コロナ禍で困窮する家庭を支える 就学援助の現状と課題

コロナ禍は家計に大きな打撃を与えた。一斉休校や景気の後退などにより、仕事を続けられなくなったり、減収となったりした家庭にとって、子供の教育費は重くのしかかる。家庭の経済的負担を少しでも減らすために、学校現場が知っておくべき就学援助の現状と課題を取材した。

オンライン授業の通信費も対象に

給食費や学用品の購入、修学旅行の積立金、部活動費など、無償が建前の義務教育でも、学校の教育活動にはさまざまな家計負担が伴う。経済的に困窮している家庭に対して、それらの費用を支援する制度が就学援助だ。就学援助は生活保護を受けている要保護者を対象にしたものと、それぞれの市町村教委が認定基準を設け、要保護者に準ずる程度に困窮している準要保護者を対象としたものに大別される。このうち、要保護者については国が2分の1を補助することとなっているが、準要保護者については三位一体改革の一環で、2005年度から国の補助が廃止され、税源移譲・地方財政措置が行われた上で、各市町村が単独で実施している。

文科省の来年度予算案概算要求で示された要保護者の就学援助の拡充

就学援助を巡っては、これまでも補助対象品目の拡大など、さまざまな改善が行われ、文科省は教育委員会への調査などを通じて、支援が必要な保護者への周知を図っている。

コロナ禍での一斉休校でも、国は通常は前年の収入で判定している所得基準に関して、家計急変に対応するため、申請時の収入状況で判断するなどの柔軟な対応を教育委員会に要請。6月には、オンライン授業の通信費についても、要保護者への就学援助の国庫補助の対象に加えたり、今年度第2次補正予算で拡充された「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を、準要保護者へのオンライン授業の通信費などの就学援助に、各自治体の判断で活用できるようにしたりするなどし、経済状況が悪化した家庭の支援策を講じている。

さらに、9月29日に公表された文科省の来年度予算案の概算要求では、要保護者への就学援助について、「新入学児童生徒学用品費」の単価を引き上げ、小学校では7万5370円(2万4310円増)、中学校では6万9260円(9260円増)とすることをはじめ、オンライン学習通信費や修学旅行費の単価の引き上げを盛り込んだ。

教員も「お金」に対する意識を

栁澤さんらが作成した就学援助の解説リーフレット

一方で、制度としての就学援助があっても、必要な保護者に情報が届けられ、使われなければ意味がない。家庭の教育費負担の問題に詳しい埼玉県川口市立小谷場中学校事務主査の栁澤(やなぎさわ)靖明さんは、コロナ禍による家計急変の可能性を考え、就学援助について保護者に知ってもらおうと、近隣の小中学校12校の学校事務職員と連携して、就学援助について解説したリーフレットを作成。各学校のホームページで公開している。

また、教員向けに就学援助などを扱った研修動画も作成し、教員に「お金」への意識を持ってもらおうと働き掛けている。栁澤さんは「学校から、教材費などとして一度に1万円程度が口座から引き落とされれば、経済的に厳しい家庭にとっては死活問題になる。コロナ禍によって学校行事なども見直されている。補助教材や消耗品の購入には、使途や効果なども含めて『とりあえず去年と同じで』という発想から抜け出し、行事などと同様に精選すべきだ」と呼び掛ける。

給食費無償化の有効性を議論すべき

さらにコロナ禍によって悪化が懸念される子供の貧困対策として、抜本的な解決を求める意見もある。子供の貧困問題を研究する跡見学園女子大学の鳫咲子教授は、就学援助の準要保護者については、各自治体が単独で実施しているために、自治体間で支援内容や制度周知の熱心さに差が出ていると指摘。三位一体の改革以前の国庫補助制度を復活すべきだと提案する。

特に、一斉休校で学校給食も休止となったことで、食費や食事の準備といった負担が、多くの家庭に重くのしかかったと説明。コロナ禍をきっかけに、大阪市などの一部の自治体が始めている全家庭を対象とした給食費の無償化に、全国的に取り組む必要があるとした。

鳫教授は「実際にコロナ禍の影響を受けている子育て世帯を把握し、就学援助につなげるまでにはタイムラグがあり、支給漏れも生じてしまう。それならば全ての家庭を対象とした給食費無償化の方が有効だ。さらに言えば、高校生についても給食実施を視野に入れるべきだ」と述べ、より多くの家庭に即効性のある施策として、給食費無償化の実現に向けた議論を促した。

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