GIGAスクール構想に向けて 東京都江東区の取り組み

GIGAスクール構想は前倒しされたが、コロナ禍が続く中、1人1台端末の環境が整うまでに、各自治体ではどのような準備を進めていくのか――。5月中に1家庭1台の環境を整え、6月からは全公立小中学生にスタディサプリのアカウントを配布するなどした、東京都江東区の取り組みを取材した。


分からないことは動画で調べる子供たち

亀戸中の6月分散登校終了時点でのスタディサプリ活用状況

同区では長期休校中の5月、BYODと学校からの端末貸し出しにより、1家庭1台の環境を整えた。その上で、6月からは同区の全ての公立小中学生にスタディサプリのアカウントを配布。学校と家庭の学習を一体化させたハイブリッドの学習を目指し、取り組みを進めている。

スタディサプリ導入について、同区教委事務局の伊藤秀一指導室長は「子供の学びを止めないというのが一番の理由」と話す。「今の子供たちは、何か分からないことがあればYouTubeなどの動画で調べて学ぶことが当たり前になっている。未履修の学習を学んでいく上では、動画が有効だと思い、導入を決めた」と、ドリル的なものだけでなく、授業動画を見て予習的な学びができることが利点だと捉えている。

同区立亀戸中学校の山口博之校長は「区内共通の課題として、家庭学習の低さがあったが、スタディサプリを導入したことで、確実に家庭学習の率は高まっている」と話す。6月の分散登校時から主に学習補助教材として活用しており、各クラスで調査している平均動画視聴時間や確認テストの平均完了数などからも、その定着ぶりが見えているという。

「今ではこちらから課題を出さなくても、自ら進んで取り組んでいる生徒もいる。勉強が苦手だった子も、自分が分からないところまで遡って授業動画を見たり、問題を解いたりできる。一人一人の到達度に合わせて取り組めることで、理解度も高まっている」と生徒の変化を述べた。

ICTの活用で何が変わってきているのか

「この半年間で1人1台に向けた研修を重ねていく」と山口校長

6月以降、各校では積極的にICTの活用を進めてきている。分散登校時から各校で行われていたZoomによる朝の会では、他の自治体と同様に、不登校の児童生徒も参加していたケースが多数報告されている。伊藤指導室長も「すぐにうまくいくとは思っていないが、不登校の児童生徒が学びに参加するきっかけになれば」と希望を感じている。

また、学校再開後は、スタディサプリなどを使って自宅で学んでいる不登校の児童生徒も。山口校長は「これまで学校に全く来られない生徒については、家庭でどのくらい学習し、どのくらい成果が上がっているのかが見えづらかった。スタディサプリなどを活用することで、それが分かるようになったのは大きい」と話す。

さらに、同区では校長会や初任者研修などでも積極的にICT を活用しており、特に校長会は早いうちからオンラインで実施。その狙いについて伊藤指導室長は「どの学校も、まず校長がICTを使えるようになれば、他の教員にももっとやらせようという動きになる」と強調する。

夏休み中に行われたオンラインでの初任者研修は、「オンラインの授業・動画づくり」というテーマで行い、それを実際に2学期の授業に生かしてもらったという。こうした動きは、同区の「GIGAスクール構想を進める上で、校長とICTが得意な教員、そして初任者が核になる」との考えからだ。今後も、ICTスキルも同時に身に付くような各種研修を実施していく計画だという。

そのほか、Zoomを使って保護者会を行った学校からは「いつもは参加できない保護者も参加しやすくなり、参加率が高まった」との報告も出ている。

「ICT活用によって、今までうまくいかなかったことが改善され、教員の考え方を変えるきっかけにもなっている」と伊藤指導室長は手応えを話す。

家庭学習とリンクした授業づくりへ

同区では家庭学習ともしっかりリンクして、平時の授業をつくっていくことが大切だと考えている。

「例えば、これまでは1時間の授業で完結するような授業づくりだった。しかし、今後は家庭学習で予習し、学校では対話的な授業をし、そしてまた家庭で復習するといった、家庭学習と教室での授業を行き来するような授業づくりをしていくべきだ」(伊藤指導室長)と、これまでの教員の考え方を変化・深化させていくよう、各校に働き掛けている。

実際に、亀戸中ではすでにスタディサプリの授業動画を予習として出し、いわゆる反転授業のような使い方をしている教員もいる。

山口校長は「1人1台になった時に、これまでチョークアンドトークでやってきた教員が、どう対応できるかが肝心だ」と指摘。区で導入する端末が分かれば、さらに具体的な研修を重ねていく計画で、「この半年間が勝負だと思っている」と意気込みを語る。

伊藤指導室長は「6月以降は、1人1台端末になった時にやれるような学習の中身に、極めて近い取り組みを進めてきた」といい、「何も計画ができていないところに、1人1台を配っても意味がない。今使えるものを最大限に生かして、GIGAスクール構想に向けてやっていきたい」と力を込める。

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