不登校児童生徒へのICTを活用した学習支援を巡り「易きに流れてはいけない」と述べた国会での答弁の意図について、萩生田光一文科相は11月6日の閣議後会見で、「(オンライン授業を)ツールとして有効に使っていただくことは結構だが、最終目的は学校へ出て来られるような環境を作っていくことが大事だと思っている。その努力は学校の先生には負担になるが、頑張ってほしいという意味を込めた」と説明した。この答弁については、学校現場や教育関係者などからSNS上で賛否が出ていた。

萩生田文科相は「限られた時間の答弁なので、真意が伝わらなくて残念」とした上で、「不登校の児童生徒にとって、学校に行かなくても授業を受けることができるオンラインは極めて有効なツールだと思っている。しかし、思い起こしてもらいたい。20年前までは不登校児への対応は、圧倒的に多くの学校が卒業式に卒業証書を配って終わりだった。(卒業まで)放置状態になってしまう学校が数多くあった」と指摘。
「学校現場の先生方は大変な苦労をされているが、なかなか解決策が見いだせなかったと思う。みんなと同じ教室ではまだ学べないけれど、とにかく学校の校舎まで来て、なんとかクラスへ戻る努力をしようという子供たちに対して、先生方もいろいろな努力をしてくれている」と続けた。
その上で「(ICT環境の整備によって)同級生が毎日のように手紙を書いて、『学校へ来いよ』と声を掛けているような、そういう努力をなくしてしまうような方向に行くことは、やめてもらいたい。すなわち(答弁は)オンライン授業をやれば、不登校(の児童生徒)はもう学校へ来なくていいんだというような『易きに流れては困る』ということを申し上げたまで」と述べ、答弁の意図に理解を求めた。
さらに「(オンライン授業を)ツールとして有効に使っていただくことは結構だが、最終目的は学校へ出て来られるような環境を作っていくことが大事だと思っている。その努力は学校の先生には負担になるが、頑張ってほしいという意味を込めて答弁した」と話し、義務教育段階では全ての児童生徒が学校に登校するのが重要との基本的な考えを改めて説明した。
文科省の調査によると、昨年度に小中学校で年間30日以上欠席した不登校児童生徒は過去最多の18万1272人に上り、在籍児童生徒の1.9%(前年度1.7%)を占めている。同省では、不登校児童生徒が家庭でITなどを活用した学習活動を行った場合、それを教員が把握し、指導要録上の出席扱いにできるとする通知を出しているが、実際に出席扱いとされた児童生徒数は2018年度で小学校174人、中学校434人の計608人にとどまっている。
家庭学習を出席扱いとされる児童生徒数が少ない背景について、同省初中局児童生徒課では、①家庭で児童生徒が使えるパソコンやタブレットが十分整備されていない②家庭での学習活動について、教員が把握できていない③こうした制度が学校現場などにあまり知られていない–と説明している。
こうした現状を受け、11月2日の衆院予算委員会では、公明党の竹内譲議員が、ICT活用による不登校児童生徒への取り組みや、家庭学習を出席扱いとする制度の利用促進について、見解をただした。
これに対し、萩生田文科相は「学校現場では(不登校の)子供たちを学校に戻していこうと、別室指導とか、友達が手紙を送るとか、いろいろな努力をしている。仮に来年以降、ICTの環境整備ができたから、オンラインで授業さえ受ければそれでいいんだというような、易きに流れることがあっては決していけない。(ICTは)あくまでツールとして使うことが極めて大事だと思っている」と答弁し、不登校児童生徒に対するオンライン授業の有効性を認めた上で、不登校児童生徒が学校に登校できるように環境を整えていくことが重要との考えを示した。
この答弁について、インターネットやSNS上では、学校現場や教育関係者などから「この通りだと思う」との見解が示される一方、「オンラインでなら授業に参加できたのは、決して易きに流れているわけではないのに」といった当惑や反発も広がっていた。
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