隔オンライン教育と授業時数の問題については、来年度以降、学校現場で1人1台端末の活用が本格化していく中で改めて検討していく姿勢を示し、平井デジタル相と河野行革相の理解を求めた。

全国学力・学習状況調査のCBT化

3閣僚会合では、全国学力・学習状況調査のCBT(コンピューター使用型調査、Computer Based Testing)による実施に必要なデジタル環境の整備について、萩生田文科相が「全ての児童生徒に1人1台端末が整備されれば、オンラインによって実施可能になるが、同日同時刻に全国一斉に答えを求めると、自治体によってはサーバーがパンクしてしまうとの専門家の指摘がある」として、国と自治体のデジタルシステムの在り方について、デジタル庁で検討するよう求めた。

萩生田文科相は「国と地方の間でどういうやり取りが必要なのか、どういう(回線の)容量が必要なのか。サーバー対応がいいのか、あるいは自治体を越えた広域クラウド化するのがいいのか。できるだけ自治体のそういった負担を減らして、できることからやってくのがいいのか。二重投資になる可能性もあるので、デジタル庁で調整してほしい」と述べたという。

これに対し、平井デジタル相は「全国学力・学習状況調査のCBT化を実現する上での方策の提案や、学習データや学校での健康診断のデータなどを個人が活用できるための条例などの課題について宿題をもらった」と説明。デジタル庁の設立に向けて、検討項目に含める考えを示した。

3閣僚会合は、今後、定期的に開催される見通し。平井デジタル相は閣議後会見で、「今後は事務方を交えて、いかに進めていくか検討する。最初の問題をセットする時には、政治家だけで会合を開くやり方は今後も続けていきたい」と話した。


【差し替え】見出しの「教科書は『原則デジタル』で一致 文科相ら3閣僚会合」を「教科書は『原則デジタル』検討開始で一致 3閣僚会合」に差し替え、第1段落の「教科書は近い将来、原則としてデジタル教科書に移行し、無償化の対象とする考えで一致したことが分かった」を、「教科書は近い将来、原則としてデジタル教科書に移行し、無償化の対象とするよう求める要望が出され、検討を始めることが分かった」に差し替え。第5段落の「萩生田文科相は『それは大いにデジタル庁でも検討してもらいたい』と肯定的に応じた。教科書は近い将来、原則としてデジタル教科書に移行し、デジタル教科書を無償化の対象とする考えで3閣僚が一致した形となった」を「萩生田文科相は『それは大いにデジタル庁でも検討してもらいたい』と応じ、文科省とデジタル庁で検討を始める考えを示した」に差し替えました。

次のニュースを読む >

関連