デジタル教科書、使用基準を緩和へ 文科相が指示

学習者用デジタル教科書の授業での使用を、教科ごとに授業時数の2分の1未満としている現行基準について、萩生田光一文科相は10月23日の閣議後会見で、「子供たちの発達状況に応じて、緩和を前提に見直しをしたらどうか」と述べ、緩和に向けて検討を加速するよう担当部局に指示したことを明らかにした。年内をめどに方向性を示す考え。一方、河野太郎行政改革相は、同日開かれた政府の経済財政諮問会議(議長・菅義偉首相)の席上、萩生田文科相、平井卓也デジタル改革相と10月2日に行った3閣僚会合で、「オンライン授業やデジタル教科書について、規制をなくしていく方向で一致」したと報告した。

デジタル教科書の使用基準見直しを表明する萩生田光一文科相

デジタル教科書の使用基準を見直す理由について、萩生田文科相は「(3閣僚会合で)平井デジタル改革相から『教科書は原則デジタル教科書にすべきだ』との提案があった。来年度から(全国の小中学生に)1人1台端末が整備され、ICT教育元年が迎えられる。それに合わせて、デジタル教科書の利用方法についても見直しを図った」と説明。

その上で、「小学生と中学生では授業のやり方が違うと思う。同じ小学校でも低学年と高学年では、授業の中でICTをどう使うか、いろいろ変わってくるので、直ちに(使用基準を)撤廃ということは考えていない。子供たちの発達状況に応じて、緩和を前提に見直しをしていったらどうかと思っている」と述べた。

文科省では、有識者による「デジタル教科書の今後の在り方等に関する検討会議」で、使用基準を緩和した場合の影響や対策などについて検討を進めている。萩生田文科相は「その報告を待ちながら、担当部局でも対応を進めるように指示した」と話した。

また、教科書を原則デジタルに移行するかどうかについて、「将来的にはデジタル教科書がいいものになってくるのなら、それを否定するものではない。ただ、紙の良さもある。国が義務教育で国庫負担をする教科書は、デジタルなのか、紙なのか。デジタルに移行した場合、紙は全く廃止してしまうのか。あるいは希望があれば、紙の教科書も残しながら、授業をやっていくのか。これは学校現場の話も聞いていく必要があると思う。最初から決めるのではなく、様子を見ながら前に進みたいと思っている」と、現時点での考えを説明した。

一方、河野行革相は、同日の経済財政諮問会議で、社会全体のデジタル化に向けた規制改革の推進について説明するとともに、取り組み状況をまとめた資料を提出。資料では、オンライン教育については、萩生田文科相との3閣僚会合で、「オンライン授業やデジタル教科書について、規制をなくしていく方向で一致」と報告した。内閣府の担当者によると、河野行革相は諮問会議の席上、オンライン教育とオンライン診療について、平井デジタル改革相と所管大臣による3閣僚会合を通して、「(コロナ禍で特例的に緩和された規制の)恒久化・拡大に向けて迅速に取り組んでいる」と述べた。

こうした報告を受け、菅義偉首相は経済財政諮問会議の席上、「河野大臣においては、デジタル化を地域活性化や成長につなげるに当たって障害となる規制を、取り払ってほしい。特に、オンライン教育の拡大、最先端の医療機器の審査の迅速化について、各大臣と調整を急いでほしい」と述べ、オンライン教育を名指ししながら規制緩和を進めるように改めて指示。「菅内閣において重要なのは、変化に対応するスピードと国民目線での改革だ」と強調した。

こうした教育分野の規制緩和を求める動きに応じて、文科省は10月20日、学校が保護者などに求める押印の見直しや、学校・保護者間の連絡手段のデジタル化を可能なところから進めるよう求める通知を発出。10月22日には、初等中等教育における遠隔・オンライン教育について、不登校対策や高校を中心に規制緩和に取り組む方針を自民党文部科学部会・教育再生調査会合同会議に提示した。これに加えて、学習者用デジタル教科書の使用基準の見直しが進むことになり、学校教育のデジタル対応や遠隔・オンライン教育に関連して、これまで懸案となってきた規制の見直しが一気に動き出すことになった。

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