生身の人間とアバターという分身によるグループワークの効果とは――。超教育協会(小宮山宏会長)が主催するオンラインシンポジウムが11月4日に開かれ、経営コンサルタントの大前研一氏が学長を務めるビジネス・ブレークスルー(BBT)大学経営学部グローバル経営学科長の谷中修吾教授が、アバターロボットを使用して注目を集めた遠隔卒業式を実現した裏話や、アバターロボットによる教育効果について講演した。

コロナ禍の影響でリアルな卒業式開催は困難だとして、BBT大学では谷中教授が中心となり、ANAホールディングスが開発したアバターロボット「newme(ニューミー)」を使って、卒業生が自宅などから遠隔操作して卒業証書を受け取る遠隔卒業式を実施。それが注目を集め、各地の大学でアバターロボットを活用した式典が開かれるなど、教育機関に一気に広まった。
ビジネスプロデューサーでもある谷中教授は「今まで誰もやったことがない教育分野での新しい取り組みだからこそ、企画から実務まで、ほとんど自分一人で計画を練り上げた。企画の段階で自分の中ではすでに完成形がイメージされていたので、妄想した現実と実現した現実はとても近かった」と話し、実際の企画書などを紹介した。
さらに今年度の谷中教授の授業ではニューミーを試験的に導入しており、グループワークの場面で、自宅などからオンラインで参加している学生がアバターを操作しながら、リアルに参加している学生とディスカッションをしたり、学習アシスタントがアバターロボットで各グループを巡回し、議論をファシリテーションしたりしている光景が当たり前となっているという。

「オンラインで参加している学生が、フィジカルな実体としてその場に現れる。たったそれだけでも議論は盛り上がる」と述べ、さらなる一工夫として、ニューミーに腕を付けたり、服を着せたりして、より印象を人に近づけていると語った。
さらに、「アバターロボット導入の狙いはチームビルディングにある。単なるコミュニケーションであればZoomなどの方がやりやすい。リアルなグループワークでは、場の雰囲気や参加者のちょっとしたしぐさと一言で、アイデアが生まれたり、信頼関係ができたりして、ディスカッションが加速するが、アバターロボットが混じった場合でも、そういうことが本当に起こる」と説明。
今後は、教室からアバターロボットを操作しての疑似体験など、教育活動でのさまざまな応用の可能性を語った。
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