不登校児童生徒の増加を背景に、学校や民間施設・団体との連携を通じた社会的自立への支援に取り組む東京都教委は「児童・生徒支援フォーラム~不登校児童・生徒の社会的自立に向けて~」を10月26日に開いた。不登校を経験した当事者や保護者、官民の有識者が一堂に会し、目先の学校復帰にこだわらない学びの場や居場所づくりについて議論した。

講演した認定NPO法人フリースペースたまりばの西野博之理事長は、約30年間にわたる不登校児童生徒の支援の経験から「不登校、引きこもりは誰にでも起こりうるものだが、『このままだと大変なことになる』という大人の不安が子供を追い詰めてしまう。まず親を安心させることが大事ではないか」と、不登校に対する考え方を変えるよう促した。
また「学校が安心で安全、楽しく学べるならば学校に行きたいという(不登校の)子供たちに、わんさと出会ってきた。そうした環境になっていないのに『早く出ておいで』というのは鈍感な声掛けだ。戻りたくても戻れず苦しんでいるという意識をいま一度、頭の中で整理してほしい」と、多様な学びの場を念頭に、将来の社会的自立につなげる必要性を訴えた。
パネルディスカッションでは、不登校を経験した女性が登壇。中学1年生でクラスになじめず人が怖くなり、学校に行けなくなった経緯や、他の生徒と同じことができない焦りと不安が強くあったという当時の心情を明かした。別室での勉強や部活動のみの登校を認めてもらったことに感謝する一方で、無理やり家の外に出されたり、何度も「学校に行かないのか」と聞かれたりしたことがつらかったと振り返った。
また息子が小学1年生で不登校を経験したという女性は当初、「これからどうしようか」とショックを受けたが、自宅やフリースクールで息子が安心して学ぶ姿を見て、不安がなくなっていったと説明。居場所を得た息子は不登校支援のある中学校で理科や数学の面白さに目覚め、高校・大学へと進学。現在はエンジニアとして働いているという。
東洋大学京北中学校の亀澤信一副校長は「学校の雰囲気に合わない子がいるのは確かだが、少しでも多くの生徒に魅力的だと思ってもらうことが必要。フリースクールなどから学びながら固定観念を取り払い、多様な価値観を受け入れていきたい」と話した。
世田谷区教委の今村泰洋教育相談専門指導員は「努力したプロセスを認めてもらえる、失敗しても支えてもらえるという経験を通して、あるがままの自分を受け入れて大切にする、もっと成長したいという思いが生まれる。こうした体験をできるチャンスは学校の中にたくさんある。まずは学校が最善の努力をして、それでも難しい子供には学校以外の場につなげていくことが必要ではないか」と指摘した。
フリースペースたまりばの西野理事長は「学校とフリースクールの併用もよい。週に何日かフリースクールに通うことで、自分を取り戻して学校に通えるようになる子もいる。『早くフリースクールを卒業して学校に戻れ』という発想では、本当の意味での連携にはならない。学びの多様化、個別化の中でいろいろな選択肢を用意していくことが必要」とした。
東京都が今月22日に公表した「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査」の結果によれば、東京都の小中学校における不登校児童生徒数は小学校で5217人、中学校で1万851人となり、前年度より小学校で899人、中学校で981人増加した。
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