少人数学級と教員増 財政審と文科省が真正面から論戦

来年度予算の概算要求に盛り込まれた少人数学級と教員増を巡り、文科省は10月27日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会(財政審)が「平成以降、児童生徒数ほど教職員定数は減少しておらず、実質20万人増加している」と否定的な見方を示した資料に対し、「増えたのは特別支援が必要な児童生徒数の増加によるもので、通常学級の教職員定数は微増にとどまる」などと真正面から反論する見解をホームページ上で公開した。萩生田光一文科相は同日の閣議後会見で、「今回、少人数学級にかじを切る前提は、ウィズコロナ、アフターコロナの新しい学校のスタイルから始まっている。(財務当局に)負けないために私は文科大臣になったつもりでいるので、しっかり戦ってまいりたい」と述べ、財政当局と粘り強く折衝を続ける考えを強調した。

財政審の資料は公立小中学校の教職員定数をテーマとしており、10月26日に開かれた財政制度分科会歳出改革部会に提示された。9月末にまとまった文科省の概算要求では、少人数学級とそれに必要な教員増について、要求段階で計画や金額を明示せず、予算編成過程で具体的な内容を協議する「事項要求」として盛り込んでおり、財政審の資料は、今後の予算協議に臨む財務当局の基本的な考え方を示す内容と位置付けられる。

少人数学級と教員増を巡る財政審資料の指摘と文科省の見解

財政審の資料によると、公立小中学校の教職員定数について、平成に入ってから少子化による児童生徒数の減少ほど教職員定数は減少しておらず、児童生徒数当たりの教職員数を1989(平成元)年度と同水準とした場合の教職員数(約48万人)と比べると、実質20万人増えている、と指摘=図1参照

【図1】財政審の資料が示した公立小中学校の教職員定数と児童生徒数の推移

日本は諸外国よりも学級規模が大きいとの見方についても、1学級当たりの担任外教員数が諸外国より多い特徴があるとして、教員1人当たりの児童生徒数は主要先進国並みだと強調した。

また、学級規模と学力の関係について、「最近の新しいデータを使った研究ほど、学級規模の縮小の効果はないか、あっても小さいことを示している研究が多い」として、少人数学級が学力の向上をもたらすというエビデンスがはっきりしないことを確認した。ただ、社会経済的背景(SES)が低い学校では、学級規模の縮小が学力向上に有意な影響を与えているとする研究もあると指摘した。

こうした財政審の資料について、文科省は10月27日に公表した見解で、それぞれの指摘に対して、逐次反論した。

まず、公立小中学校の教職員定数と児童生徒数については、「教職員定数が児童生徒数ほど減少していないのは、特別支援学校・特別支援学級に通う児童生徒数の増加によるものが大きい」と反論した上で、「小・中学校の通常学級に通う児童生徒40人当たりの教職員定数の増加は約2%程度」と説明した=図2参照。特別支援学校・特別支援学級を除いた場合、児童生徒40人当たりの教職員は、2006(平成18)年度の2.41から2019(令和元)年度の2.47人で2.48%増えた水準にとどまっており、教職員数を「実質20万人の増」とする財政審の資料とは、与える印象がまったく異なっている。

【図2】文科省の見解を反映した公立小中学校の教職員定数と児童生徒数の推移

教員1人当たりの児童生徒数についても、「学級担任外教員は特別な支援が必要な児童生徒への対応や専科指導等に充てられている」と説明。学級担任外教員を含めた教員数では、教員1人当たりの児童生徒数は主要先進国並みだとする財政審の指摘に反論した。

また、少人数学級と学力の関係にエビデンスがはっきりしないとの指摘には、「社会的経済的背景が低い子供が多い学校や非認知能力の観点からは効果がある」といった研究事例を紹介。同時に、学校現場から「個別最適な学びの実現や感染症対策等の観点からも少人数学級を求める声」があることや、教育再生実行会議で自治体の首長や教育長などから「効果や必要性について多くの意見が発表されている」ことを挙げて理解を求めた。

萩生田文科相は「エビデンスについては、いろいろな意見があることは承知している。他方、少人数学級や少人数指導を行ってきた自治体から『意味がない』という答えが文科省に返ってきたことは、ただの一つもない。『できるならば、(コロナ禍で実現した)この体制を続けたい』というのが、日本中で少人数学級に対応している、自治体の生の声だと思う」と、学校現場や自治体から少人数学級を求める声が大きいことを強調。

少人数学級と教員増について文科省の見解を説明する萩生田光一文科相

その上で、「今回、少人数学級にかじを切る前提は、(少人数学級と学力を巡る)この話ではなく、ソーシャルディスタンスを保つ学級規模も必要ではないか、というところから始まっている。これはアプローチが全然違う」と指摘。少人数学級の実現を求める理由について、「何度も言うように、64平方メートルの教室に40の机を並べて授業をやるのは、もう限界がある。最低でも1列ぐらいは列をなくし、間を取らないといけないのではないか。まさにウィズコロナ、アフターコロナの、新しい学校のスタイルを巡る話だ」と説明した。

さらに、これまで教員増を求める文科省と財務当局の折衝が難航してきた経緯を受け、萩生田文科相は「財布を持っている方が強いというのは、世の中的にはそうかもしれない。けれども、それに負けないために、私は文科大臣になったつもりでいる。しっかり戦ってまいりたい」と語気を強めた。

2020(令和2)年度の公立小中学校などの教職員定数は68万7000人。このうち義務標準法の規定で学級数などに応じて機械的に計算する基礎定数が63万3000人、政策目的に応じて毎年の予算措置で配分する加配定数が5万4000人となっている。加配定数には特別支援教育の枠が5000人あり、このうち通級による指導に係る加配定数については2017(平成29)年度から10年間をかけて基礎定数化を進めている。

少人数学級の実現については、7月17日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2020」(骨太の方針)で、「少人数によるきめ細かな指導体制の計画的な整備やICTの活用など、新しい時代の学びの環境の整備について関係者間で丁寧に検討する」と明記されており、これが今後の予算協議のベースになる。また、政府の教育再生実行会議では、来年5月ごろの提言に先立ち、30人学級を念頭に少人数学級の実現を求める報告を年内にまとめる見通し。

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