京大iPS細胞研と京都・寺戸中 リモートで出前授業

京都府向日市立寺戸中学校(竹林広司校長、生徒517人)で10月21日、ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥教授が所長を務める「京都大学iPS細胞研究所」と同校をリモートでつないだ、課題解決型の出前授業が行われた。

課題解決型学習のリモート出前授業が行われた寺戸中学校

京都府教委では昨年度から、京都を中心に活躍している企業・大学と府内5校の研究校が連携して課題解決型学習を行う「未来の担い手育成プログラム」を実施している。今年度はコロナ禍による長期休校などによるカリキュラムの変更にも配慮し、研究校それぞれの状況に応じた形で企業・大学との連携を行っている。

今回の出前授業は同プログラムの一環。同校の2年生5クラスの各教室と同研究所の研究員をリモートでつないで授業は行なわれた。プログラムを通して同校には「誰もが安心してiPS細胞を用いた治療を受けられるようになるためには、どのようなことが必要でしょう?」という課題が出されている。

この日の授業ではまず、新しい治療法が世に出るまでにどのような人たちが関わっているのかについて、同研究所上廣倫理研究部門の八田太一特定助教が説明。細胞提供者、研究者(iPS細胞を作る研究者、使う研究者、管理して配る研究者)、製薬企業、研究支援者、患者団体など、さまざまな立場から研究に関わる人たちがいることを生徒らに伝えた。

また、どんな状態であれば「安心」だと言えるのかについて、八田特定助教は「副作用が少ないことが科学的に確認されているといった『安全性』、もう一つは効き目があるといった『効果』。大きく分けると、この2つがそろっていることが重要だとされている」と解説。新しい治療ができるようになるためには、安全性と効果を確認する段階が不可欠であり、細胞や動物を使った実験を経て、人を対象とした実験が行われることを学んだ。

八田特定助教は「iPS細胞はいきなり存在するわけではなく、必ず元になる細胞(血液)が必要となる。そのためには血液を提供してもらう必要がある」と説明。そこで、生徒はグループごとに「依頼される側(細胞提供者)」と「依頼する側(研究者)」の立場に分かれて、研究が安心して行われるために必要な視点について、グループワークを行った。

依頼される側(細胞提供者)になって考えたグループからは、「誰の細胞なのかを公にしないなど、個人情報の管理をきちんとしてほしい」「何の目的で使うのか、メリットとデメリットを明確に教えてほしい」といった意見が出された。

また、依頼する側(研究者側)になって考えたグループからは、「痛みがないなど、細胞提供者の負担にならないような仕組みが必要」「衛生面での配慮をするべき」「研究者だけでなく、細胞提供者にとっても得があるような研究にする必要がある」といった意見が出されていた。

今後、生徒らはグループごとに「iPS細胞を使って、動物の体内でヒトの臓器を作ってもいいの?」「新しい治療法を開発するために、人を実験的に利用していいの?」「効果が確認されていない再生医療を行ってもいいの?」といったテーマの中から一つを選び、より深掘りして考えていく。

難しい課題に挑戦していく生徒らに対し、同研究所の澤井努特定助教は「自分の考えだけでは限界があるので、他の人の意見を取り入れる大切さを認識して、今後も取り組んでいってほしい。また、いろいろな立場から考えることが、これからも必要になってくる」とエールを送った。


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